2018 Fiscal Year Annual Research Report
変形性膝関節症のリスク推定のための足部骨格構造計測システムの開発
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18H03559
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Research Institution | Biophilia Institute |
Principal Investigator |
山下 和彦 バイオフィリア研究所有限会社, その他部局等, 研究員(移行) (00370198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 満 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (10300047)
李家 中豪 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (80815001) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 足部特徴量解析 / 足部3D計測システム / 変形性膝関節症 / 外反母趾 / 足部のバイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,足部の骨格構造を定量的かつ簡便に計測するシステム開発を目的としている.評価すべき足部の特徴量について,解剖学と歩行のバイオメカニクスの観点から,踵の形状,内側縦アーチの形状,拇指角,舟状骨高等とし,プログラム開発を行った. 本システム開発では,利用者が専門的知識を必要とせず,安価に利用できることを心掛けた.本システムの構成は,ハードウェアについて,a.カメラによる撮影部,b.カメラを動かす駆動部,c.撮影動画を伝送する無線部で構成される.ソフトウェアは,d.足部外観取得部,e.特徴量を定量的に評価する解析部,f.フィードバック部で構成した.そこでデバイスとして,iPhoneなどのスマートデバイスを利用することとした.スマートデバイスは,世界中に普及しておりデバイスラグの問題を解決できると考えたためである. その結果,基礎実験において1mm以下の精度で足部の3D再構成が実現できた.予備実験では3mmの精度であったが,1mm以下まで向上できたことは足部機能評価に有用であると考える.また床面と足部の分離,足部特徴量の定量的データの取得プログラム,および解析プログラムなどを開発した. 実証実験の観点から,足部のバイオメカニクス的特徴を解析するために,197名のフィールド調査を実施した.その結果,前足部高,足部高,拇指角等の関係が見いだされ,これら情報から外反母趾のリスク推定ができる可能性が示唆された.同様の見解が変形性膝関節症にも応用できると考えられる.また足圧分布などの計測手法と組み合わせ,先行研究で提案されている分類以上の分析を足部特徴量を基盤として実現できることが見えてきた.さらに,中高年の調査を一部前倒しし,100名の計測を実施し,解析を進めている.変形性膝関節症のリスクパラメータに足部の要素が重要であることが見いだされつつある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の目標であった足部3D計測システムが80%程度の完成の域まで到達できた.さらに,本研究で目標としていた1 mm以下の精度が実現できたことは大きな成果である.達成状況から2年目につなげることができていると考える.また2年目の課題であったフィールドテストを前倒しで実施し,本システムを利用した外反母趾のリスク推定が行えた.中高年についても100名の計測が実施でき,解析を進めることができている.この点では当初の予定以上に進められているといえる. 開発当初はカメラユニットを入手し,デバイスの開発からすべて行っていたが,解析プログラムの開発を修正して進めたことで,iPhoneなどのスマートデバイスでの利用が可能となった.そのため,普及を考えた際のデバイスラグを解消し,より安価な計測システムが実現できることとなった.これは大きな成果であると考える. 1年目に実現できていないこととして,レントゲン撮影と本システムの同時計測が挙げられる.レントゲン撮影との同時計測により骨格との精度検証を行うことを想定していた.この対応として,理学療法士らがマーカを特徴点に貼り付け,本システムによる検証を行うことを試みた.この手法を用いたことで,解析プログラムの精度検証と有益な情報が得られ,開発の前進が図られたので一定の成果が得られた.しかし,レントゲン撮影とのクロス評価も実施したいと考えており2年目以降に行うこととする. 以上より,概ね順調に研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の前半は1年目の開発を継続する.すでにハードウェアの基礎と足部3D計測システムの解析部の鍵となる部分が完成の域にあり,フィールドテストを1年目にも導入している.2年目以降は,システムの開発に加えて,フィールドテストとバイオメカニクス的考察を実施する.2年目以降は,A.横断的見地から足部の骨格構造に問題がある対象者の把握,B.足部の骨格構造と変形性膝関節症などの関節疾患との関係,C.足部の骨格構造による変形性膝関節症の発症率への影響,D.足部の骨格構造と歩行のバイオメカニクス的解析について明らかにすることを目的とする. フィールドテストの対象者は自立歩行が可能な中高年1500名とする.本対象者のうち,国民健康保険医療費の該当者,特定健診,介護保険データがある方については,過去5年分にわたり調査を行い,疾病モデルから足部のリスク評価を実施する.あわせて,足部の骨格に影響を与える因子として,下肢筋力が挙げられることから計測に含めることとする.また足圧分布と体重(BMI)を調査することで変形性膝関節症に影響をおよぼすとされる先行研究の結果を視野に入れつつ解析を進める. これまで足部の変形については詳しく解析されておらず,歩行のバイオメカニクスに影響をおよぼすにもかかわらず,学術的基礎が構築されてこなかった.本研究では,精度が高く,様々な地域で簡便に利用できる計測システムを開発することで足部の解剖学的見地を取り入れた学術的基礎を構築することを目指している. 変形性膝関節症は潜在的患者を含めてかなり人数が多く,足部の変形が進んでいることもわかっている.未病の対象者の足部を計測し,予防モデルが明らかになれば,超高齢社会の日本が抱える課題を解決する一助となる.そのためにも簡便に誰でも計測が可能なシステムを開発し,予防や痛みが出ないための方策まで含めて提案することを目標とする.
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Research Products
(4 results)