2019 Fiscal Year Annual Research Report
Between Southeast Asia and SouthAsia: Development, Ethnicity, and Religion
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18H03599
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
今村 真央 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (60748135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 敬裕 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10586382)
池田 一人 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (40708202)
デスーザ ローハン 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (60767903)
高田 峰夫 広島修道大学, 人文学部, 教授 (80258277)
藤田 幸一 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (80272441)
倉部 慶太 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (80767682)
木村 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90468835)
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (90612937)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国境 / インド / ミャンマー / トンチャイ / 越境 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、国境研究でも東南アジア研究でも国境について強調されるのは、近代国境線の恣意性である。国境線は、近代政治(とりわけ帝国主義と植民地支配)の恣意的産物であり、その地理的条件に必然性はない、という論点である。国境線はどこか他の地に引かれてもおかしくなかった、もしくは全く引かれなくてもおかしくなかった、という指摘だが、本研究の対象地域(ミャンマー・バングラデシュ・インド国境地帯)に関しては、この定説に見直しが必要だろう。 確かに、ミクロ・レベルにおいて、国境の恣意性は明らかである。国境地帯のどこを見ても、現地に暮らしているのは、国境をまたがるーーつまり、国境に分断されたーー少数民族ばかりだ。しかし、マクロ・レベルにおいて、国境を線(ライン)ではなく地帯(ゾーン)として捉えると、その地理的設定や歴史的経緯にはある程度の必然性を認めざるを得ないだろう。 ミャンマー・インド国境地帯の歴史を遡ってみると、確かに、近代以前に陸路の長距離交流はより盛んであったようだが、植民地支配下に国境全域で断絶が押しつけられたわけではなく、海路や沿岸部では越境が逆に盛んになった。山地では、国境線による統制が強化された一方で、海路・沿岸部では逆に越境移動に拍車がかかった。(その結果、後にロヒンギャ問題が先鋭化したといえる。) つまり、ミャンマー・インド国境においては、沿岸部と山地で国境がもたらした影響が劇的に異なるため、「国境」を一概に論じることはあまり有益ではないかもしれない。ヒトやモノの移動も、地域によってその規模や距離が大きく異なるため、恣意性・必然性という構図がどの程度効果的か、見直しが必要であろう。トンチャイは『地図が作ったタイ』で、近代の空間認識技術の影響を見事に解き明かしたが、インド・ミャンマーの例が示しているのは移動技術の決定的な役割かもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本報告書の対象年度(2019年度)は、本研究企画の2年目にあたり、各分担者による現地調査が本格的に始まる年と予定されていた。実際、全体会合では、準備段階にも関わらず、前年度の調査を基に新鮮な分析が提示され、事例比較の枠組みと分担も確認できた。現地(インド・バングラデシュ・ミャンマー)調査もほぼ予定通り実施され、ドイツでの国際学会でパネル発表も実施した。 本プロジェクトには5年間という比較的長い時間が与えられていることから、これまで取り組んでいた問いに答えを提示することのみならず、新たな問いを発見し、外に広く提示するという貢献も目指している。この目標に向けては、特に最初の二年間は、各研究者がすでに馴染みのあるフィールドを掘り下げるのみならず、新しい地に出向き、慣れ親しむことが効果的だ。対象地域の国境地域は広大な山地帯であり、全域に精通することは現実的には不可能だ。しかし各研究者が複数の場所に慣れ親しみ、そして研究者同士が知識を共有することによって、対象地域を点ではなく面として理解することができるだろう。研究者がフィールドを紹介し合うことが特に効果的なので、複数の研究者が一緒に国境地域を訪れる機会を通して、複眼的視点から分析対象にアプローチすることによる相乗効果が期待できる。 本年度は、まず6月に全体会合を開き、各研究者が各々の問い(リサーチ・クエスチョン)を提示し、プロジェクト全体としてどのような比較・統合が可能か話し合った。本年を通して、各問いに関する先行研究の整理も行い、各事例研究を大きな研究の流れに位置付けた。ミャンマー西部・インド北東部・バングラデシュの研究者による共同研究にはほぼ前例がなく、共同研究の意義は、全体会合ですぐに明らかになったが、不明な点が多い地域だけに、実証的データを揃えると共に、比較・統合に向けての焦点を予め確認することが必要であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
この国境地域の先行研究は限られているので、充実した文献リストを作成し、共有することが有益だ。国境地域においては資料が国ごとに分散される傾向が高いため、独自の整理方法が考案したい。また、散逸しがちな少数民族言語の文字・映像資料の具体的な収集・保存方法も提示したい。 国外の研究者との活発な連携が有益であるので、国外から複数の研究者を招聘する予定である。同時に、関連する科研プロジェクトとの共催イベントも積極的に開催する。(特にロヒンギャ問題については勉強会などを共催する可能性が高く、具体案がすでに検討されている。) また、中間報告会(ワークショップ)について、詳細に計画を立てる必要がある。中間報告会後に、ワーキングペーパーを集める予定だ。ワーキングペーパーを相互に読み合い、活発な議論を通して、特集号もしくは単著の出版を目指したい。 本プロジェクトでは、経済から宗教まで様々な事象を取り上げるが、比較・統合の焦点としてとりわけ注目しているのが、民族・言語多様性である。我々が注目する地域は、高い民族・言語多様性が、宗教、政治、経済にも深い影響を与えている。そして民族・言語多様性を分析する上で、正書法の確立と受容を調査するが有効であることが明らかになってきた。 韓国で開催予定の国際会議において、正書法をトピックに大型パネルを組み、多彩な事例研究の発表を申請したところ、すでに、著名な学術誌の編集者にも打診し、特集号に向けての具体的な案も提示されている。本企画のメンバー及び非メンバーの協力研究者と合わせて、10以上の言語・民族をカバーする画期的な論集が生まれることが期待できる。 コロナ禍がいつ収まるか見通しが立っていないため、計画を詳細な計画を立てることは難しい。柔軟に対処することが必要となるだろう。
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Research Products
(30 results)
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[Book] Palgrave Macmillan2019
Author(s)
Max Martin, Vinita, Damodaran, Rohan D'Souza (eds)
Total Pages
252
Publisher
Geography in Britain after World War II: Nature, Climate, and the Etchings of Time
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