2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H03507
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 慎也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (90371088)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 認知科学 / 神経科学 / 時間知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳は時間情報をどのように表現しているのであろうか?2つの事象の時間差が十分大きい時、脳はどちらの事象が先に生じたかを容易に判断できる。一方、2つの事象の時間差が小さいとき、その判断は難しくなり、どちらが先であるか曖昧に感じる「時間順序の不確定性」が生じる。また、これら2つの事象が同時であるという「同時性知覚」も生じうる。このような時間順序の不確定性と同時性知覚が、脳内の独立した情報処理に基づいたものであるかという問題を検討するため、2つの視覚刺激を用いた一連の心理物理実験を行った。実験参加者の前にLEDを左右に配置し、これらのオンセットが-150msから150msの範囲となるような時間差で提示した。また、各々のLEDが点灯する時間(duration)は50msから250msの範囲で(和が300msとなるように)選択し提示した。実験参加者は、「右先行」「左先行」「同時」「同時ではないが順序不明」の4つの選択肢から選んで回答した。左右のLEDの点灯時間に関わらず、刺激オンセットの時間差が十分大きい場合、「右先行」「左先行」という正しい判断が行われた。また、左右のLEDの点灯時間が近いまたは等しい場合(例:右150ms、左150ms)には、刺激オンセットの時間差が0ms近傍において、「同時」と判断する確率が上昇した。ところが、左右のLEDの点灯時間が大きく異なる場合(例:右50ms、左250ms)には、「同時」と判断する確率は低く、確率的に右先行あるいは左先行の回答がなされた。同時性知覚の出現確率は、左右の点灯時間が近いほど、上昇した。なお、「同時ではないが順序不明」の回答はほとんどなされなかった。これらの結果は、左右の点灯時間が異なると、同時性知覚が消失する傾向になることを示すもので、脳内で「時間順序の不確定性」と「同時性知覚」が独立して処理されていることを示唆するものであった。また、本年度は、生理学的計測のセットアップを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は、時間知覚における脳内並列システムを解明することである。本年度は、視覚において、「時間順序の不確定性」と「同時性知覚」が独立したシステムで処理されている可能性を示すという知見を得ることが出来た。このことから、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は視覚刺激を用いた実験により、「時間順序の不確定性」と「同時性知覚」の関係性を検討した。今後、刺激のパターンや他のモダリティーを用いた検討を行い、系統的な理解を目指す。
|
Research Products
(4 results)