2020 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代以後の人文学ならびに芸術における語りの形式についての領域横断的研究
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18H03570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 暁生 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70243136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (00362400)
小関 隆 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10240748)
三輪 眞弘 情報科学芸術大学院大学, メディア表現研究科, 教授 (20336647)
橋本 伸也 関西学院大学, 文学部, 教授 (30212137)
田辺 明生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
佐藤 淳二 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (30282544)
藤井 俊之 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (30636791)
森本 淳生 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90283671)
上田 和彦 関西学院大学, 法学部, 教授 (90313163)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 1970年代 / ポストヒューマン思想 / 環境思想 / ミニマルミュージック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は合計8回のズーム研究会において、とりわけ「集うこと」と「食べること」、そして「生命とモノの境界線」の今日的意味について議論した。またこれらの議論を触媒として制作されたオンライン・イベント「ぎふ未来音楽展2020 三輪眞弘祭 -清められた夜-」(9月19日)をライブ配信し、「集えない時代」の意味を問うた。このイベントは特設サイトを設けた(英語版もあり)。当日リアルタイムのみの中継であったが、視聴回数は3156、 全体の5%が海外からの視聴だった。また公演当日のウェブサイト訪問者は2583人、ページビュー数 9819回である。また8月28日にはオンラインでプレイベント:「プロローグ「音楽の終わりの終わり」は、ここからはじまる――」を中継した。 また代表者の岡田は研究班での議論に基づく論考『「第九」- 再び抱き合えるか』(8月4日 朝日新聞朝刊全国版)を発表、三輪のイベントとセットの形で9月に発行された『音楽の危機』(中公新書)は四大新聞を含む15を超えるメディアの書評等で取り上げられ、1月1日のNHK・FMで坂本龍一により紹介された。 このほかに「生きるための人文学」三回の動画を制作しYoutubeにアップ(11月:2020年12月末に合計700回以上再生)。これはパンデミック下の人文学の可能性を問うもので、疫病と世界史(藤原辰史)、コロナ禍のEU(遠藤乾)、未来の音楽の可能性(三輪眞弘)を論じた。なお9月19日のイベントは朝日新聞12月17日「2020年の回顧」欄(音楽)において「今年の三点」に選ばれ、また2020年度のサントリー音楽賞および佐治敬三賞を受賞する栄誉に欲した。 このほかに国際シンポジウム「ポスト=ヒューマンの人文学(Les Humanites posthumaines)をZoom開催した(2021年11月14日:フランス人1名、日本人3名による報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近代社会のシステムの尋常ならざる機能不全、そして近代化の基盤であった「人間性」の崩壊が現実のものとなりつつある現在、本研究の主題はコロナ以前にましてアクチュアリティをもちつつある。この近代の機能不全の始まりを1970年代に見る歴史的研究、今日における「人間」の終末的状況の認識、アートによる感性的形式による人文学的認識の社会発信の三点とも、極めて進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
5年目になる来年度はこれまで4年間の研究で焦点化していた「終末」をキーワードとした研究会を8回開催すると同時に、最終とりまとめへ向けた論点の収斂を行う。近代を支えていたあらゆる制度が崩壊しつつある現在、「人間」概念の解体は必然的に「人文学Humanities」の瓦解をもたらさずにはおれない。来年度はポストモダンが喧伝されるようになった1970年代を歴史的に振り返ると同時に、当時すでに予感されていた人間の終焉が現実のものとなりつつある今日、果たして歴史学や思想や芸術学といった「人間」前提の諸学はいかにして生き残り得るか、その可能性と不可能性が2021年度の主題となる。 また計画では人文学の先端的議論を触媒としてアート作品を制作し、社会に問うことが本研究班の中心課題であるが、来年度は「バイオ/バイオアートと時間」を中心主題に据える。生命と非生命がもはや連続的なものとなり、生命なのか人工物なのか分からない領域が次々創り出されつつある現在、人間中心の従来の人文学の前提自体が大きく崩れているといって過言ではない。人間的なものと自然との関係を定義しなおすことは、人文学の存立の喫緊の課題であり、また人文学における認識を感性的にアートの形で表現する意義も大きいと考えられる。 さらには今日の世界システムに代わる思想を真剣に考えることこそ、恐らく今日の人文学の最大の使命であろうが、それに際しては社会の機能不全プロセスの「緩慢さ」をキーワードとして意識し、黙示録モデルではない、いわばバベルの塔モデルによって代替思想を考えることが喫緊であると思われる。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] 食権力論の射程2021
Author(s)
藤原辰史
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Journal Title
服部伸 編『生政治から見た「幸せ」になるためのせめぎ合いとその技法 身体と環境をめぐる世界史』(人文書院)
Volume: 1
Pages: 28-47
Peer Reviewed
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[Book] 音楽の危機2020
Author(s)
岡田暁生
Total Pages
256
Publisher
中公新書
ISBN
978-4-12-102606-4
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