2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H03574
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
松本 伸之 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, その他部局等, 館長 (30229562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 課長 (20249915)
伊藤 信二 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 課長 (00443622)
沖松 健次郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 課長 (30332133)
和田 浩 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 室長 (60332136)
西木 政統 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (90740499)
小泉 惠英 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部, 部長 (40205315)
大原 嘉豊 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存修理指導室, 室長 (90324699)
斎木 涼子 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 室長 (90530634)
安藤 香織 公益財団法人徳川黎明会, 徳川美術館, 学芸員 (20555031)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高雄曼荼羅 / 空海 / 密教美術 / 両界曼荼羅 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本に密教をもたらした空海は、密教の理解には絵画などの造形作品が必要であると述べ、多くの造形作品を中国から請来した。帰国後は造形作品の製作に関わり、高雄曼荼羅とよばれる請来した両界曼荼羅を金泥と銀泥で模写した京都・神護寺の両界曼荼羅はその代表である。京都・東寺の講堂諸像も空海の構想、指導の下に造像された。本研究は、空海に関わる作品と、空海の造形観に関する研究である。 2021年度は、奈良・西大寺の十二天像(風天・羅刹天)、京都・神護寺の山水屏風、藤原光能像についてもスキャンによる画像を作成した。十二天像は高雄曼荼羅と同じ12世紀に描かれた数少ない絵画で、同時代の彩色を考察する上で貴重であるとともに、密教で重視された十二天画像の現存最古の作品という密教美術上の重要作品である。山水屏風は、密教修法の場で両界曼荼羅とともに用いられたもので、本作品は高雄曼荼羅と同じ場で用いられたと考えられる。 東京国立博物館所蔵の経蔵の天井を含めた内部に描かれた仏画をVRカメラで撮影した。経蔵内部は約1メートル四方で、通常のカメラでは全貌を撮影することができなかったが、VRカメラを用いて、全体を細部の観察が可能な解像度で撮影することができた。 また、2020年度に実施予定で、本年度に繰り越した京都・神護寺の両界曼荼羅(高雄曼荼羅)のスキャンを実施した。高雄曼荼羅は本研究の中心テーマであり、その高精細像はすでに取得済みであるが、その画像は作品にたわみがあったうえ、カメラで分割撮影して合成したため、画像に歪みと色や光の斑があった。今回作成した画像は、同作品の修理が終了した直後に大型のスキャナで画像を作成したもので、画面が完全に平滑であるうえ、レンズによる歪みや、画像合成によるずれがない。カラーと赤外線画像を取得したので、今後の研究や発表に活用ができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、本研究の中心課題である京都・神護寺の両界曼荼羅(高雄曼荼羅)の大型スキャナによるスキャン画像を作成した。糸目まで確認できる高精細画像なうえ、歪みや合成によるズレのないもので、今後の研究に重要な資料となる。令和3年以前には、空海筆の仁和寺所蔵の三十帖冊子の全項の画像、空海が製作にかかわった東寺講堂諸像のCTデータと画像、空海請来系統の両界曼荼羅、現存最古の彩色の両界曼荼羅、空海請来の密教法具等のデータも取得している。これらは密教美術史上の重要作品であるとともに、空海の造形観を考察する本研究遂行上欠くことのできない作品である。以上のことから本研究は順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現状ではコロナ禍により海外での調査旅行ができないが、状況が好転したら本研究の中心テーマである高雄曼荼羅の表現の起源といえるインドや中国への調査旅行を実施したい。不可能な場合には国内作品の調査を実施する。また、これまでに取得した作品データの分析をすすめる。2022年度は研究最終年度であるので、成果の取りまとめを行う。
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