2019 Fiscal Year Annual Research Report
マグノニクス物質のオペランド共鳴非弾性軟X線散乱測定及びX線偏光歳差分光の開発
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18H03467
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮脇 淳 東京大学, 物性研究所, 助教 (70462736)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共鳴非弾性X線散乱 / 放射光 / 軟X線分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り以下の2つの研究を進めた。 1)共鳴非弾性軟X線散乱(RIXS)装置の高度化による高エネルギーマグノン観測手法の開発 開発したRIXS分光器の回転機構を用いて、試料回転(θ)とRIXS分光器の回転(2θ)について、RIXSスペクトルをθ-2θスキャンによる測定し、非弾性散乱ピークのエネルギー損失の角度依存性を取得し、マグノンの運動量依存性を測定した。測定対象としたY3Fe5O12(YIG)(111)単結晶では、RIXSにマグノンと考えられる明瞭な非弾性散乱のピークが観測され、2θ=45~135°のスキャンによって得られたRIXSスペクトルのピークフィッティングによって、マグノンのピークのエネルギーシフト、すなわち分散の測定に成功した。さらに、高周波印加下でのRIXS測定も実施し、高周波印加中のマグノンピークの観測も達成している。 2)X線偏光歳差分光法の開発 位置分解能を有するCCDを組み込むことによって開発したX線偏光歳差分光法のセットアップにて、実試料での測定を行った。測定対象としたYIG(111)単結晶において、YIG単結晶から散乱してきたX線を多層膜によって偏光解析し、多層膜からの反射光をCCDによって位置分解するとによってX線偏光歳差分光スペクトルの取得を行った。Fe L3端吸のエネルギーによる共鳴条件のスペクトルから、吸収端前の非共鳴のスペクトルをバックグランドとして差し引くことによって、試料中のマグノンに由来すると考えられる振動構造が観測され、装置として機能していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に予定していた高度化した共鳴非弾性軟X線散乱装置による実際の試料におけるマグノン分散の観測、高周波印加下での測定にまで至っていることから、おおもね順調に計測が完了している。また、開発を行ったX線偏光歳差分光法のためのセットアップでも実際の試料での測定を達成しており、開発がおおむね順調に完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 共鳴非弾性軟X線散乱による高エネルギーマグノン観測に関して、2018,2019年度に開発した角度分解共鳴非弾性軟X線散乱システムを用いて、試料中のマグノンの分散の取得を行う。さらに、試料に高周波を印加することによってマグノンを誘起させた状態でのRIXS測定も行い、マグノン分散の高周波による変調を捉え、周波数に対するスペクトル変化の依存性、マグノンの分散の変化(エネルギー・波数依存性)について系統的に観測することにより、高周波によるマグノン誘起の機構、デバイス中でのマグノンの制御の可能性について議論へと展開する。 2)X線偏光歳差分光法の開発に関して、2018,2019年度に開発した測定システムの小改良を行った上で、実際の試料の測定を行う。X線偏光歳差分光の測定では、共鳴条件と非共鳴条件の差分を取ることによるバックグランド除去の重要性が明らかとなり、このために必要なCCD検出器の角度調整機構を導入する小改良を施すことによって、測定効率の大幅な向上を目指す。試料の測定では、磁場と高周波を印加し、マグノンの位相を揃えた上で、X線偏光歳差分光法を適用できるようにし、比較的低エネルギーのマグノンの観測を行う。最終的には散乱角依存性による分散測定の実現可能性までも検証を行う計画である。
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Research Products
(7 results)