2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the dynastic foundation period and its process in the World Heritage "Maya Site of Copan", Honduras
Project/Area Number |
18H03586
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 誠一 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 教授 (10261249)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コパンのマヤ遺跡 / 王朝創始 / ヤシュ・クック・モ / カレンダーラウンド / 異分野融合研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古代マヤ文明の中心都市であった世界遺産「コパンのマヤ遺跡」における王朝創始時期を正確に同定し、王朝創始過程を解明することである。そのために、碑文に刻まれた歴史を中心に復元された定説王朝史に、独自の考古資料と理化学分析資料で史料批判を加え、新たな王朝史を構築しようとする。 コパンの王朝創始時期と王朝創始過程における定説は、以下のようにして導き出されている。まず、1980年代後半からテキサス大学のD.Stuartが主導して祭壇Qの上面碑文を解読し、そこに刻まれているカレンダーラウンドの日付をコパンのその他の碑文と対照しつつ長期暦に結び付け5世紀前半の事柄と比定した。この定説によれば、西暦に直すと426年に王位についたヤシュ・クック・モという人物が、翌年コパンへやってきて王朝を開いた。つまりコパン王朝は外来人により開かれた王朝である。 1989年から1996年まで続いたコパンアクロポリス考古学プロジェクト(PAAC)参加の複数のアメリカ大学調査団により、アクロポリスの東側最下層で王朝創始時期の建造物や暦や碑文を刻んだ記念碑、王墓が次々と発見されていき、碑文解読の成果を傍証するとともに、最下層に近い地点に埋まっている建造物フナルの中で見つかった被葬者こそヤシュ・クック・モであると言われるようになった。この人骨の安定同位体分析は、この人物がティカル周辺の出身であることを示したため外来王朝説が補強された。 こういった中で初年度の研究は、まず祭壇Qに彫られたカレンダーラウンドの日付が本当に5世紀前半に比定されるのか検討すると同時に、独自の放射性炭素年代測定を40点程度行い、5世紀前半の建物とされるフナル、ジェナル、マルガリータという重層的建造物群の年代が4世紀以前しか示さない点を明らかにした。この結果に基づき、碑文の解読結果が本当に正しいのか、再検証を始めたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ人研究者は、コパン王朝の創始とその過程に関する定説の根拠を明確に一つの論文中で示しておらず、複合的な根拠で定説王朝史が構築されている。それにも関わらず、初年度には、定説の根拠となっている資料を一つ一つ文献、論文中で拾い上げていくことができている。
さらに問題意識もはっきりしており、独自の土器資料の修復と比較、相対年代の比定、独自の資料に基づく放射性炭素年代測定値の収集やアメリカ人が残した一次資料の新たな年代測定も少しずつできている。
こういった点から、研究はほぼ順調に推移していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、独自比較資料およびコパンアクロポリス考古学プロジェクト(PAAC)が収集した一次資料に関して、放射性炭素年代測定を続けていく。その際に、西暦420年頃~550年頃までは、較正曲線が平坦であることから、別の資料も参考にしつつ、統計処理も適用して年代の見通しをつけていきたい。
一方、土器資料に関しては、引き続き写真撮影、実測図の作成を進め、王朝創始期における新しい土器編年の構築を進める。
さらに、研究目的を達成するために、コパン遺跡中心部において新たな建造物を発掘調査し独自の碑文資料・考古資料を求めるとともに、上記の2つの研究から導き出される仮説を検証していく予定である。
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Research Products
(3 results)