2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Natural and the Supernatural in Comparative Perspective
Project/Area Number |
18H03573
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
山中 由里子 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 教授 (20251390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 和彦 国際日本文化研究センター, 大学共同利用機関等の部局等, 所長 (90111781)
安井 眞奈美 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (40309513)
佐々木 聡 金沢学院大学, 文学部, 講師 (60704963)
山田 仁史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90422071)
野元 晋 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (10276420)
林 則仁 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (20738215)
大沼 由布 同志社大学, 文学部, 准教授 (10546667)
黒川 正剛 太成学院大学, 人間学部, 教授 (30342231)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 驚異 / 怪異 / 想像界 / 自然観 / 超常認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
「驚異」と「怪異」をキーワードに、主としてユーラシア大陸の東西の文明圏において、「自然」と「超自然」、もしくは「この世」と「あの世」の境界に立ち現れる身体・音・モノが、伝承・史料・民族資料・美術品などにどのように表象されているかを考察してきた。この成果を代表者山中と分担者山田の共編で『この世のキワー<自然>の内と外』(勉誠出版、2019年)にまとめ、文化的・歴史的事象としての驚異・怪異ーすなわちmirabilia, ajaibなどの訳語としての「驚異」と、怪・恠異・あやかし・物の怪などとして一次資料に登場する「怪異」ーの多様な事例を、地域や時代のバランスも考慮して紹介した。分担者・研究協力者も含め、計25名の執筆者は文学作品や美術作品、またはフィールド調査データの綿密な分析を通して、それぞれの時代・地域の自然観における驚異・怪異の位置付けや、隣接概念との関係性を解いた。また、個々の論考で採りあげた事例が、驚異と怪異の文化史のどの時点に当てはまるのか、同時代に他の文化圏で何が起こっていたのか、といった巨視的な展望を得るための見取図として比較年表を作成した。 上記の文化事象としての驚異・怪異に対して、日本語での分析概念としての<驚異>と<怪異>の意味範囲の「磁場」も浮かびあがってきた。すなわち、<驚異>とは時間的・地理的・心理的に遠い未知の(その原因が合理的に説明できない)珍しい事象で、博物学的な興味の対象となるような自然物や現象であるのに対して<怪異>は身近なところでも起こり得る、あるいは見慣れた日常の何かがずれるからこそ異常性が際立つ、常ならざる存在・現象といえる。 さらに、驚異・怪異の基層にある人類に普遍的な心性メカニズムを探るため、国立民族学博物館所蔵の民族資料を調査し、超常的な存在や異なるものを人が想像する際のイメージ形成のパターンを検証し、特別展として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論集『この世のキワー<自然>の内と外』では、驚異・怪異の豊富な事例研究を通して、それらが<自然>に内包されるものなのか、自然界を超越したものなのか、あるいは内と外のあわいに漂うものなのかを、各地域・時代の自然観の枠組みに位置付け検証することができた。超越的存在と宗教・自然思想との関連性については、より考察を深める必要がある。 歴史的文化事象だけでなく異なるものを象った絵画・彫像、仮面・衣装、祭礼道具などのモノ資料を調査・分類し、特別展「驚異と怪異―想像界の生きものたち」において展示することによって、世界全体に視野を広げ、想像界の「生物多様性」を動的・立体的な視点から捉え、人間の想像的行為と自然環境の相関関係を俯瞰することができた。代表者山中が編集した本展示の解説書(日英二か国語)は、一般書として河出書房新社から刊行し、すでに第5刷に達し、全国カタログ展「経済産業省商務情報政策局長賞」および日本タイポグラフィ年鑑2020「エディトリアル部門審査員賞」を受賞した。入館者数も多く(78682人)、新聞・ラジオ・テレビ・インターネットなどのメディアにも採りあげられ、極めて大きな社会的波及効果があったといえよう。関連する公開シンポジウムや「ひらめき☆ときめき サイエンス Kakenhi」の助成を得た子どもワークショップ「ゴミから生まれる異音獣!不思議なケモノはどんな音?不思議な音は何に見える?」などを通した社会還元も行った。 11月には海外研究協力者らを招いて国際ワークショップを開催し、これまでの成果を国際展開するとともに、理論的枠組みの中間検証を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は新型コロナ・ウィルスの感染拡大の関係で、分担者各自の成果発表の場となるシンポジウムも時期未定で延期や中止となっており、計画が立てにくい状況にある。 兵庫県立歴史博物館において特別展示を開催し、超自然的なものをめぐる人間の想像力の働きを理解するうえで最も効果的な視覚化を通して、研究成果の社会的な還元を行う予定であり準備はほぼ整っているが、状況によっては開幕が見送られる可能性がある。メンバー各自がオンラインリソースやリモート発注などのシステムを利用したり、旅行が可能な範囲で国内外の文献、伝承、美術品、民族資料などの調査を行い、集めた関連データや資料を集積する。移動の規制が長期化するようであれば、テレワークやオンライン会議に必要な機器を各自整備し、様々な文化圏・時代の驚異・怪異観念を相互比較する研究会をオンラインで開催する。海外研究協力者らを招いたワークショップは、状況が許せば年度後半に開催する。2019年に開催した国際ワークショップや、日本語で刊行した論集の内容を踏まえ、英文の論集の構想を練り始める。 これらの活動を通して、人間の想像力と自然環境の関係性についてさらに考察を深める。
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Research Products
(53 results)
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[Journal Article] What Is a Yokai?2019
Author(s)
Kazuhiko Komatsu
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Journal Title
Yokai: Ghosts, Demons and Monsters of Japan, Felicia Katz-Harris ed., Museum of New Mexico Press
Volume: -
Pages: 55-69
Int'l Joint Research
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