2019 Fiscal Year Annual Research Report
植民地期朝鮮における女教師の生成と役割に関する研究
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18H03437
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
朴 宣美 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80455914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國分 麻里 筑波大学, 人間系, 准教授 (10566003)
古川 宣子 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20307143)
李 正連 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (60447810)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 朝鮮女子教育 / 女性宣教師 / 社会教育 / 女教師 / 夜学校 / ミッションスクール / 植民地教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、朝鮮の女子教育を担当した女教師(女性宣教師、日本人女教師、朝鮮人女教師)の実態と役割について多角的に検証するため、まず、オーストラリア長老派教会から派遣された女性宣教師の活動を明らかにした。オーストラリア人女性宣教師は1891年から朝鮮の慶尚道地域に派遣され、1893年に釜山で女子学校(この地域の最初の女子学校)を開設した。それ以降、彼女たちは、女子高等教育は実施しなかったが、女子初等教育と中等教育を実施し、教育された母と妻、主婦を養成し、朝鮮の近代化に貢献しようとした。1938年度現在、オーストラリア人女性宣教師が開設した初等学校は4校(女子生徒963人、男子生徒296人)、中等学校は2校(女子生徒180人、男子生徒40人)で、アメリカ女性宣教師が開設したミッションスクールに比べるとその規模は大きくない。しかし、彼女たちは、地域の教会などで開設されたデイスクール(初等学校レベル)、幼稚園、夜学校などで活躍する朝鮮人女教師を多く養成した。そして女性宣教師は養成した朝鮮人女教師と共に、農村で朝鮮人女性(既婚女性と学校に通えない少女)に対する啓蒙活動(読み書きや衛生教育の他、女性をエンパワーメントする活動)を行った。 次に、朝鮮人女教師の役割を釜山地域の女子学校の調査から検討した。オーストラリア人女性宣教師が開設した日新女学校や公立の朝鮮人女子中等学校を調査して、教育内容の特徴(時期別の学科編成)、女子生徒の特徴(家庭的背景、創始改名における特徴など)、輩出された女教師(ヤン・ハンナなどの人物分析)等を明らかにした。 最後に、朝鮮人女教師の役割を学校教育の他に、地域における社会教育の観点から検証した。女教師たちが開いた夜学校等に注目し、当時の朝鮮における女教師の幅広い役割を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、女性宣教師の場合は、アメリカの他にオーストラリア出身の女性宣教師に研究対象を広げ、彼女たちの教育活動や意識を明らかにした。 第二に、女性宣教師関係の資料のなかから、朝鮮のミッションスクールで教えた日本人女教師に関して記した資料を得ることができた。 第三に、朝鮮人女教師の役割について、釜山地域のミッションスクールや公立女子中等学校を調査し、教育内容や生徒の視点から検討した。 第四に、夜学校運動などの社会教育の観点から朝鮮人女教師の役割について検証し、多角的な分析を行った。 以上の四つの点からみて、本年度の研究はおおむね順調に進展した
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究では、まず第一に、カナダ人女性宣教師について検証する。彼女たちは朝鮮の北部地方(咸鏡道)と満州で活動した。彼女たちが残した1次資料を分析し、女子教育の実態と女性宣教師の意識について明らかにする。 第二に、釜山地域の他、デグ地域の女子教育を検証するため、資料調査に着手する。 第三に、朝鮮人女教師たちによる社会教育をさらに分析する。 第四に、女性宣教師たちが貧困などの問題で学校に通えない女性のために実施した社会教育(夜学校など)について分析する。 第五に、朝鮮に渡った日本人女教師の実態を分析する。
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