2018 Fiscal Year Annual Research Report
How is the rapid neutron capture process terminated ? -Pioneering research with delayed fission spectroscopies-
Project/Area Number |
18H03711
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
宮武 宇也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50190799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 賀一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30391733)
SCHURY P.H 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (30462724)
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50353363)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 核分裂障壁測定 / 早い中性子捕獲過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新たに開発する遅発核分裂測定器の中心となる検出器として想定しているGAGGシンチレータに関する資料の収集と、得られた物性値などをもとに検出過程のシミュレーションを行い、最適な形状、および読み出し系の検討を進めた。GAGGの放射線に対する発光効率は他の無機シンチレータ素材より優れているが、同時にシンチ光の減衰長が短いという欠点のため、素材を厚くして検出効率をあげると、得られるエネルギー情報に広がりが生まれる結果となる。そこで、シンチレータの厚さ方向を変化させて、エネルギー分解能をFigure-of-meritとして調べた結果、400 keV程度までの脱励起γ線検出の条件であれば、最適な厚さが30mmになることを突き止めた。この結果を元に、50mmx50mmx30mmのシンチレータ結晶を製作した。 同時に、GAGG読み出しに関しては、真空中でも操作でき、高効率、高分解能なGAGGの性能を十分に活かせるMPPC+前置増幅器の組み合わせにあると考え、製品開発を行っている業者と最終仕様を詰めることができた。他方、GAGGやストリップ型の多チャンネルSi検出器からのデータを収集するシステムとして、波形のデジタル化により、多チャンネルの高速の読み出しが可能となるシステムの検討を行った。当初は、カナダTRIUMF研究所で開発されたTIGRESS systemの購入を想定していたが、開発者との検討の結果、新たな改良を加えたGRIFFIN systemの回路が優れているという結論にいたった。この回路は2018年度に製作を完了できなかったため、購入は来年度へ持ち越すこととなった。 他方多重反射型飛行時間測定式質量分析器(MRTOF)の開発設置は順調に進み、ローカルイオン源からの安定同位元素ビームによる性能試験を開始できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度購入を予定していたデータ収集系の回路については、先方(カナダのTRIUMF研究所)との検討過程で、TIGRESSから、GRIFFINへのsystem乗り換えの決定を行った。しかしその決定の時期が遅く、実際に購入についての相談を開始した時点で、すでに他国研究機関からの製作スケジュールが組み込まれていることが明らかとなった。それでも製作スピードを上げて納入時期を早める努力はしていただいたが、購入手続きを終わらせることができなかった。 同様な発注上の遅れは、MPPC+前置増幅器一体型の読み出しモジュールでも発生した。すなわち発注をけめた時点で、すでに業者側が受けている他の注文数が多いため、年度内納入を実現できなかった。これらの要因によって、GAGGシンチレータにおけるベータ線のような荷電粒子に対する応答測定などが実施できなかった。 他方で、性能試験を開始できたMRTOFについては、開発スケジュール通りの進展が見られている。
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Strategy for Future Research Activity |
購入および納入が遅れたMPPC+前置増幅器一体型読み出しモジュールや、GRIFFIN systemのデータ収集系回路の取得を急ぎたい。これらが揃った段階で、GAGGの性能試験を行い、結果をまとめる、とともに、核分裂片測定器の最終デザインを決定する。ベータ線などの運動エネルギーを持つ荷電粒子に対するGAGGの発光効率測定は重要なデータとなるので、結果が得られた時点で査読雑誌への投稿を行いたい。装置デザインでは、従来のKISS崩壊分光測定装置上流に測定器を設置できるよう、真空層の改良などを行うことになる。 MRTOFの方は、KISSからのレーザーイオン化による安定同位元素ビームを使った最終性能試験を進める。MRTOFに組み込まれているヘリウムガスセルは、低エネルギーのKISSビームを効率よくヘリウムガス中に輸送・停止させる役目を持っており、初期の目標通り、高い捕獲効率でMRTOF本体に1化イオンを輸送できるかが、もっとも重要な開発点である。十分な結果が得られれば、理研RRCサイクロトロンからのXeビームとPr標的との多核子移行反応で生成されて放射性同位元素の質量測定を、予定より一足早く達成できるであろう。
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Research Products
(17 results)