2019 Fiscal Year Annual Research Report
変形性膝関節症のリスク推定のための足部骨格構造計測システムの開発
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18H03559
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Research Institution | Ryotokuji University |
Principal Investigator |
山下 和彦 了徳寺大学, 健康科学部, 教授 (00370198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 満 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (10300047)
滝沢 茂男 バイオフィリア研究所有限会社, その他部局等, 教授(移行) (10451204)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 足部の3次元計測 / 足部の骨格特性の評価指標の構築 / 足部のバイオメカニクス / 変形性膝関節症 / 外反母趾 / スマートフォン |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症や歩行機能の低下による転倒骨折は要介護リスクを高める.これらは,足部の形状に応じて歩行中に発生する機械的負荷により影響を受ける.そのため,外反母趾や踵骨外反,扁平足などの足部の骨格や構造的特性を検討する必要があるが,これらは明らかにされていない.その理由として,足部の骨格構造を定量的,簡便かつ非侵襲に計測する方法が開発されなかったことが挙げられる.そこで本研究では,足部の骨格構造を定量的に計測し,歩行のバイオメカニクス的見地から関節疾患に与える影響を明らかにすることを目的とする. 本研究では,1.簡便かつ定量的に足部骨格を計測する足部骨格3D評価システムを開発し,2.虚弱高齢者を含む中高年の大規模コホート研究から足部の骨格構造と関節疾患のリスク評価を行う.そしてリスク要因の見える化と予防の推進のために,3.足部の評価指標を構築する. ここまでに,1.足部の骨格構造を計測するためのスマートフォンを用いたシステム開発を行った.計測精度について距離1mm以下,角度は0.5度以下を達成した.2.フィールド実験からは,中高年419人(40-89歳)の足部骨格3Dデータの取得,関節疾患や足部の形状に影響をおよぼす糖尿病などの疾病の情報,および日常的な活動情報として歩数の情報を取得した.3.足部の骨格評価のために,舟状骨高,拇指角,中足骨間距離と高さなど10項目を定義し,その妥当性を検証できた. 結果より,年齢階層別および性別における足部の特徴量の変化が明らかになった.男性は骨格構造に加齢変化は大きくないが,女性では舟状骨高,前足部の特性に違いが観察され,足部のメカニカルストレスに対する応答性が影響を受けている可能性が示唆された.さらに,外反母趾などの足部の変形には,横アーチの形状と中足部の骨格の歪みが強く影響することが多変量解析から推測されつつある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,1.足部骨格3D評価システムを開発し,2.虚弱高齢者を含む中高年の大規模コホート研究から足部の骨格構造と関節疾患のリスク評価を行う.そして3.リスク要因の見える化と予防の推進のために,足部の評価指標を構築する. 1.足部骨格3D評価システムは,スマートフォンを用いることで,簡便でデバイスラグがないよう開発を進めた.計測者は手動であっても,計測精度を距離1mm以下,角度は0.5度以下を達成し,中高年の足部の骨格特性を評価するのにほぼ十分なシステムを構築できた.しかし,解析において,一部マニュアルで行う部分が残っており,改良の余地が残っている.また足幅などの立位姿勢によっても一部精度に影響をおよぼすことがあり,一定の計測精度が得られるよう,計測環境,システム構築の両面から検討を進める. 2.フィールド調査では,中高年419人(40-89歳)の足部骨格3Dデータ,関節疾患や足部形状に影響する糖尿病などの疾病情報,日常的な歩数情報を取得した.本研究で着目する足部の特徴量に形態的変化がみられる対象群は,膝部などへのメカニカルストレスが大きいと考える.歩数が多ければ,その頻度も大きくなる.この観点から解析を進める.さらに年齢階層別,性別における足部特徴量の変化が示された.女性では舟状骨高,前足部の特性に違いが観察され,足部のメカニカルストレスに対する応答性が影響を受けている可能性が示唆された.外反母趾などの足部変形には,横アーチと中足部の骨格の歪みおよびその強い柔軟性が影響することが多変量解析から推測されつつある. 3.足部の骨格評価のために,解剖学的特徴とバイオメカニクスの観点から舟状骨高,拇指角,中足骨間距離と高さなど10項目を定義し,妥当性を検証した. 以上より,中足部と前足部の3次元的解析が足部や膝関節への負荷を評価する重要な要素であることが明らかになりつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目もこれまでの計画通り研究を進める.ここまで概ね順調に開発および評価が進められており,大きな問題は見られない.当初の予定では,2年目までに1500人の足部の評価を行うことを計画していたが,新型コロナの影響で大規模な計測会は延期となり,前半に行った419名のみのデータ取得となった.しかし,基礎データの検証としては十分な人数の計測が実現できており,研究の進捗には大きな影響をおよぼさない.歩数データは1500名の詳細な結果が得られており,長期的な足部に対する影響を評価する準備が整っている. 3年目は,419名の追跡を含む,中高年2800名を調査する.本対象者のうち,国民健康保険医療費の該当者,特定健診,介護保険データがある方については,過去5年分にわたり調査を行い,疾病モデルから足部のリスク評価を実施する.あわせて,足部の骨格に影響を与える因子として,下肢筋力が挙げられることから計測に含める. これまで足部の変形については詳しく解析されておらず,歩行のバイオメカニクスに影響をおよぼすにもかかわらず,学術的基礎が構築されてこなかった.本研究では,精度が高く,様々な地域で簡便に利用できる計測システムを開発することで足部の解剖学的見地を取り入れた学術的基礎を構築することを目指す. 一方で,変形性膝関節症は潜在的患者を含めてかなり人数が多く,足部の変形が進んでいることもわかっている.未病の対象者の足部を計測し,本研究から予防モデルが明らかになれば,超高齢社会の日本が抱える課題を解決する一助となる.そのためにも簡便に誰でも計測が可能なシステムを開発し,予防や痛みが出ないための方策まで含めて提案することを目標とする.
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Research Products
(6 results)