2019 Fiscal Year Annual Research Report
Modeling the Legal Decision-Making: AI and Legal Mind
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18H03612
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
太田 勝造 明治大学, 法学部, 専任教授 (40152136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 淳子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00251314)
佐藤 健 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (00271635)
浅水屋 剛 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 助教 (00377920)
今井 耕介 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00780032)
岡田 謙介 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (20583793)
齋藤 宙治 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 特任講師 (20779392)
米村 滋人 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40419990)
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
飯田 高 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (70345247)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リーガル・マインド / 法的判断 / 事実認定 / 量刑 / 要件・効果思考法 / AI / 脳科学 / 刑務所 |
Outline of Annual Research Achievements |
法専門家である弁護士,裁判官,検察官に共通してその専門性を象徴するものが,「リーガル・マインド」とされる.リーガル・マインドの中核には,個別具体的な事案についての妥当公正な判断をすることがあり,それを担保するものが,規範的ルールに事実関係を当てはめて判断を下す「要件・効果」の発想であるとされる.反面,このような思考様式は一般人の約束・契約や社会規範に基づく判断にも見られる.さらには,ルール違反者(その典型は犯罪者)も,一般に「犯意」の存在が処罰に必要であり,したがってルールに自己の行為を当てはめて,違法であるか合法であるかの判断をしている. 本研究では,従前の研究を継続し,fMRI装置(機能的磁気共鳴画像装置)やアイ・トラッキング装置などの先進技術を活用した実験,フィールド・エクスペリメント,更には脳内物質オキシトシンの分泌の有無と程度の調査など,文理を越えた多角的かつ学際的手法を駆使して,リーガルマインドにアプローチした.また,本研究では近時発達が著しいAIによる裁判支援システムのモデル化の基盤をも提供している. 法的判断をfMRIに入って参加者(被験者)に判断をしてもらうという実験データの蒐集を継続した.法専門家と一般人について,データを増加させし,国の内外で発表することのできる成果を得ている.また,島根あさひ社会復帰促進センターの協力を得て,受刑者の脳内物質の分泌の有無と程度,アイトラッキングテストなどによるデータ蒐集を実施し,国内外で発表できる成果を上げた.ただし,コロナウィルス・パンデミックのために,本研究は2019年度末には一時停止状態となっているが,2020年度に再開する予定である. リーガルマインドの脳科学的知見を組み込んだ「AIによって支援される裁判所」について,精緻化した実験デザインで調査を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルス・パンデミックの影響は,2019年度末に若干生じているが(たとえば,ヨーロッパでの学会報告のキャンセル),データ蒐集自体は継続しており,「非常事態宣言」が解除されれば,実験等を再開する予定である.このように,2019年度の研究は,順調に進んでおり,これまでに収集したデータの解析と,その成果の学会発表等も順次行ってきている.fMRI実験も,統計的に意味のあるだけのデータがほぼ蒐集できている.法的判断における感情の作用についての解明が進み,「合理的疑いを挟まない程度の証明」の判断についての実験の準備が整った. リーガル・マインドの脳科学的知見を組み込んだAIによる裁判支援システムの社会実装へ向けた調査も進んでおり,より現実的でより精緻なリサーチ・デザインによる調査を,インタネット調査として実施した(調査の手法と時期のゆえに,コロナウィルス・パンデミックの影響を受けなかった).民事事件の場合と刑事事件の場合とで,AI支援裁判に対する受容に差異があるか否か,及び,裁判の部分モジュール(事実認定,法的当てはめ,法的推論)のどれについてどこまでAIに任せることができるか,国民の評価と態度を調査することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,コロナウィルス・パンデミックによる非常事態宣言が解除され次第,島根あさひ社会復帰促進センターでのデータ蒐集,合理的疑いを入れない証明の判断についてのfMRI実験,法専門家と素人の間の判断の相違などのデータ収集をさらに進め,理論と仮説の精緻化をはかる.リーガル・マインド研究の成果に照らして,AI支援裁判に対する人々の受容可能性について,刑事・民事比較,裁判モジュール比較のデータ解析を進めて論文に仕上げる.研究成果の蓄積が進んできたことに鑑み,より積極的に国内外の学界での情報発信に努める.研究成果を論文として,国内外の学術雑誌に投稿し始める.それを通じて,国内外の研究者との討論による議論の深化を達成する.そのような理論・仮説・分析の深化に伴って,さらなる精緻化に努力する.いわゆる「ニューロ・ロー」という新しい文理融合の学際的研究分野に,より多くの法学者と脳神経学者,脳認知心理学者が興味を持ち,共同研究がより広く進められるよう,情報発信と対話を進める.
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Research Products
(52 results)