2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H03627
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
栗崎 周平 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70708099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 貴之 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (50467057)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビッグデータ / 株式保有ネットワーク / 資本支配関係 / 国際政治経済 / パブリックディプロマシー / Twitter |
Outline of Annual Research Achievements |
株式保有ネットワークを分析する理論モデルのベースライン版(NPI)を拡張し一般化版(NPF)したモデルを用いて、ESG投資のダイナミクスを分析した。この論文を査読誌(PLOS One)に出版した。またこの論文は日本人工知能学会の全国大会優秀賞を受賞した。なおこの論文では、具体例として、日銀のETF購入に関して、ESG投資上のリスクの有無を検証し、その結果、日銀によるETF購入は、投資ファンドを通して、ESG投資の観点上問題のある企業(とくに地球環境保全に反して汚染する企業および日米両政府が国家安全保障に対する脅威をもたらす企業として認定される企業)に資金が流入する経路が存在することを同定した。なお、このNPIとそれをデータ解析に実装するアルゴリズムを知的財産権として申請したいたがそれが承認され権利化された。また、それを一般化したNPFの知的財産権の申請が受理され現在は審理中である。
もう一つ大きな研究プロジェクトとして、Twitter上での米中間のパブリックディプロマシーの動態を分析する論文を全米政治学会の年次大会で研究報告を行った。この論文は、2020年3月か ら10月末 までの中国及び米国の大使館によるツイートとそれらへのリツイートなどの行動解析を通したサイバー空間での外交攻勢の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この科研費研究課題としてビッグデータを国際政治研究に応用する方途を開拓する研究を進めてきた。数多くの試行錯誤を重ね、その中で2つのプロジェクトが研究成果の具現化の実現可能性、研究フィールドへのインパクト、そして社会実装の可能性の観点から有望であることを見出し、それらに選択と集中を重ねてきた。現在、それらの結果の公表に結実する具体的な工程と日程が見えてきた。その研究経過の一端をこれまでに学会発表や査読誌での発表に繋げてきた。それらの一部は日本人工知能学会で学会賞を受賞し、ハーバード大学で講演し、中核となる理論モデルを実際のデータ解析に実装するためのアルゴリズムに関して知的財産権(国内特許)を取得ないし申請するに至り、ドイツそして米国の大学に所属する研究者から共同研究の申し出を受け、また複数の起業家や投資家からコアアルゴリズムを用いた株式ネットワーク構造の解析による事業会社、投資会社、金融会社、政府機関の意思決定支援を目的とした社会実装のための事業化の申し出を受けるようになっている。まだ学術の成果として大きな論文にまとめる作業が残っていることから「当初の予定以上の進展」ではなく「概ね順調に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度にあたること、これまでに想定を超えた成果を挙げていることから、これまでの成果を具体にまとめあげる作業とともに 、来年度以降の継続性のために研究戦略の見通しを立てることを大きな目標とする。そのためのステップとして、6つの論文として成果をまとめることを目指す(1)NPIデータ公開の論文(ここでは従来のFDIデータとの比較を提示)、(2) ESG投資が投資ネットワークのなかで間接的に投資 を行なっている企業のESGスコアの検証を行う論文、(3)現在投稿中論文の分析のアップデ ート、(4)日銀のETF購入などを具体例に取り上げたESG投資上のリスク推定の論文を日本語で刊行する。ここでは投資ファンドの軍需企業などへの資本流入を2020年4月と12月の時点での投資ネッ トワークの 中で同定した上で、日銀によるETF購入がこれらESG投資の観点から問題となる企業へ流出していないか検証する。(5)2020年3月か ら10月末 までの中国及び米国の大使館によるツイートとそれらへのリツイートなどの行動解析を通したサイバー空間での外交攻勢の解析を行 う論文、(6)上記Network Power Indexを拡張したNetwork Power Flowのモデルを完成しアルゴリズム実装するリサーチノートをデータ科学な いしネットワーク科学の専門誌で刊行する。(7)NPIとNPFのモデルを使った株式保有ネットワークを分析しShifting Hegemony論文のためのデータ解析を開始する。これら研究成果を学術論文 としてまとめると同時に、NPIやNPFについて提出している特許について今後の知財展開を考えると同時に、民間企業および官庁から依頼を受けているNPI・NPFを用いたリスク分析および戦略分析から具体的な政治学ないし政策学で重要な理論ないし実証課題を抽出し、今後の研究課題の 精査に役立てる。
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Research Products
(3 results)