2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H03669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 俊行 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (80201490)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 解析学 / 幾何学 / 表現論 / リー群 / 分岐則 / 不連続群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要な結果の概要を述べる。 (1)(共形幾何における対称性破れ作用素の構成と分類理論) リーマン多様体M上の共形変換群をG=Conf(M)と表わす。一般に、Mの微分形式全体の空間には、3個のパラメータ(複素パラメータ、符号、微分形式の次数)をもつ群Gの表現の族が定義される。リーマン多様体Mとその超曲面Nを与えたとき、Mの共形変換でNを保つものは、部分多様体Nにも共形的に作用する。このような変換の全体Conf(M;N)は 共形変換群 G の部分群をなす。M上の微分形式の空間からN上の微分形式の空間への対称性破れ作用素とは、Conf(M;N)不変な作用素である。この対称性破れ作用素がいつ存在し、それを明示的にどのように構成するかは、共形幾何の基本的な問題である。この基本問題をモデル空間(M,N)=(S^n, S^{n-1})に対して、表現論的手法を用いて完全に決定した。すなわち、対称性破れ作用素が存在するための3+3=6個のパラメータの必要十分条件を決定し、さらに、具体的にこの作用素を構成し、分類を完成させた。これらの結果は研究代表者がSpeh教授と300頁を越える長編の論文で論証し、査読の課程を経て出版した。 (2)(幾何的量子化) 無限次元表現の制限が離散的かつ無重複となる重要な例として、正則型の対称対に付随する分岐則(Hua-Kostant-Schmid-Kobayashi)に関して、幾何的量子化とシンプレクティック簡約化が可換であることを論証した(第8論文)。 (3)(対称性作用素の留数)対称性破れ作用素の核超関数の有理接続に関する留数を求めるための代数的手法を開発した(第1論文)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超曲面に対する微分形式間の対称性破れ作用素の構成と分類問題が、目標としていたモデル空間に関して完全に実行することができ、さらに、この長編の論文を含めて総計約500頁の論文を執筆し、査読後出版することができた。このため、次年度以降に予定していた研究をより挑戦的な形で進めることができている。 これは、夜に日を継いで体力の限界までハードワークを続けただけではなく、研究代表者が提唱している新しい研究プログラムが幸運にも実り豊かな数学につながってきたことと、研究代表者のプログラムに参画されている国内外のチームのメンバーと良い協力関係を築いていることが主因と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究代表者が主導している (1)Symmetry Breaking Operatorsの解析 (2)非リーマン局所対称空間上のスペクトル解析 のプロジェクトをフランス、アメリカの研究者等と協力して研究を進める。 特に(1)として、「対称性破れ作用素」およびその随伴作用素である「holographic 作用素」の構成問題に関する国際共同研究を行う。(2)の基盤作りとして、局所対称空間のうち隠れた対称性がある族に対して、スペクトル解析を表現の分岐則の関係から研究を進める。このために、4-5月はアメリカで、7月はドイツで短期共同研究を行い、9月はフランスで(2)に関しての共同研究を行う。また、アメリカ、イタリア、ブルガリア、フランス、日本等の重要な国際会議で、最新の成果を講演しする。 さらに、高木レクチャーを6月に京都で、12月に東京で主催し、1月にはworkshopを主催し、これに加えて8月には玉原で合宿を行い研究グループ全体のレベル向上を図る。これらの研究集会の参加者と先端研究の情報交換を行うとともに、新しい研究活動が遭遇することによってさらに飛躍が生まれる可能性が見込める場を設ける。(1)および(2)はいずれも国際共同研究であり、年度の前半は特にそれを加速させるための出張を行い直接研究連絡を行う。本研究の発展や転機が生じた場合は必要と緊急度に応じて研究組織のメンバーが出張して直接研究連絡を行うか、あるいはその研究協力者を招聘する。
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