2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regional Cooperation in Mainland Southeast Asia as Thailand is a Center and Economic Rivalry between Japan and China
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18H03450
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
末廣 昭 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (60196681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮島 良明 北海学園大学, 経済学部, 教授 (90376632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重層的な地域協力 / 地域の中国化 / ASEANの連結性 / 日中の経済的競合 / 新型コロナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究業績として、2020年3月に末廣昭ほか『アジアの新たな地域秩序と交錯する戦略――タイとCLMV・中国・日本』(現代中国研究拠点研究シリーズ No.21、東京大学社会科学研究所)、xvi+ 283頁を刊行した。現代中国研究拠点研究シリーズの一環として刊行したのは、そもそも本共同研究の出発が大学共同利用機関・人間文化研究機構の「現代中国研究拠点事業」(2007年から2016年)の一環として始まり、研究シリーズからすでに4冊(2008年、2009年、2011年、2014年)、研究成果を刊行しているからである。研究成果の連続性を確保するために、現代中国研究拠点研究シリーズから刊行したが、もちろん「はじめに」のなかで、本報告書が科研費基盤研究Bの成果であることを明記している。 本報告書は、研究目的にそって、第一部タイと中国・CLMV(4つの章)、第二部日本の戦略(2つの章)、第三部タイからの視座(4つの章)、第四部中国からの視座(2つの章)の、計4つの部と12の章から成り立っている。タイトルにあるとおり、「交錯する戦略」をさまざまな角度から立体的に描き出すことに努めた。次に、第3章では本共同研究の核となる、タイの東部経済回廊(EEC)と中国の一帯一路イニシアチブ(BRI)の関係を明らかにし、第11章では、ASEAN諸国を対象とする日本と中国の間の「第三国市場協力」について詳しく紹介した。また、8月に実施した中国の昆明からベトナムのハノイまでの陸路による南北経済回廊の実態調査の結果については、その実走記録を第1章で詳しく紹介した。 以上の報告書とは別に、研究会のメンバーは本研究に関連するテーマについて、精力的に研究成果を発信してきた。その詳しい内容は、研究業績一覧を参照されたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも述べたように、2019年度は概ね、予定通りに研究会と現地調査を実施した。現地調査では、雲南大学の畢世鴻教授(2008年度に客員として学習院大学に短期招聘)と、バンコクに現地調査員として滞在する日本貿易振興機構アジア経済研究所の坂田正三氏(ベトナム経済が専門)の全面的な協力を得て、雲南省昆明から南下して、国境のラオカイを越えてハノイに至る南北経済回廊の調査を、滞りなく実施することができた。また、研究会では、8月の調査に先立ってベトナム経済の報告会を開催し、10月にはアジア経済研究所の山田紀彦氏(ラオス政治が専門)に、ラオスにおける鉄道建設と中国の経済協力について、臨場感あふれる報告を行っていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は3年間の本共同研究の最終年度にあたる。そこで、研究会のメンバーと相談したうえで、進捗が著しいラオスを縦断する高速鉄道の現状と、ラオスとタイの国境経済の現状の調査を、最終年度の現地調査として企画した。ラオスの高速鉄道は、これが2021年に完成すれば、タイ東北部で建設が遅れているタイ中国共同事業である高速鉄道事業にもはずみがつき、中国昆明からバンコクまでの鉄道網の完成に大きく近づく。したがって、ラオスの高速鉄道事業は、本研究会の研究課題である「大陸部東南アジアと中国を結ぶ経済回廊」のかなめの一つを構成する事業であり、その現地調査を実施することは、本研究の最終年度にふさわしいテーマと言える。 ところが、2020年3月以降、新型コロナウイルスがタイ、マレーシアに波及し、4月に入ると、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムにも、数は少ないものの広がりつつある。そのため、当初予定していた2020年8月のラオス・タイ調査が中止となる可能性は高い。その場合には、本研究プロジェクトの研究分担者である北海学園大学の宮島良明教授が主に担当してきた、北海道における中国・ASEAN諸国からのインバウンド観光客の動向、とりわけ新型コロナウイルス以降、劇的に観光客数が減った観光地の現状について、視察とデータ収集を実施する。同時に、北海学園大学において、「新型コロナウイルスと中国・ASEAN諸国」に関するミニシンポジウムを、畢世鴻教授など外部招聘者も含めて企画する。
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Research Products
(35 results)