2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of vibration-driven DNA amplification system performing at a speed per second and a temperature of 37 degrees
Project/Area Number |
18H03524
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
山口 栄雄 神奈川大学, 工学部, 教授 (20343634)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 征司 神奈川大学, 工学部, 准教授 (40343636)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | DNA / 核酸 / 増幅 / PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAを増幅させるために広く使用されるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)では、様々な要因で本来のターゲット以外に余分な増幅部分(非特異性)や断片由来のスメアが生じることで、DNA解析の結果に不正確さが引き起こされる。これらの問題を克服するため、以下の観点から実験を行った。 これまで使用する酵素は、37℃で至適活性を有する大腸菌由来のKlenow Fragmentであったが、特性的に振動に弱いという弱点を有する。そこで、酵素の安定性と 活性のバランスを取るため、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を調整したバッファを使用した。また、振動によるDNAのダメージと塩基配列のズレで生じる効率の低下を補償するため、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つBSM酵素をKlenowと混合することでDNA増幅の効率を高めた。以上の組み合わせにより、より忠実な増幅かつ秒速でのDNA増幅法を目標とする。 一方で、振動変性機構の解析を行った。水溶液中のDNAサイズをガウス鎖およびみみず鎖モデルにより見積もり、持続長からDNAの慣性半径を求め、DNAの最大運動エネルギーを計算した。最終的に、DNAが振動によって変性することを定量的に示した。 また、振動子の振幅値は、低い周波数から指数関数的に小さくなっていくことから、1周期当たりのDNA質量当たりの振動エネルギーは、振幅値に比例し、振幅値と同じ特性が得られ、その特性は、ある周波数を境にエネルギー値が大きくなっていくことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
振動させたDNAの増幅の成否は、アガロースゲル電気泳動では、染色液としてSYBR GreenⅠを用いてDNAのバンドで確認した。キャピラリー電気泳動は、マイクロチップ型電気泳動装置を用いて行った。マイクロチップの分離流路内で分離バッファ中の色素と結合しながら、荷電物質(DNA)が分離され、LED光照射によって発生する蛍光信号を検出しその強度を解析した。併せて、外部からチューブ内のDNAに加えられるエネルギーを詳細に計算した。 とりわけ、振動変性のメカニズムの解析を詳細に行った。具体的な手順は以下の通りである。水溶液中のDNAサイズを見積もるために、みみず鎖モデルを採用し、更に、持続長からDNAの慣性半径を求め、DNA一つが得る1周期当たりの最大運動エネルギーを計算した。また、DNA一つの内部に囲まれている水が得る最大運動エネルギーを計算し、これらとは別に、DNA一つのDNA同士が結合する水素結合エネルギーを求め、水素結合エネルギーとDNAの運動エネルギーを比較することで、DNAが振動によって変性することを定量的に示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで使用した酵素は、37℃で至適活性を有する大腸菌由来のKlenow Fragmentであったが、特性上振動に不安定であるという弱点を有する。そこで、酵素の安定性と活性のバランスを取るためにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を調整したバッファを使用したが、まだ、増幅には不十分であった。今後は、より安定度が期待できるT4酵素を中心に実験を進める。また、これまでは、マイクロチップ型電気泳動での増幅確認を実施していたが、より確実に、振動で変性したDNAが再結合するまでの時間を短縮するために、リアルタイムPCR方を用いた増幅の確認実験も実施していく。 振動によるDNAと酵素に対するダメージの傾向として、エネルギーを大きくした場合、低い周波数ではDNAが損傷しやすく、高い周波数では酵素が失活しやすく、最小エネルギーの場合は、DNA損傷と酵素失活の影響を弱く受けると推察される。よって、今後サイクル数を増やした実験を行う場合、各電圧の1サイクル当たりの最小エネルギーを求めた上で、実験を行っていく。
|
Research Products
(5 results)