2019 Fiscal Year Annual Research Report
New direction of research on baryon-baryon interactions by hyperon-proton scattering experiments
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18H03693
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三輪 浩司 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50443982)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストレンジネス核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではシグマ陽子散乱実験およびラムダ陽子散乱実験を行い微分散乱断面積を導出することによって、ΣNおよびΛN相互作用の解明することが大きな目的である。シグマ陽子散乱実験(J-PARC E40)を2019年2月からΣ-pのチャンネルのデータ収集を開始し、2019年4月からΣ+pのチャンネルのデータ収集も開始したが、J-PARC加速器のトラブルによってΣ+pチャンネルの半分程度のデータ収集で一時中断することとなった。収集したデータ解析を行い、Σ-pチャンネルの解析ではΣ-p弾性散乱の事象を約5,000イベント同定し、またΣ-p→Λn反応の事象を約2,500イベント同定することに成功した。これは過去に実施された実験の約100倍もの事象同定数になる。これらの散乱事象数を断面積にするには、反跳陽子を同定するCATCH検出器の検出効率を正確に求める必要があるが、検出効率を決定するのに必要な陽子陽子散乱の校正データのエネルギー依存性が不十分であることが分かった。そのため、次のビームタイムで必要な校正データを収集するために、必要な陽子ビームのエネルギーをシミュレーションから見積もった。中断されたビームタイムは2020年の2月に再開する予定であったが、最終的には2020年の6月に再開されることとなった。このビームタイムで、上述した陽子陽子散乱の校正データの収集を行い、その後、Σ+pチャンネルのデータ収集を再開することで、予定していたデータ収集を無事に終了することが出来た。Σ+p弾性散乱事象についても5,000イベントを同定することが出来ており、これまでの断面積測定精度を格段に向上させることが出来るデータの収集に成功することが出来た。現在、微分断面積の導出に向けて解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シグマ陽子散乱実験は、シグマの寿命が短く散乱する前にそのほとんどの粒子が崩壊してしまうため、散乱事象を同定することが非常に難しい実験であった。これを解決するために、大強度のπビームを使って、大量にシグマを生成して、多くの散乱事象を同定することを目指したのがJ-PARCで行った本実験(J-PARC E40)である。大強度のπビームを使用することに起因して実験的な困難な点があったが、そのような中でも無事に実験を遂行し、予定した数の散乱事象を同定することが出来たことで、従来の微分断面積測定の精度を格段に向上させることが出来ると期待できる。また、加速器トラブルが原因であったが、ビームタイムの期間が2度に分かれることによって、初めに取ったデータ解析を十分に進めることが出来、断面積導出に必要な校正データが十分かどうかを調べることが出来たのは、研究全体で考えた時には幸いであった。
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Strategy for Future Research Activity |
J-PARC E40実験で収集したΣ-pチャンネルおよびΣ+pチャンネルのデータ解析を進める。Σp散乱イベント同定に必要なカット条件を最適化し、またCATCH検出器の検出効率を陽子陽子校正データを用いて行い、出来るだけ早く微分断面積を導出し、投稿論文としてまとめる予定である。また理論研究者と協力し、2体のハイペロン核子相互作用の構築に対し、我々のデータがどの程度の制限をかけることが出来るのかを議論する。 また、次のラムダ陽子散乱実験については、当初はγ線ビームを用いた実験を考えていたが、E40実験のバイプロダクトのデータとして、CATCH検出器を用いて、π-p→K0Λ反応を用いてラムダを同定することが出来ることが分かった。γ線を用いた反応に比べ、π-を用いた反応の方が100倍程度生成断面積が大きいため、予定を変更しJ-PARCでこの反応を用いたラムダ陽子散乱実験を行うことを計画している。そのためのシミュレーションを進め、J-PARCに実験プロポーザルとして提出する予定である。
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