2018 Fiscal Year Annual Research Report
薬理遺伝学的手法を用いた前頭前野ー頭頂葉経路と前頭前野ー線条体経路の機能分離
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18H03662
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊水 健史 麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 前頭前野 / 大脳基底核線条体 / 行動の抑制的制御 / 報酬予測 / DREADD |
Outline of Annual Research Achievements |
1頭のニホンザルに非対称性報酬の遅延反応課題を学習させ、その前頭前野外側部にCre依存的にDREADDを発現するAAVウイルスベクターを注入し、その投射先である大脳基底核線条体に逆行性にCreを運ぶレンチウイルスベクターを注入した。これにより、前頭前野外側部ニューロンの中でも、線条体に投射するニューロンに選択的に抑制性DREADDが発現することが期待されるが、非対称性遅延反応課題遂行中のサルにCNOを注射して、行動の変化を観察した。その結果、課題の正答率、特に小報酬試行での正答率が有意に低下した。また、その時の眼球運動の潜時が早まり、スピードが上がり、正確性が低下した。前頭前野外側部と線条体から、単一ニューロン活動と局所場電位を同時記録したが、CNO注入後、単一ニューロン活動は全般的に低下した。局所場電位については、2つの部位の活動の位相差の一貫性(coherence)を計算することにより、2つの部位間の情報伝達量を調べたが、20-30Hzの周波数帯で、特に小報酬試行の時に情報伝達量が低下していることがわかった。前頭前野と線条体との結合は、前頭前野から線条体への位置方向性の結合であるため、前頭前野外側部の線条体投射ニューロンの活動をDREADDで抑制することにより、前頭前野から線条体への情報伝達が低下することにより、正確に眼球を動かす制御が弱まった結果ではないかと考えられる。なお、このとき、作業記憶に対する問題は観察できなかった。この結果は、前頭前野から線条体への投射が、スピードと正確性のトレードオフに見られるような、反応の正確性を高める眼球運動の制御に関わっていることを示唆しているように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DREADDの作用がサルの課題遂行に影響を与えるかについて、世界的にも成功例が少ないので、実験に不安があったが、説明可能な一貫した形の行動変化を観察することができた。また、ニューロン活動への影響も、行動の変化と整合的な結果が得られたことは、予想以上のものである。現在2頭目のサルの実験を進めており、今年度中には論文の執筆にとりかかりたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前頭前野から線条体への投射を遮断する実験について、2頭目のサルで行う。前頭前野-線条体系は、前頭前野損傷で見られる作業記憶機能障害とは関係していないように思われるが、今年度から、同様の課題遂行中のサルの前頭前野-頭頂葉の結合をDREADDで選択的抑制する実験を開始する。もし、この結合の抑制で作業記機能が低下すれば、画期的な発見になると予想される。
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