2020 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic analysis of pastoral societies in Central Asia
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18H03608
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
今村 薫 名古屋学院大学, 現代社会学部, 教授 (40288444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 成也 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (30192587)
星野 仏方 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (80438366)
兒玉 香菜子 (児玉香菜子) 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20465933)
久米 正吾 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 講師 (30550777)
地田 徹朗 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 准教授 (10612012)
塩谷 哲史 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30570197)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 牧畜技術 / 中央アジア / 歴史生態学 / 家畜化 / ヒトー動物関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中央アジア牧畜民の環境利用、生業ー経済活動、他民族との関係を歴史生態学的に解明することを目的としている。 中央アジア東部の初期牧畜民の考古学的研究においては、キルギス天山山中にある青銅器時代の遺跡モル・ブラク1遺跡から出土した動物骨(前年度までに収集したもの)のDNA分析および安定同位体分析から、家畜にどのような餌を与えていたか、また、先史時代における牧畜と農耕の関係について新たな牧畜社会像が描かれつつある。 18~20世紀の中央アジア西部牧畜民の歴史研究により、遊牧民の移住と牧畜の形態を明らかにした。これは、現代のトルクメン人の起源につながる問題であり、かつトルコ、カザフ、ウズベク、キルギスなどのチュルク系諸民族の生業分化(オアシス農耕、乾燥地の牧畜、商品の運搬と商業)を解明する鍵になる。 現在の牧畜社会の実態については、今年度は現地調査ができなかったが、昨年度末に収集した資料を分析したり、現地のカウンターパートに現地調査を依頼したりして、研究を進めた。その結果、気候変動などの環境変化圧に対して、牧畜民の判断、家畜自体の行動変化がレジリアンス(復元力)を持つことが示された。国際的な問題となったアラル海の環境汚染とアラル海(実際は湖)の縮小後の問題について、漁業の衰退に変わってラクダを中心とした牧畜が復活していることが明らかになった。また、カザフスタンの環境政策・牧畜政策に関する文献調査から、「牧草地法」が牧畜経営の成否の鍵となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年末から始まった新型コロナ感染症の世界的流行により、海外渡航が不可能になった。これにより、研究の入口である現地での調査、資料収集が困難になった。さらに、研究の成果発表の場である国際学会が、相次いで開催延期あるいは中止が決まり発表の機会が減った。具体的に4月に英国Oxford大学で開催される国際会議Desert Conferenceで、この科研のメンバー全員が発表する予定だったが、コロナ禍により急遽中止となった。 しかしながら、①これまで海外の現地から収取した資料(考古資料、ラクダDNA資料など)を日本国内で分析しることに注力する、②インターネットによって、海外の文献資料、報道資料を入手する、③現地のカウンターパートの協力を得て、必要なデータ(気象データ、植生データ、家畜のGPSデータ)を収集する、という手法を使って資料収集に努め、一定の成果を得た。 2020年9月に名古屋学院大学(オンライン)で、第4回研究大会を、2021年3月に第5回研究大会を国立遺伝学研究所(オンライン)で開催した。国内でも移動や集会が制限される中、オンライン方式で研究成果の共有を行った。 研究分担者の地田准教授が、カザフスタンで現地調査を行う研究計画を立てていたが、コロナ禍によりこれを実施できなかったので、来年度に研究費を繰越した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は新型コロナウイルス感染症の流行により、このまま海外渡航が難しいと予測して研究方針を以下のように計画している。 国内でこれまで収集した資料の解析と文献データの収集と解析に重点を移す。具体的には、キルギスの遺跡出土した動物骨と人骨の古代DNA分析及び安定同位体分析を推進し、初期農耕牧畜集団の調査地への移入状況や系統関係あるいは食物消費の特質を調べる(久米)。カザフスタンの人類集団のDNA解析から、中央アジアにおける人の移動を明らかにする。また、ラクダDNAサンプルの解析から、中央ユーラシアにおける両種のラクダの混血パターンを解明する(斎藤)。 インターネットによって、海外の文献資料、報道資料を入手し、16~19世紀の中央アジア西部への西欧、ロシアからの来訪者が書き残した旅行記、使節記の文献資料を網羅的に収集し分析を行う(塩谷)。日刊紙『カザフスタンスカヤ・プラヴダ』などを閲覧し、カザフスタン政府による牧畜・環境政策に関する一次資料を収集・分析する。これにより、ソ連時代から今日にかけての政府による政策がどのような影響を与えてきたのかという点について把握する(地田)。 現地のカウンターパートの協力を得て、気象データ、植生データ、GPSデータを収集して分析する(星野)。カザフスタンおよびモンゴル牧畜民に、近年の砂漠化にどのような対応を行っているかをアンケート調査する(今村、児玉)。
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Remarks |
研究成果を中心としたWebページである。国際的な情報発信と情報共有を目指し、和文・英文両方のバージョンを作成している。また、科研の成果報告を毎年1冊発行しているが、同時に、Web Journalとして公開している。
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[Journal Article] House mouse Mus musculus dispersal in East Eurasia inferred from 98 newly determined mitogenome sequences.2020
Author(s)
Li Y., Fujiwara K., Osada N., Kawai Y., Takada T., Kryukov A. P., Abe K., Yonekawa H., Shiroishi T., Moriwaki K., Saitou N., and Suzuki H.
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Journal Title
Heredity
Volume: 126
Pages: 132-147
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Early pastoral adaptations in the Central Tien-Shan of Kyrgyzstan and the Fergana Valley of Uzbekistan in the Bronze Age2021
Author(s)
Kume, S., Gakuhari, T., Arai, S., Motuzaite Matuzeviciute, G., Miyata, Y., Hoshimov, H., Abdykanova, A., Matbabaev, B.
Organizer
Margins or Nodes project’s concluding conference
Int'l Joint Research
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[Book] 沙漠学事典2020
Author(s)
日本沙漠学会編(今村薫、星野仏方、地田徹朗分担)
Total Pages
504
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4621305171
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