2018 Fiscal Year Annual Research Report
事前の防災対策と事後の救済・復興事業に関する時間整合性条件の検証
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18H03639
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中川 雅之 日本大学, 経済学部, 教授 (70324853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 福壽 日本大学, 経済学部, 教授 (10166655)
瀬下 博之 専修大学, 商学部, 教授 (20265937)
日引 聡 東北大学, 経済学研究科, 教授 (30218739)
浅田 義久 日本大学, 経済学部, 教授 (70299874)
宅間 文夫 明海大学, 不動産学部, 准教授 (80337493)
有村 俊秀 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70327865)
行武 憲史 日本大学, 経済学部, 准教授 (80804690)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時間非整合性 / 事前対策 / 事後対策 / 公共施設の再配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は事前、事後の災害対策の整合性を研究するものであるが、今年度の主な実績を以下に記載する。 Seshimo・Yamazaki(2018)では、以下のような議論を展開している。危険な地域に住む人々は自己責任であると考えて、政府は災害が起こった場合にそうした人々を救済しないというルールは重要であるが、こうしたルールは事後的には必ずしも守られないことが多い。政府に対する批判が生じるために、危険な地域に住む人々が災害に遭った場合にも、救済せざるを得ない。これが時間的な非整合性をもたらすことになる。 こうした非整合性に直面した時に、将来の救済を前提にすると、人々の行動は危険回避度が低下し、より多くの人々が危険な地域に住むようになる。そのため、こうした人々の被害を少なくするためには、事前の防災対策がより重要になってくる。その結果、事前の対策、防災投資の水準が過大になることが示される。つまり、将来の事後的な救済事業が予想されると、事前の対策も過大になってしまうという悪循環が理論的に示される。 こうした問題を回避し、政府の防災・復興投資を最適なものに近づけるためには、できるだけ、政府の復興事業へのコミットを少なくする必要がある。その代わりに災害保険への強制加入を促進することが望ましいという理論的な結論が得られる。 代表者中川の一連の業績においては、今後の少子高齢化や人口減少を背景とした持続可能な地方財政を構築するためには、公共施設の再配置とそれに伴う人口移動が必要であることが論じられている。この議論は、Seshimo・Yamazaki(2018)の上記の議論を受ける形で、過大な事前対策によって広がりすぎた居住地を再編するという観点からも議論が展開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、二つのユニットにおける分析の基礎固めを行う予定であった。まず「時間非整合性検証」ユニットでは、災害の危険回避行動についての時間非整合的な状況を記述する理論的な検討を行うことを予定していたが、研究実績において記述したように事前対策が過大になる可能性を示唆する成果を得ることができた。 また、「政治(選挙)と災害」ユニットにおいては、政治的な観点から、自治体を含めた政府の行動のゆがみを計量的に明らかにするためのデータベースの構築を図った。具体的には、Healy and Malhorta(2009)が災害を自然実験としてとらえ、大統領選の行われた1988年から2004年までのデータを使って、投票者の行動が災害対策にどのような影響を及ぼすか、大統領の所属する党が、災害に対してどのような政治的支出をするかについて計量的に分析している。その結果、選挙民は実際の災害が起こった時の政府の救済支出・復興支出を高く評価するのに対して、事前の防災投資について十分に評価しないという結論が得られている。同趣旨の分析を日本においても実施するためのデータベースの構築を2018年度において進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては、二つのユニットによる分析を、昨年度構築された理論的枠組みの精緻化と、整備されたデータベースに基づく実証分析の着手を行う。具体的には「時間非整合性ユニット」においては、Seshimo and Yamazaki(2017)、Seshimo and Yamazaki(2018)のさらなる精緻化を行うとともに、その実証分析に着手する。 さらに「政治(選挙)と災害」ユニットでも理論的、実証的分析を本格化させる。具体的にはHealy and Malhorta(2009)の分析を日本においても展開するために整備したデータベースを基に実証分析に着手する。さらに、これらの実証分析の基となる理論モデルの構築を図ることとする。
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Research Products
(13 results)