2019 Fiscal Year Annual Research Report
Governance for Cooperative Solution of Sustainability Issues Based on Cross-boundary Practices: Comparative Case Studies in Asia
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18H03455
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
大塚 健司 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター環境・資源研究グループ, 研究グループ長 (20450489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 香 近畿大学, 総合社会学部, 教授 (00319899)
小國 和子 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (20513568)
菅野 拓 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (10736193)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 持続可能性 / 協働解決 / 越境的実践 / ガバナンス / アジア / 災害 / 流域管理 / 都市農村連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アジアの持続可能性課題の協働解決が求められている現場において観察される様々な部門・分野・アクター間の垣根や境界をまたぐような課題解決に向けた諸活動を「越境的実践」としてとらえ、越境的実践による協働解決を図るためのガバナンスのあり方を探究しながら、サステイナビリティ研究の新たな枠組みを構築することを目指している。2年目にあたる本年度は国内にて5回の研究会を開催したほか、国際開発学会春季大会でのラウンドテーブル(陸前高田・6月)、オランダ・ロッテルダムのエラスムス大学でのワークショップ(7月)を行うとともに、フィールド調査を通して事例研究を積み重ねつつ、文献サーベイを踏まえた共通の分析枠組みを検討した。 国際開発学会ラウンドテーブルではメンバーからの報告を基に参加者とのインタラクティブな議論を通して、個別・比較事例研究の方法や着眼点について新たな知見や示唆を得ることが出来た。 エラスムス大学でのワークショップではboundary spanning, boundary spannersという共通コンセプトをもとにアジア、ヨーロッパの事例報告を通して、研究者と実務家が共有できる記述・分析枠組みについて検討を行った。 具体的な事例としては、東日本大震災におけるサードセクターと市民協働、インドネシア南スラウェシ州の組織的灌漑管理、中国貴州省ミャオ族の非物質文化の継承とソーシャルビジネスを通した都市農村連携、中国淮河流域の水汚染被害地域における現地NGOと研究者の協働を検討したほか、研究代表がタイ・チェンライのメー・ファー・ルアン大学にて行われたメコン流域の越境水資源管理における研究者とNGOを中心としたステークホルダー・ダイアログに参加した。また、災害研究におけるアクションリサーチやアジアの減災プロジェクトでのNGOの役割についてゲスト報告による討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例研究については、各メンバーがフィールドとする日本、中国、インドネシアにおいて当初計画で想定していた災害対応、流域管理、都市農村連携、水汚染被害に関して検討を行ったほか、中国・メコン流域の越境水資源管理のステークホルダー・ダイアログを参与観察することが出来た。またメンバーによる研究会のみならず、ゲスト講師による事例報告、エラスムス大学との合同ワークショップの開催、学会報告など一連の研究活動を通して事例研究の方法と追加調査のポイントについて示唆を得るとともに、新たな事例の発掘を行うことが出来た。 また文献サーベイを踏まえ上記一連の活動のなかで越境的実践の比較事例研究の共通枠組みの検討を進めることが出来た。共通枠組みとしては、行動(action)-省察(reflection)という2つのベクトルに着目して、行動に関する3つの側面(主体、境界、方法)と省察に関する3つの側面(成果・影響、要因、役割)を明らかにしていくことを提案したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまで2年間の研究活動を継続・発展させながら、最終年度となる来年度の成果のとりまとめの方向を定めるべく、主に以下の研究活動を行う。 第一に、事例研究に関する文献・現地調査を継続的に行う。具体的には、災害対応(日本)、流域管理(インドネシア、中国―メコン)、都市農村連携(日本、中国)、環境汚染被害(中国)を取り上げる。現下の新型コロウィルス流行の世界情勢に鑑み、現地調査については第2四半期以降に行えるよう計画を立案する。また新型コロナウィルス等の感染症対策についても、本科研の切り口からどのように貢献できるのか議論を行っていく。第二に、上記事例研究の比較検討のための共通の枠組みについて、インタラクティブ・ガバナンス、バウンダリー・スパニング(スパナース)、アクションリサーチ、トランスディシプリナリー研究等を中心に文献サーベイを継続して最新の研究動向を把握しつつ、議論を深めていく。第三に、上記事例研究及び比較事例研究の枠組み構築にあたって、国内外の研究者・実務家をゲスト報告者として招いた研究会の開催や個別にヒアリングを行いながら、新たな事例情報の蓄積と共有、そして共通の分析枠組みの補強を行っていく。第四に、下半期に国際開発学会等にて本科研テーマに関する企画セッションを設けて、各メンバーが研究報告を行い、広く関心を持つ研究者・実務家との意見交換を重ねて、研究方法や枠組みの改善やフォローアップ調査のポイントの洗い出しを行う。 そのほか、引き続き各メンバーが所属学会等での研究発表を行うとともに、論文・書籍の執筆を進め、完成したものから順次公表していく。 また、最終年度の成果のとりまとめの方向として、和文書籍出版のフィージビリティについて検討を開始するとともに、英文での成果発表の機会や方法を探っていく。
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Research Products
(15 results)