2018 Fiscal Year Annual Research Report
Regional Cooperation in Mainland Southeast Asia as Thailand is a Center and Economic Rivalry between Japan and China
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18H03450
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
末廣 昭 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (60196681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮島 良明 北海学園大学, 経済学部, 教授 (90376632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重層的な地域協力 / 地域の連結性 / 地域の中国化 / 日中の経済的競合 / 一帯一路イニシアティブ / 経済回廊 |
Outline of Annual Research Achievements |
*2018年度は①定例研究会、②専門家を招聘しての研究会(公開)、③メンバーによる「連載タイと中国・CLMV」(『タイ国情報』2018年1月号から同年11月号まで連載)への寄稿、④2018年8月ミャンマー=タイ東西経済回廊の現地調査、以上4つを実施した。 *①の定例研究会については月1回のペースで実施した。ただし、10月は元JICA研究所所長の北野尚宏氏から「中国の対外援助の動向」について、11月には中国の雲南大学国際関係研究院の畢世鴻教授から「中国の対外戦略と東南アジア」について、2019年2月には元『週刊東洋経済』編集長の西村豪太氏から「中国の対外戦略、ジャーナリストの観点から」についてそれぞれ報告を受け、研究会は関係者にも公開した。また、2019年2月には雲南大学の畢世鴻教授を客員教授として学習院大学に招聘し共同研究を進めた。 *③の連載は、共同研究会のメンバーが自分の課題について執筆を行った。具体的には、末廣が第1回(アジアゲートウェイとしてのタイ)、第3回(タイ東部経済回廊)、宮島が第2回(タイと中国CLMVとの貿易)、助川が第2回(ASEAN経済共同体の現状)と第6回(ミャンマー=タイ調査旅行の成果)、伊藤が第3回(中国のデジタルエコノミー)、大庭が第4回(日本のアジア地域戦略)、青木が第4回(タイのメコン地域戦略)、柿崎が第5回(タイと中国の高速鉄道建設)、大泉が第5回(日本企業のタイプラスワン戦略)を、それぞれ分担して執筆した。 *④の現地調査(車による実走)は2018年8月に、ヤンゴンから車で出発し、ディラワとバゴーの工業団地で聞き取り調査、パアンで宿泊のあとタイとの国境ミヤワディ=(タイ側メーソット)に行き、国境を越えたあと、山を越えて南下しバンコクに到着した。その成果はバンコクでの講演会(末廣)や、③の連載第6回目(助川)で報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
*1年目の本研究課題の進捗状況は概ね当初計画したとおりに進行している。もっとも、2018年8月のミャンマー=タイ東西経済回廊の現地調査(車による実走)は、メンバーのひとりが調査に出発する直前に体調を崩したために、急遽参加を取りやめた。その代わり、2018年11月に中国の雲南大学から招へいし、報告を行ってもらった畢世鴻教授を、2019年2月(2週間)に、学習院大学客員教授として改めて招聘した。 *なお、2018年11月の畢教授の報告会は、実質的にミニ国際シンポジウムの体裁をとり、日本貿易振興機構アジア経済研究所で「中国一帯一路戦略研究会」を主宰する大西康雄氏、早稲田大学名誉教授で、長年大メコン圏(GMS)開発の研究に従事してきた白石昌也氏にコメントをお願いした。また、日本タイ学会のメンバーもこの報告会に参加した。 *ミャンマー=タイの現地調査は、ミャンマーが雨期のさなかに実施した。8月16日に到着した段階では、道路事情はそれほど深刻ではなかったが、18日に宿泊した東部のパアンはすでに洪水が始まっており、街に面したイラワジ川も氾濫直前の状態であった。幸い無事タイに入国することができたが、翌週はパアンの近郊は死者が出るほどの大規模な洪水に見舞われた。したがって、現地調査にあたっては、慎重に日程を組むことの重要性を改めて認識した。
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Strategy for Future Research Activity |
*2019年度の本研究課題の推進方策は、2018年度とほぼ同様の活動を念頭に置いている。①月1回のペースの定例研究会(メンバーの個別発表)、②外部報告者を含めたミニシンポジウムの開催、③雑誌における連載の継続、④本研究課題と関係の深い国・地域での現地調査の実施。 *以上うち③の連載については、引き続き『タイ国情報』を活用して、「アジアの世紀を振り返る」と題して、タイ、東南アジア、東アジア、中国、日本に関する論点を整理する予定である。とくに、1992年の有名な世界銀行報告書『東アジアの奇跡(The East Asian Miracle)』で述べられた「公正な所得分配を伴った高い経済成長」や、1980年後半から2000年代初めまで東アジアを席捲した民主化運動と民主主義の定着が、2010年代以降、一転して経済格差の拡大や権威主義的支配(強権的政治体制)の復活へと、大きく流れが変わった背景とその現状を分析することを企画している。 *2019年8月の現地調査については、中国の昆明からベトナムとの国境の町・河口(ベトナム側はラオカイ)をへて、ハノイに至る鉄道ルートを実際に乗車して踏査する。いわゆる南北経済回廊の「ベトナムルート」を、自動車ではなく鉄道で確認するもので、4年前に同じメンバーで実施した昆明市の建設中であった新幹線の南駅も視察する。また、ハノイでは近郊の電子工場を訪問する予定で、現地調査には日本貿易振興機構アジア経済研究所のベトナム担当で、現在、バンコクに駐在中の坂田正一氏の協力を得ることになっている(参加の内諾を得ている)。 *2020年の2月から3月には、以上の活動の成果についてミニシンポジウムで報告することを計画している。
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