2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a multisensory fusion ICT system transmitting attractiveness of traditional crafts
Project/Area Number |
18H03458
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
長谷川 光司 宇都宮大学, 工学部, 教授 (50272761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 美恵 宇都宮大学, 工学部, 教授 (00344903)
阿山 みよし 宇都宮大学, 工学部, 教授 (30251078)
佐々木 和也 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (60292570)
松島 さくら子 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (60344909)
東海林 健二 宇都宮大学, 工学部, 教授 (70143188)
森 博志 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (80538447)
鶴田 真理子 宇都宮大学, 工学部, 助教 (80748202)
石川 智治 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90343186)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 伝統工芸 / 結城紬 / 和太鼓 / デザイン支援 / 多感覚融合 / ICTシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,遠隔通信における感性要素を明らかにすることを目的とし,結城紬及び和太鼓を対象として,KICS (感性インターネットコミュニケーションスペース) の i) 視触覚部,ii) 視聴覚部,そして,イラストデザイン支援システムを対象に iii) インターネットコミュニケーション部の基盤技術を確立することを目的としている.平成30年度は以下のように研究を推進した. i) 結城紬の質感に関する感性評価実験:本年度は,質感評価語を用いた感性評価実験,布地の力学特性計測,布地の保温性計測を行い相互関係を明らかにした.また,熱伝対による布地の保温性計測では,結城紬は,他産地絹織物に比して,保温性が高い特長があることを実証した.並行して,結城紬の着姿シミュレーションの設計に着手し,3次元映像表示も含めたシステム開発を開始した. ii) 視聴覚相互作用を利用した和太鼓の臨場感に関する評価実験:和太鼓における,映像の奥行き感,主観的等価音圧レベル,及び視聴覚間の主観的同時点の相互の関係について,実験的な検討を行った.具体的には,相対的な奥行き感のある刺激映像(ある距離差を伴った二つの太鼓がある映像)とその音を用いて,様々な音圧差を付加して被験者に提示し,その印象評価を行った.また,太鼓打撃時のエネルギー伝搬の様子について,統計的エネルギー解析法(SEA)を用いた解析を行うための実験装置の充実を図った. iii) イラストデザイン支援システムの開発:素材となるカラー写真を下敷きにして,手描き線画インターフェースでカラーイラストのデザイン支援を行うイラストデザイン支援システムのプロトタイプを作成した.ユーザは多数のカラー写真から1つを選択し,それを薄く表示したキャンバス上に指先や電子ペンで線画を描くと,システムがカラー写真を参照して線と線の間を適切な色で彩色するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度は,実施計画に基づき,i) 結城紬の質感に関する感性評価実験,ii) 視聴覚相互作用を利用した和太鼓の臨場感に関する評価実験,iii) イラストデザイン支援システムの開発を行った.具体的に得られた結果は,それぞれ以下の通りである. i) 結城紬の質感に関する感性評価実験:結城紬の質感は,他産地絹織物に比して,ふっくら温かいと評価されること,そして,ふっくら感の評価には,布地の力学特性の曲げ剛性と圧縮仕事量,温冷感の評価には,圧縮仕事量,平均摩擦係数,表面粗さが関連することを明らかにした.また,熱伝対による布地の保温性計測において,結城紬は,他産地絹織物に比して,保温性が高いことを実証した. ii) 視聴覚相互作用を利用した和太鼓の臨場感に関する評価実験:相対的な奥行き感のある刺激映像(ある距離差を伴った二つの太鼓がある映像)とその音を用いて,様々な音圧差を付加して被験者に提示し,後に(1.5秒後)鳴った太鼓の音の印象に対する評価実験を実施した.実験結果より,後に鳴った太鼓の主観的等価音圧レベルを算出したところ,基準の太鼓(先に鳴った太鼓)が前方にある場合には小さくなり,基準となる太鼓が後方に場合には大きくなるという結果を得た. iii) イラストデザイン支援システムの開発:ユーザが,選んだカラー写真を薄く表示したキャンバス上に指先や電子ペンで線画を描くと,システムがカラー写真を参照して線と線の間を適切な色で彩色する,イラストデザイン支援システムのプロトタイプを作成した.ディスプレイ1画面およびディスプレイ2画面のものを作成し,2画面のものでは,ユーザは線画を描きながら彩色結果を確認することができる.このプロトタイプシステムを利用したユーザの使い勝手の調査は今後の課題である. 以上により,実施計画に対応した結果が得られていることから,概ね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,KICS (感性インターネットコミュニケーションスペース) の i) 視触覚部,ii) 視聴覚部,及び iii) インターネットコミュニケーション部について,以下の計画に基づいて研究を推進する. i) 結城紬の質感に関する視覚的および触覚的特徴を伝える画像・映像表現方法の検討:KICSの基盤技術の検討を見据えて,結城紬の視覚的特徴である生地の表面特性に基づく法線マップにより視覚的な質感表現方法を確立を目指す.また,結城紬の触感的特徴である保温特性について他産地絹織物との相違などを明確化し,その特性に基づいて暖かさの視覚的表現を目指す. ii) 視聴覚相互作用を利用した和太鼓の臨場感に関する評価実験:これまでに引き続き,和太鼓における,映像の奥行き感,主観的等価音圧レベル,及び視聴覚間の主観的同時点の相互の関係について,実験的な検討を実施する.今後は,映像刺激として,2Dおよび3Dの奥行き映像を用い,それらが視聴覚間の等価性に与える影響を調査する.また,統計的エネルギー解析法 (SEA) を用い,和太鼓の縁や内部の構造の違いによる響きの違いに関する研究に着手する. iii) イラストデザイン支援システムの開発:素材となるカラー写真を下敷きにして,手描き線画インターフェースによるカラーイラストのデザイン支援を行う手法を観光ツールに応用する.これまでに,観光写真から短時間でカラーイラストを完成して,印刷あるいはクラウドに保存する思い出クロッキーシステムを設計した.今後は,日光彫等の伝統工芸の体験教室での利活用を目指す.体験教室では短時間に主な工程を経験し,かつ,満足感が得られるようにする必要がある.短時間でカラーイラストを制作できる思い出クロッキーシステムは,日光彫等の体験教室で参加者が下絵を作成するのに好適である.
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Research Products
(8 results)