2021 Fiscal Year Annual Research Report
mechanisms and regulation of socioeconomic disparities in health among the elderly
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18H03651
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
杉澤 秀博 桜美林大学, 大学院 国際学術研究科, 教授 (60201571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (40405999)
杉原 陽子 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (80311405)
柳沢 志津子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (10350927)
新名 正弥 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (70312288)
北島 洋美 日本体育大学, 体育学部, 教授 (00614439)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会階層 / ライフコース / 高齢者 / 透析患者 / 媒介要因 / 保健行動 / 健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.社会階層による健康格差のメカニズムとその制御要因の解明:疾患罹患前の社会階層が罹患後の健康の予後に影響するか否かに着目した研究はほとんどない。本研究では、透析患者を対象に、透析に入る前のライフコース上の社会階層が透析導入後の健康維持に影響があるか否かを分析した。分析に際しては、透析導入前の経済的困窮の4パタン(経路モデル、潜在効果モデル、移動モデル、蓄積モデル)を用いて、いずれのモデルが透析患者の透析導入後の健康に影響するか否かを分析した。分析の結果、経路モデルが透析導入前の社会階層が透析導入後の健康への影響を最もよく説明することが明らかとなった。 2.健康問題発生後の医療福祉ニーズへの対応の社会階層格差とその制御要因を解明:①要介護者の介護支援体制は女性、低所得、単身世帯において脆弱であることが明らかにされている。本研究では、要介護透析患者においても同じように女性、低所得、単身世帯で介護支援体制が脆弱であるのか、さらにその支援体制の強化に介護保険制度が貢献しているか否かを分析した。分析の結果、要介護透析患者においても同じように女性、低所得、単身世帯で介護支援体制が脆弱であること、さらにその支援体制の強化に介護保険制度が貢献していないことが明らかとなった。 ②透析患者が疾患の管理をきちんとするには、主治医である透析医が患者の疾患管理の状況をきちんと理解することが必要である。しかし、患者の疾患管理の状況を主治医が正確に理解していないことが問題視されており、その不一致の理由の一つに、医師が患者をネガティブに評価する患者の特性、たとえば低階層が影響していると指摘されている。本研究では、学歴が低い患者に対して患者の自己評価よりも医師の評価の方が疾患管理のレベルが低く評価されており、その理由には低階層に対する医師のネガティブなステレオタイプが影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 社会階層による健康格差のメカニズムとその制御要因の解明:新型コロナの感染拡大の影響により、2016年度に実施した調査の回答者に対する縦断調査の実施を2年延期した。縦断調査は2021年度に終了した。 2) 社会階層移動の健康への影響:パネル調査による解明: 新型コロナの感染拡大の影響により、社会階層移動の健康への影響に関する縦断調査の実施を1年延期した。縦断調査は2021年度に終了した。 3) 介護サービスの調整における経済的問題の影響:ケアマネジャーが護サービスの調整を行う際に困難と感じるケースが、担当する地域の高齢者の社会経済的な階層の違いによって異なるか否かを明らかにするため、高齢者の社会経済的な水準が異なる都内の区の居宅介護支援事業所のケアマネジャー を対象に郵送調査を実施した。加えて、サービス調整に経済的な問題がどのように関係するかを明らかにするためにケアマネジャーに対する質的調査を実施する予定であった。しかし、2019年と2020年に実施する予定であった調査が新型コロナの蔓延によって繰り越され、今年度に実施した。そのため、質的調査は時間的な調整が困難で予定通りにはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 社会階層による健康格差のメカニズムとその制御要因の解明:縦断調査のデータのクリーニングを速やかに終了し、社会階層⇒社会心理的要因⇒健康・保健行動の因果メカニズムおよび健康格差の制御要因を解明する。 2) 社会階層移動の健康への影響:パネル調査による解明:縦断調査のデータのクリーニングを速やかに終了し、分析を開始する。 3) 介護サービスの調整における経済的問題の影響:高齢者の社会経済的な水準が異なる都内区の居宅介護支援事業所のケアマネジャー を対象とした量的調査のデータを速やかに解析し、地域住民の社会階層の違いがケアマネジャーのサービス調整にどのような影響があるかを明らかにする。加えて、この量的調査に基づき、利用者の社会階層によるケアマネジメントへの影響とそれへの対処のプロセスを明らかにするための質的調査の対象者選定と質的調査の実施を速やかに行い、そのデータの解析を行う。
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