2018 Fiscal Year Annual Research Report
Multifaceted studies on dynamical problems in the calculus of variations using geometric measure theory
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18H03670
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
利根川 吉廣 東京工業大学, 理学院, 教授 (80296748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高坂 良史 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (00360967)
石井 克幸 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40232227)
高棹 圭介 京都大学, 理学研究科, 特定准教授 (50734472)
可香谷 隆 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (60814431)
小野寺 有紹 東京工業大学, 理学院, 准教授 (70614999)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Mean curvature flow / Calculus of variations / Geometric measure theory / Minimal surface / Geometric analysis |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究成果として次の2つが挙げられる. 1)Salvatore Stuvard (テキサス大学オースチン校)との共同研究で,境界固定条件の下で一般化された平均曲率流であるBrakke流の時間大域解の存在定理を証明した.この結果は2017年にLami Kimとの共同研究で証明した結果の,境界がある場合への拡張であるが,境界が動かないように解を構成するための新規の工夫が必要なものとなっている.時間が経つにつれて位相的な変化を伴いながら曲面積が減少する解となっており,時間無限大において一般化された意味での極小曲面に収束する.主結果はBrakke流の時間大域存在定理であるが,その系として古典的なプラトー問題に対する時間発展的な解法を同時に与えた点が画期的である.従来,プラトー問題は曲面積の最小化を考えることによって解かれていたが,この手法では原理的に最小曲面積ではないような極小曲面が得られる可能性がある.また境界条件は従来考えられていたものより格段に一般的である.論文は査読中である. 2)Lami Kim (延世大学)との共同研究で,2017年に証明したBrakke流について,その次元が1次元の場合,ほとんど全ての時刻において,解は局所的に2回弱微分可能かつ2回弱微分が2乗可積分である有限個の曲線の和集合として表せることを証明した.またこれら曲線が交わることができる角度は0,60,120度のみであることも証明した.これら結果により,2017年の研究で示された解は古典的な3重点のみを持つネットワーク集合の自然な測度論的閉包となっていることが示された.位相的変化が起こり得る時間大域的な枠組みでこのような正則性を持つ曲率流の存在が証明されたのは初めてである.論文は査読中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調としたのは,当初は予定していなかった境界固定条件付きのBrakke流の存在(研究成果の1)が証明できたこと,また当初から計画していた1次元の場合のBrakke流の正則性定理(研究成果の2)が順調に仕上がったことが主とした理由である.特に研究成果の2においては1次元の結果のみではなく,一般次元の場合でもある意味で小さな長さスケールでは(2017年に構成した)Brakke流が面積最小曲面に測度論的に近い,というような意味合いの結果を得ている.これは時間発展問題と局所的な面積最小化との関係の探索という当該研究課題の主目的に具体的に迫る結果とも言え,その点でもおおむね順調といえる.一方でこれら研究以外でやり残した点,例えば一般次元における3重点などの特異点近傍における正則性理論の構成などがあるため,当初の計画以上とは判断できない.
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の1を用いて,極小曲面の特異点に関する知見を間接的に得ることをStuvardと開始している.背景として,幾何学的測度論の枠組みで現在最も単純か つ困難な極小曲面に関しての問題は,密度が2かそれ以上の特異点近傍の正則性の解析である.この特異点に対して,ある弱い仮定の下ではBrakke流を用いて特異点解消が行える,ということを現在証明しつつあり,その論文を2020年度中に完成したい.また研究成果の2の拡張として,2017年に構成したBrakke流が,1次元の場合には時空の意味でほとんど全ての点で滑らかであることを証明することを目指す.3重点周りの正則性定理についても本格的に着手する.新型コロナウィルスの影響で海外研究集会参加を通じた研究成果の発表および情報交換が今年度以降は困難になることが予想されるが,解決すべき課題は既に多くあり,それら解決に向けて研究に鋭意集中する.
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