2018 Fiscal Year Annual Research Report
名古屋議定書を活用した生物多様性保全のための効果的諸制度構築に向けた経済学的研究
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18H03429
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60203874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 教授 (20397938)
柘植 隆宏 甲南大学, 経済学部, 教授 (70363778)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 名古屋議定書 / ABS / 提供国措置 / 生態系サービス / 環境評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、初年度ということもあり、おもに次の研究を行った。まず、名古屋議定書の内容の詳細を今後の研究の方向性と照らし合わせながら検討した。 1つは、経済理論の観点から、名古屋議定書第10条に基づき国際的利益配分システムについて、多国間の金銭的利益配分システムが提供国側で遺伝資源利用を活発化させ、生物多様性保全により結びつく可能性を指摘した(大沼、2018)。この分析に基づき、実際にモデルを構築して二国間の共同利益配分システムとしての考察を行っている。また、名古屋議定書が誕生した背景や、その後の世界各地域・国での取組から、今後の動向を論じた(薗、2018)。また、名古屋議定書のこうした全体像を共有することで、今後研究が必要な点を議論した。 2つは、名古屋議定書に沿った遺伝資源利用は生物多様性の生態系サービスの1つである。その意味で、生態系サービスの一般的なさまざまな機能や環境評価法を理論的及び実証的に研究を行った。とりわけ森林を保全することによる防災機能についての研究から、遺伝資源利用を進めることが地球温暖化適応政策にもつながるなど、評価をより多面的にする必要性を取り入れた研究を発展させている。 3つは、多くのABS関係者に提供国措置についてのインタビューを行った。学術・産業・発展途上国について、それぞれ複数の関係者を訪問して新たな知見を得ることが出来た。こうした知見は今後の研究に活用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記のように、2019年度以降の研究を遂行するための基礎が得られている。 ・今年度に行うアンケート調査について、準備が進展している。 ・利益配分についての理論分析では、複数の国が参加する共同利益配分システムについての分析は順調に進展していること。 ・諸外国の遺伝資源保全の状況およびその制度についての調査が進んでいること。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策については下記の通りである。 ・提供国措置についてのアンケートを実施し、分析を行う。アンケートは提供国措置を実施することの効果および他国の状況についての意見を中心に、産業と学術の2つの分野で行うことを予定している。 ・理論研究では、遺伝資源提供のリスクを緩和するためのシステム(共同利益配分システムなど)の効果を分析し、論文にまとめ投稿する予定である。 ・その他、域外生息保全および伝統的知識についても深掘りして研究を行う予定である。
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