2020 Fiscal Year Annual Research Report
Formation of the concept on waste and transformation of materiality in Africa
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18H03444
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 守恵 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 准教授 (10402752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 修一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (00322347)
重田 眞義 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (80215962)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ / 廃棄物 / ゴミ / 都市と農村 / エチオピア / ニジェール / 循環 / 在来と外来 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、現代アフリカに暮らす人びとが日常生活で用いるモノが不用になる過程を人とモノの多層的な関係の様態(=マテリアリティ)と位置づけ、市場経済や近代学校教育の浸透、砂漠化など自然環境の変化にともなってゴミのマテリアリティが変成するメカニズムを解明することである。三年度目(2020年度)は、新型コロナウィルスの影響を考慮して、これまでの調査データの整理とオンラインでの学術交流を中心に研究活動を進めた。三年度目に予定していた調査渡航や対面での国際学術集会の開催・成果発信については、四年度目(2021年度)に実施する予定で繰越手続きをとったが、新型コロナウィルス感染症の拡大が深刻化したため、引き続きこれまでの調査データの整理・分析とオンライン国際ワークショップを開催した。 これまでの調査データとして、エチオピア起源植物エンセーテの栽培や加工(在来非耐久材)、エチオピアで利用されている土器の製作や利用(在来耐久材)に関わる語彙と用例の整理をおこない、「不用なモノ」に関わる用例について分析を進めた。個々の研究メンバーは、この研究プロジェクトに関わるこれまでの研究成果について、学界に限らず一般向けにも講演をおこなった。また本研究課題の概要についても、ウェブサイト等にて発信した。 2020年度にアフリカにて実施する予定であった対面での国際ワークショップを、2022年3月10日にオンラインで実施した(Aari Language of Omotic family: Understanding the Recognition of Materiality and Environment)。京大、東京外大、山口大学、ライデン大学から参加発表があった。最終年度に廃棄物にかかわるマテリアリティとそれに関わる物質的な循環について対面で国際研究集会を実施するための議論もおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
三年度目及び繰越手続きをとった四年度目の研究活動を終えて、以下の点で本研究課題は、やや遅れている。本研究は、比較的湿潤な気候であるエチオピア高地を中心とした東アフリカと干ばつが頻発するニジェールを中心とした西アフリカを主な調査地域とし、在来・外来および耐久性を基準に分類した次の4類型が、ゴミとして不用になる過程とその物質的な循環を比較検討する。(1)在来非耐久財(植物素材を使用したモノ)、(2)在来耐久財(地域内の素材を使用した工芸品)、(3)外来非耐久財(外来素材を用い大量生産をめざし規格化されたモノ)、(4)外来耐久財。加えて、学術交流や成果発信などを重ねることにより、ゴミ概念を再検討することも目指している。 本研究課題の三年目に入り、海外での調査研究や対面での国際ワークショップの実施が、当初の予定通りには進められていない。現在までの進捗状況としては、廃棄物という課題が、一つの国だけにはおさまらないグローバルな課題であると同時に、人々の生活や文化的な行為に直接的に関わるローカルな事象でもある点に留意し、ローカルな事象としての「不用なモノ」の理解をさらに深めるために、これまでの調査研究で収集した現地の言語の中でも、不用なモノをめぐる語彙や用例なども研究対象に含めて、データの整理・検討を進めた。有形のモノを対象にして物質的な循環を検討すると同時に、言語的な側面(無形のモノ)からも、「不用なモノ」について検討していくアプローチを加えることで、これまで留意していた、「汚い」といった表現と、モノを不用と捉える過程との関連性について文化社会的な側面をふまえて理解する試みを継続中である。当初は四年度までに海外調査や対面での国際ワークショップを実施し、最終年度にその研究成果を発信する計画をたてていた。これらの点において、研究の進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度から新型コロナウィルス感染症の拡大が深刻化したことにより、二年度から四年度まで、海外への調査渡航や対面での国際ワークショップの開催を見合わせる状況が続いている。この状況に対して、三年度から、不用なモノをめぐる語彙や用例なども研究対象に含めて、言語的な側面(無形のモノ)からも「不用なモノ」について検討していくアプローチを加えて研究に着手している。最終年度の研究の推進方策としては、引き続きこの言語的な側面から「不用なモノ」について検討するアプローチを採用して、無形のモノからも廃棄物をめぐる事象を分析・検討する。さらに、可能な範囲内で調査渡航をおこなうとともに、海外から日本に研究者を招聘して、日本において国際ワークショップを実施し、廃棄物をめぐるマテリアリティや物質的なモノの循環との関連性について議論をおこなう。 繰越の手続きによって、四年度(2021年度)に実施したオンライン国際ワークショップのディスカッションを踏まえて、今後予定しているワークショプでは、エチオピア起源植物エンセーテ栽培や加工、土器の製作や利用を具体的な事例として念頭におきながら、栽培、加工、製作、利用に関わる物質的なモノの循環とその循環を促す知識や技法についてセッションを組織し、その循環の中で不要なものが生み出されたり、生み出されなかったりする過程について議論する。このセッションには、四年度(2021年度)国際ワークショップに参加発表したAzeb Amha博士(ライデン大学)を発表者として招聘予定である。この国際ワークショップの開催時期については、新型コロナ感染症の状況をふまえて決定予定である。この国際ワークショップの成果を公開することを検討している。国際ワークショップの開催時期によって、成果の編集期間が不十分であることも考えられるため繰越をする可能性が生じることも想定している。
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Research Products
(21 results)