2019 Fiscal Year Annual Research Report
多入射中性子反射率法の開発とそれによる全固体型リチウムイオン電池のオペランド計測
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18H03709
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
山田 悟史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (90425603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細畠 拓也 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (00733411)
日野 正裕 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (70314292)
菅野 了次 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (90135426)
藤原 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90552175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中性子反射率法 / 全固体電池 / 集光ミラー / オペランド計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究におけるキーデバイスとなる金属製中性子集光ミラーの実用化に成功した。ミラーのサイズは幅60mm、長さ550mmと非常に大面積であるにも関わらず、ミラーの反射率に影響する表面粗さが面全体にわたって0.1nm(RMS)、集光サイズに影響する傾き誤差が20uradと非常に小さく、その結果臨界波長で80%の反射率、半値全幅で0.13mm、全値全幅で0.3mmを達成した。このミラーは実際に装置にインストールされており、最大で2倍の強度ゲインがあることを確認している。このミラーは本研究で実現を目指す多入射反射率法で用いるものとは焦点間距離等のパラメーターが異なるが、その作成法を確立するという観点から重要なマイルストーンであると言える。 また、多入射反射率法を実現するための光学的なデザインについて詳細設計を行い、収差が低減できる可能性を見いだした。ここで検討した収差は可視光のレンズでも生じるコマ収差に加えて、中性子特有の色収差である「重力収差」である。中性子は質量を有しているため飛行時間に応じて重力の影響を受け、落下によりミラーに当たる位置や入射角が速度(=波長)に依存する。この影響について、設計当初はミリ秒オーダーの短時間では問題にならないと考えていたが、重力を考慮した光線追跡法により定量的な評価を行った結果、利用を予定している最も遅い中性子(約200m/s)を用いた場合、重力収差によって0.1mm以上広がることが明らかとなった。これは現在目指している0.1mm集光に対して致命的な広がりであるが、ミラーにある工夫を加えることによりこれを半減させられることを明らかにした。まだ論文化していないため詳細については述べられないが、こちらについても多入射反射率法を実用化する上で重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では2020年度に多入射反射率法の実現に向けた光学系のインストールを行う予定であったが、コロナ禍の影響により加工等が遅延し、実現できなかった。その後、遅延に関するリカバリーを行い、2021年度にインストールを実施する目途が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年夏に多入射反射率法の実現に向けた光学系のインストールを行い、秋以降に光学調整を行う。2021年4月の時点で一部の機器はまだ完成に至っていないが、遅くとも秋には全ての機器が揃う予定である。 調整に際しては前例の無い光学系であるためある程度の困難が予測されるが、余裕を見ても2021年冬には実験が可能になる見込みである。装置の完成後は本研究の最終目標である全固体電池へ適用し、電極界面におけるリチウムの分布が充放電に伴い変化する様子を観察する。 これらの結果は随時論文により発表すると共に、webページ等を介した発信を行い、社会への還元を行う。
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Research Products
(6 results)