2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H03669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 俊行 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (80201490)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 解析学 / 幾何学 / リー群 / 分岐則 / 不連続群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要な結果の概要を述べる。 (1)(隠れた対称性をもつ球等質空間の微分作用素環の構造定理)コンパクト群 L の球等質空間Xに単純リー群Gがovergroupとして作用しているとき、(a) X 上の G 不変微分作用素のなす環, (b) Lのリー代数の普遍包絡環の中心が誘導するXの微分作用素環, (c) 幾何XのあるL同変なファイブレーションから得られる微分作用素環の3つの環の任意の2つが残りの1つの環を生成することを証明し、「transfer写像」の概念を導入し、環の生成元の関係式を完全に決定し、長編の論文(第二論文)として出版した。この主定理の証明にはコンパクト群の有限次元表現を部分群に制限したときの分岐則を証明の道具として用いたが、逆に、この論文の主結果は、非コンパクトな群の(幾何的に特徴付けられる)ある系列の無限次元表現の分岐則の理論、および、非リーマン局所対称空間の大域解析の今後の研究の基盤として用いられることが期待される。 (2)当該研究者およびその共同研究者によって開発してきた分岐則の理論を中心に、球多様体上の解析や不連続群の理論の関係などの重要な結果の解説とその哲学について、日本数学会の70周年特別記念企画での招待講演の講義録などをもとに、概説研究論文として書き下ろし、出版した(第一論文)。 (3) 正則表現が緩増加ユニタリ表現となるような等質空間の幾何学(緩増加等質空間)を力学系のアイディアと組合わせ論を用いて深化させた(現状報告は第二論文). (4) 微分形式における対称性破れ作用素に関しての研究を引き続き行い、査読付きの論文(第四論文)として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無限次元表現の分岐則および不定値計量をもつ局所対称空間の大域解析の基盤とすることを念頭に、隠れた対称性をもつ空間の微分作用素の構造定理の問題を定式化し、自然な形で現れる3つの微分作用素環の構造定理を精緻な形で表わすことができ、長編の論文を執筆し、出版することができた。このため、次年度以降に予定していた研究をより挑戦的な形で進めることができると考えられる。 これは、夜に日を継いで体力の限界までハードワークを続けただけではなく、研究代表者が提唱している新しい研究プログラムが幸運にも実り豊かな数学につながってきたことと、研究代表者のプログラムに参画されている国内外のチームのメンバーと良い協力関係を築いていることが主因と考える。 なお、本研究は2020年2月半ばまでは当初の計画以上に進んでいたが、2020年2月半ばから3月にCovid-19のため、最先端の研究をテーマとしたwinter schoolの開催などいくつかの計画を予定の日時に実現することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究代表者が主導している (1)Symmetry Breaking Operatorsの解析 (2)非リーマン局所対称空間上のスペクトル解析 (3) 緩増加等質空間の概念の深化 のプロジェクトをフランス、アメリカの研究者等と協力して研究を進める。特に(1)として、「対称性破れ作用素」およびその随伴作用素である「holographic 作用素」の構成問題に関する国際共同研究を行う。(2)の基盤作りとして、standard な局所対称空間(不連続群のZariski閉包が固有に作用する)に焦点を当てて研究を進める。Covid-19のため予測できないことが多いが、新しい状況下で、今しかできないことを率先して行い、また研究の進展によって変化が生じた場合に、時期を逸しないように研究計画を柔軟に変更する。一方、国際連携を保持・強化し、先端研究の情報交換を行い、新しい研究活動が遭遇することによってさらに飛躍が生まれる可能性が見込める場を積極的に作る。
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