2018 Fiscal Year Annual Research Report
Globalization and Labor Market in Japan and East Asia
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18H03637
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90265918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清田 耕造 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 教授 (10306863)
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 准教授 (20456304)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 経済のグローバル化 / 国内労働市場 / 日本 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究課題全体を統括する研究代表者(木村福成)のもと、空間的視点(担当:大久保敏弘)、労働者の視点(担当:清田耕造)、産業・企業の視点(担当:松浦寿幸)という三つの側面から、研究を進めている。初年度である平成30年度では、①分析用データベースの作成、②その作成過程で得られた付随的な研究成果の発信を行った。 ①については、日本、タイ、カンボジア、インドネシアを対象とし、公表データや企業・事業所レベルのデータ収集、整備を行った。具体的には、日本では『企業活動基本調査』や『工業統計調査』(経産省)から得られる企業・事業レベルの従業員データ、『国勢調査』(総務省)から得られる職種別雇用者データを整備した。タイでは『事業所企業統計』、カンボジアでは『経済センサス』、インドネシアでは『工業統計調査』を用いて、企業や事業所別・技能別・地域別などの雇用データを整備した。同時に、グローバリゼーションの影響を分析するために、各種貿易データベースを作成し、中国からの輸入浸透率などの変数を整備した。 一方、②ではデータ整備の過程において、いくつかの研究論文を作成した。例えば、完成品と部分品を分けた貿易データを用いて、Baldwin and Okubo (2019, J Jap. Int. Econ.)では、グローバリゼーションに伴う産業化・脱産業化の傾向は先進国と途上国間で当然異なるが、脱産業化の傾向が先進国内でも異なることが示された。また、Dobbelaere and Kiyota (2018, Labor Econ.)では、日本の企業レベルデータを用いて、製品市場や労働市場の不完全性が企業の国際活動に与える影響を分析した。同じく日本の企業レベルデータを用いたOkubo and Tomiura (2019, Rev. Int. Econ.)では、都市部から遠い地域に立地している企業ほど、輸出に際して高い生産性が求められていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に分析に必要なデータの収集をほぼ終えたため、分析用データベースを作成し始めている。その過程において、いくつかの付随的な研究論文を国際的な査読付学術誌に刊行することができ、成果が既に現れ始めている。そしてこうした研究成果は、政策担当者も参加する国際会議などでも報告され、既に国内外での成果普及も同時並行的に行っている。また、分析内容についても、各論文の共同研究者との研究打ち合わせを定期的に行うとともに、各種研究会、ワークショップを通じて、分析の方向性の精緻化が進んでいる。概ね、実際に分析を始めるための準備が整ったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目となる本年度は、初年度に収集したデータをもとに分析用データベースを完成させ、空間的視点、労働者の視点、産業・企業の視点という三つの側面から、本格的な実証分析を進めていく。空間的な視点では、日本やタイの製品(業種)レベルで集計された雇用、及び貿易データを用いて、中国からの輸入が雇用に与えた影響を分析する。また日本を対象に、各県における産業の多様性、特化の程度がこうした影響に与える効果も分析を行う。 労働者の視点では、日本の『国勢調査』(総務省)から得られる職種別雇用者データを用いて、中国からの輸入が職種別の労働需要に及ぼす影響について分析する。また、インドネシアの『工業統計調査』による分析では、対内直接投資の熟練・非熟練労働者の需要に対する影響について分析を行う。 産業・企業の視点では、日本の『企業活動基本調査』や『海外事業活動基本調査』(経産省)の個票データを用いて、海外における生産工場の有無など、企業の国際化の程度に応じた影響の違いを分析する。また、カンボジアの『経済センサス』の個票データを利用し、貿易相手国の関税低下が、フォーマル企業とインフォーマル企業の雇用にそれぞれどのような影響を及ぼしたかを分析する。 以上のように、本年度はこれらのテーマについて本格的な統計分析を進め、順次中間的な結果を論文としてまとめていく。そして、国内外で開催される各種学会への参加、ならびに主催する定例研究会(慶應国際経済学セミナー、Asian Economic Panelなど)での報告を通じて、国内外の研究者に広く意見を求め、分析の精緻化につなげていく。
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Remarks |
本プロジェクトにおける研究活動は、慶應義塾大学 国際経済学研究センターを拠点として行われており、当該センターのウェブサイトにて研究成果を紹介している。
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Research Products
(33 results)