2021 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代以後の人文学ならびに芸術における語りの形式についての領域横断的研究
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18H03570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 暁生 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70243136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (00362400)
小関 隆 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10240748)
三輪 眞弘 情報科学芸術大学院大学, メディア表現研究科, 教授 (20336647)
橋本 伸也 関西学院大学, 文学部, 教授 (30212137)
田辺 明生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
佐藤 淳二 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (30282544)
藤井 俊之 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (30636791)
森本 淳生 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90283671)
上田 和彦 関西学院大学, 法学部, 教授 (90313163)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 配信芸術 / 人文学 / 生命 / 語り / 文芸理融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は合計13回のズーム研究会を行い、とりわけ「ポスト2020/2022」、「ヴァーチャル・コミュニケーションの臨界点」、「ポストヒューマンの時代における歴史学」、「アートによる人文学の感性的社会発信」を焦点に議論を行った。つまり私たちが直面しているのはパンデミックをその一部とする「2020年問題」に他ならず、「2020年問題」全体に対峙せずして先の展望は開けない、という認識に立脚して、今年度はあらためて「人文学 beyond 2020」という総括的なテーマを設定し、哲学・思想や歴史学の領域における新たな可能性を考える趣旨の報告を連ねた。また芸術創作と人文学の媒介については、ライブによる芸術行為が電気メディアを介在することでなお同一のものたりうるのか、あるいは別のものが生まれる可能性はあるのかという議論が焦点になった。具体的には「ライブが生命のメタファーでありつづけてきたこと」、「ライブはすでにテレビの登場以来電気メディアと一体になっていたこと」、「パフォーマンス行為におけるスピリチュアリティの問題を真剣にとらえること」が議論の中心である。また本年度には、昨年2020年8月に本プロジェクトの一環として三輪眞弘が行ったオンライン・イベント「ぎふ未来音楽展2020 三輪眞弘祭 -清められた夜-」(9月19日)はサントリー音楽賞および佐治敬三賞を、代表者岡田がコロナを受けて出版した『音楽の危機』は小林秀雄賞を、それぞれ受賞したことも特筆すべきである。人間中心の従来の人文学の前提自体が大きく崩れ始めており、コロナ以後=2020以後の時代にあって、これがさらに加速することは間違いないと思われる現在、人間的なものを芸術を通して定義しなおすことは、人文学の存立の喫緊の課題であり、また人文学における認識を感性的にアートの形で表現する意義も大きい。なお予定していた国際シンポジウムはコロナのために延期を余儀なくされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた文学研究の国際シンポジウムは延期を余儀なくされたが、研究会を通した議論は着実に進みつつある。とりわけ「配信芸術」をキーワードにした論集とりまとめが具体的な像を結び始めている。とりわけ芸術学および科学史および思想の研究者に加え、ゲストとして実験科学者、AI技術者、そしてアート実践者を招いた3回の研究会では、「バイオ」と「メディア」をキーワードとする専門の枠を超えた学知融合が大いに進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
5年目になる来年度はこれまで4年間の研究で焦点化していた「配信」をキーワードとした研究会を8回開催すると同時に、最終とりまとめへ向けた論点の収斂 を行う。近代を支えていたあらゆる制度が崩壊しつつある現在、来年度 はポストモダンが喧伝されるようになった1970年代を歴史的に振り返ると同時に、当時すでに予感されていた人間の終焉が現実のものとなりつつある今日、果たして歴史学や思想や芸術学といった「人間」前提の諸学はいかにして生き残り得るか、その可能性と不可能性が2021年度の主題となる。 また計画では人文学の先端的議論を触媒としてアート作品を制作し、社会に問うことが本研究班の中心課題であるが、来年度は「バイオ/バイオアートと時間」 を中心主題に据える。生命と非生命がもはや連続的なものとなり、生命なのか人工物なのか分からない領域が次々創り出されつつある現在、人間中心の従来の人 文学の前提自体が大きく崩れているといって過言ではない。人間的なものと自然との関係を定義しなおすことは、人文学の存立の喫緊の課題であり、また人文学 における認識を感性的にアートの形で表現する意義も大きいと考えられる。 さらには今日の世界システムに代わる思想を真剣に考えることこそ、恐らく今日の人文学の最大の使命であろうが、それに際しては社会の機能不全プロセスの 「緩慢さ」をキーワードとして意識し、黙示録モデルではない、いわばバベルの塔モデルによって代替思想を考えることが喫緊であると思われる。
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Research Products
(6 results)