2019 Fiscal Year Annual Research Report
Multifaceted studies on dynamical problems in the calculus of variations using geometric measure theory
Project/Area Number |
18H03670
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
利根川 吉廣 東京工業大学, 理学院, 教授 (80296748)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高坂 良史 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (00360967)
石井 克幸 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40232227)
高棹 圭介 京都大学, 理学研究科, 特定准教授 (50734472)
可香谷 隆 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (60814431)
小野寺 有紹 東京工業大学, 理学院, 准教授 (70614999)
三浦 達哉 東京工業大学, 理学院, 助教 (40838744)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Mean curvature flow / Calculus of variations / Geometric measure theory / Minimal surface / Geometric analysis |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究成果として以下を挙げる. (1) 2019年度に行ったSalvatore Stuvard(テキサス大学オースチン校)との共同研究(2021年に出版済)の研究では,境界を固定した一般化された意味での平均曲率流であるブラッケ流の存在定理を示したが,その結果の応用として,特異点を持つ一般化された極小曲面を初期値としたブラッケ流の存在定理について研究を行った.より正確には,極小曲面は平均曲率が0であるためにそれ自体が動かないブラッケ流であるのだが,十分平坦な特異点がある場合,それを初期値として連続的に動き出すブラッケ流が存在することを証明した.どれくらい平坦であればよいかという特徴付けは,一般化された極小曲面の正則性定理との兼ね合いを考える上で興味深い結果となっている.この結果は一般化された極小曲面に対しての動的な意味での安定性の概念を初めて提示するものとなっている点,意義ある結果となっている.論文は査読中である. (2)2017年に出版されたLami Kim(延世大学)との共同研究を異なる観点からStuvardと見直し,以下の研究結果を得た.有限な測度をもつ余次元1の閉修正可能集合を初期値として任意に与えた時,2017年の結果では時間発展するブラッケ流の時間大域解の存在を証明したが,構成方法を修正することにより,その解は同時に有界変動関数の意味での平均曲率流になっていることを証明した.この結果,ブラッケ流が囲む領域が一般化された意味での速度場を持ち,領域のルベーグ測度の変化率がその速度場の積分値で正確に与えられる.この速度場はブラッケ流が単位密度流である場合にはブラッケ流の平均曲率ベクトルと領域の外向き単位法ベクトルの内積で与えられることも示した.論文は準備中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績(1)で述べた結果については当初予想していなかったシャープな平坦さの条件を見つけることができた点,幾何学的測度論の特に正則性理論の専門家には高い関心を持たれている.研究対象となっている特異点は測度論的接空間が多重度を持つものであり,このような特異点に対しては長年研究手法について何も見通しが立っていない状況である.その中,動的な観点からの特異点解析の可能性を示すことができたというのは当初の計画以上の結果であると言える.研究実績(2)では2017年の研究結果を本質的に改良することができ,これも当初予想していなかった研究結果となっている.これら研究結果はさらに当初予想していなかった興味深い研究トピックを自然に誘導している.
|
Strategy for Future Research Activity |
十分平坦な特異点をもつ極小曲面であれば,動的な意味で不安定であることが分かったが,面積最小性を持たない余次元1の特異点集合を持つ極小曲面であればやはり動的に不安定であることが予想される.これについて予備的な計算を行ったが,この問題について引き続き研究を進める.また研究実績(2)の研究を行う過程で,一般化された極小曲面およびブラッケ流の多重度が2以上の点における2次近似問題について興味深いヒントを得た.一般にこれら対象物は測度論的な弱い意味で,可算個の2回連続微分可能多様体の集合和の中に含まれることが知られているのだが,可能性として一般化された極小曲面はより強い意味で含まれるかあるいはある種の2次近似評価ができるのではないかと予想される.研究業績(2)の論文を仕上げたのちにこの問題に取り組みたい.
|