2019 Fiscal Year Annual Research Report
X線散乱法による物質表面および埋もれた界面の階層構造の可視化
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18H03479
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
田尻 寛男 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 研究員 (70360831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊川 秀訓 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 情報処理推進室, 主幹研究員 (60344397)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射光 / 表面・界面 / X線散乱 / 階層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高輝度放射光による回折・散乱手法をつかって、結晶表面および埋もれた界面のナノ・ミクロンスケール構造、すなわちメゾスコピックレベル構造から原子レベル構造までの表面階層構造を可視化する手法開発を目的としている。この目的を遂行するために、ナノメートルサイズの微細構造を有するテスト試料をもちいて、放射光によるコヒーレント散乱実験を実施し、我々が開発した解析コードを利用することにより、同実験で得られた散乱像から実空間像を再生することに成功した。さらに、我々が開発したデータ収集系と最新の二次元検出器を用いて実際の放射光実験に実用した。 一方で、表面X線回折・散乱は、X線と物質との相互作用が弱いがゆえに、高輝度放射光光源の出現によって初めて実験が実施可能となった研究分野である。そのため、1980年代頃から発展してきた比較的歴史の浅い研究分野である。しかしながら、この「相互作用が弱い」ことのおかげで、他の手法と比べ1桁以上高い解析精度を誇る。このような数十年にわたる表面X線回折・散乱の歴史を電子線回折と対比しながら俯瞰しつつ、本研究で目標とする表面・界面のナノ・ミクロンスケール構造の可視化へと繋がる、計測手法や実験装置の発展および表面・界面原子のイメージングを可能とする最新の解析手法について総括した。この成果は、応用物理に関する学術雑誌Japanese Journal of Applied Physics(59巻、020503-(1-12)頁、2020年)に論文掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度整備した冷凍機付試料冷却マニピュレータの冷却効率を向上させる改良を行った。これにより試料基板からの熱散漫散乱を低減した高い信号対雑音比の実験が可能となった。次に、窒化シリコン薄膜上に作成した数十から数百ナノメーターサイズの微細構造を有するタンタル製テスト試料を準備した。このテスト試料からのコヒーレント散乱実験を実施し、我々が開発した解析コードをもちい同実験で得られた散乱像から実空間像を再生することに成功した。さらに、我々が開発したデータ収集系と最新の二次元検出器を組み合わせ、実際の放射光コヒーレント散乱実験に実用することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) メゾスコピック・ナノスケールレベルの微細構造を有するテストパターンの放射光コヒーレント散乱から実空間像再生を行い、本手法の空間分解能を評価する。 2) 昨年度に引き続き、我々が構築した高精細回折像が取得できる計測システムを、広逆空間領域での表面X線回折計測およびコヒーレント散乱計測といった実際の放射光実験に実用する。
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Research Products
(4 results)