2019 Fiscal Year Annual Research Report
臨床倫理システムの哲学的展開と超高齢社会への貢献および医療者養成課程への組込み
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18H03572
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Research Institution | Iwate University of Health and Medical Sciences |
Principal Investigator |
清水 哲郎 岩手保健医療大学, 看護学部, 教授 (70117711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
会田 薫子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任教授 (40507810)
田代 志門 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50548550)
濱中 喜代 岩手保健医療大学, 看護学部, 教授 (70114329)
相澤 出 岩手保健医療大学, 看護学部, 講師 (40712229)
霜田 求 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (90243138)
浅井 篤 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80283612)
宮下 光令 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90301142)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 臨床倫理 / 高齢者ケア / 意思決定支援 / 心積りノート / 臨床倫理オンライン・セミナー / 老活 / 『看護学生のための哲学・倫理学・死生学』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究グループ(臨床倫理プロジェクト)は、本研究課題の目的と前年度までの達成状況を踏まえ、研究活動を推進した結果、次の諸点にわたる実績を収めた。 (1) 臨床倫理プロジェクトの理論と実践の哲学的検討と超高齢社会への貢献の可能性の探求:①〈皆一緒〉と〈人それぞれ〉のバランスという面から高齢者の暮らしとケアについて検討し、年度末のCOVID-19拡大にともなう医療資源配分の問題にも高齢者の人生の最善という視点で取り組んだ(成果発表はR2年度)。②高齢者の意思決定支援のツールとしてH29年度に刊行した『心積りノート〔改訂版〕』を使い勝手のよいものとするため短縮版の開発を行った(公表できるpdf版およびeBook版を完成)。③《老活》と「心積りノート」やACP(アドバンス・ケア・プランニング)をめぐる解説書作成の中間成果に基づく発表を、「ポスト健康寿命期」を「人生の最終段階」とする提案を含め複数行った。
(2) オンラインおよびセミナー等による臨床倫理ネットワーク作り:①臨床倫理セミナーを全国各地で開催し(主催・共催・後援等)、研究プロジェクトの成果の医療・ケア現場への普及に努めた。また、高齢者等の意思決定支援をテーマとする研修に本研究の成果を活かした。②臨床倫理の普及を目指して書籍の企画を進めた。③ウェブサイト「臨床倫理ネットワーク日本」のコンテンツを増やし、臨床倫理オンラインセミナー改訂、「心積りノート改訂版」eBook、各地の臨床倫理セミナーの案内等をアップした。
(3) 医療者養成課程への臨床倫理の組込み:新設大学看護学部1年から3年までの倫理関係4授業科目の統一教科書の改訂をし、『看護学生のための哲学・倫理学・死生学』2020年度用を完成させ、刊行した(なお、COVID-19 の拡大により、年度末に予定していた医療系の他の教育課程への応用可能性を含む共同検討は次年度に送った)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 本プロジェクトの理論と実践の哲学的検討と超高齢社会への貢献:① 哲学的検討は、本年度は(3)で言及する教科書作りのプロセスと併せて行ったため、理論全体の体系を整え、かつそれを哲学・倫理学については通常素人である医療・ケア従事者に分かる仕方で提示するという面で大いに進展があった。② 『心積りノート』の更なる改訂については、一般市民がやってみようという気になるために、内容を取捨選択して全体を縮める必要がある。そこで、一般向けおよびケア従事者向け解説書を別に作成し、『心積りノート』は小冊子にして行くという方針にした。このため本年度は現改訂版を基に縮小版の試行版をまずは作成して、高齢者自身に使ってみていただいた。これは当初の計画の変更であるが、計画自体としては「解説書2種とノート」を目指すことになったので拡大であり、また、研究の進行が滞ったわけではない。かつ、ケア従事者向け解説書の試行も兼ねた論考をすでに複数発表している。
(2) オンラインおよびセミナー等による臨床倫理ネットワーク作り:① 本年度のセミナー・研修会は2月中旬開催までは順調に進み、新しい地域(十勝、名古屋、東京)も加わった。が、その後、COVID-19 拡大に伴い、次年度の開催企画が次々と中止になっており、これを機会に社会全般においてオンラインによる活動への移行が予想される。そこで、② ウェブサイト「臨床倫理ネットワーク日本」の充実と、ここを拠点とするオンラインのセミナー、研修の充実が喫緊の課題となっており、本年度行った作業の速度を今後早める必要があろう。
(3) 医療者養成課程への臨床倫理の組込み:看護学課程の授業科目をコアとして倫理教育を組み込むという方向で、本年度は実質2回目の統一教科書作成となった。本書は4部構成であるが、前半2部の完成度は高い。後半2部を今後整備していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 本プロジェクトの理論と実践の哲学的検討と超高齢社会への貢献:① (3)の医療系学部教育課程への組み込みの検討の主たる成果である教科書作りが、本プロジェクトの理論・実践の検討と併せ行えることから、本教科書を単に「看護学生のための」テキストとして限定するのではなく、「医療・ケア従事者のための」汎用性のあるものとしていくことを検討したい。② 『心積りノート』は、上記進捗状況について述べたように「解説書2種と心積りノート(説明と記入部分双方を含む)」を目指す方針へと進展した。一般市民向け解説書は、老活(オイカツ)のすすめを中心に、まだ健康寿命期にある高齢者が今後に備えるためのものとして作成する。ケア従事者向け解説書は、本プロジェクトの理論的基礎を踏まえつつ、 ACP の理論と実践、厚労省「人生の最終段階ガイドライン」を有効に活用すること、老いについてどう考えるか等を含む。
(2) オンラインおよびセミナー等による臨床倫理ネットワーク作り:① 次年度中はCOVID-19の影響により、各地でセミナー・研修会を開催することは難しい。そのため、次に記すオンラインの活動により、これを補う方針とする。② ウェブサイト「臨床倫理ネットワーク日本」の充実と、ここを拠点とするオンラインのセミナー、研修の充実を喫緊の課題とする。そこで臨床倫理の考え方および事例検討の進め方に関するE-ラーニングのコンテンツ作成に重点を置くこととする。
(3) 教科書をさらに学生用に整備していく方針に変りはないが、(1)に記したように汎用性のあるものにしていく計画も平行して実施する。
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Remarks |
(1)は、本研究課題に到る臨床倫理に関する研究グループ「臨床倫理プロジェクト」の研究成果を医療・ケア従事者および一般市民に還元するためのサイト。 (2)は、(1)をも含み、臨床倫理プロジェクトの研究開発と医療・ケア従事者の連携のためのサイトであり、今後、医療・ケア従事者の臨床倫理に関する本研究と連携した活動を載せ、また、オンライン研修やeラーニング等の充実を目指している。
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