2020 Fiscal Year Annual Research Report
大気海洋系内の熱フローの理解に立脚した地球温暖化の加速・減速の要因解明
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18H03726
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷本 陽一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (00291568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 裕之 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10435844)
細田 滋毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), グループリーダー (60399582)
時長 宏樹 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (80421890)
野中 正見 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), グループリーダー (90358771)
植原 量行 東海大学, 海洋学部, 教授 (90371939)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 海洋熱吸収 / 地球温暖化の加速・減速 / 大気海洋相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋熱吸収に海洋中規模渦が果たす役割に焦点を当てた研究を行った。昨年度終盤に黒潮続流南方海域の冷水渦領域に投入した3基の海洋プロファイリングフロート(以下、フロート)の監視・制御を本格化させ、2020年6月まで1つの冷水渦に対して3周分の渦周回観測を行った。フロートが取得したデータに対して塩分スパイク除去などの品質管理を施した後に解析した結果、2019年3月から同年4月まで混合層が深まるとともに海洋亜表層の水温が上昇したことが示された。この水温上昇は、季節躍層が浅くなり大気と海洋の熱交換が遮断される2020年6月まで継続しており、これは、冷水渦領域における海洋熱吸収の可能性を示唆する。また、従来の水平解像度が粗い歴史的水温データには、冷水渦領域の亜表層水温の増加が検出されないことが示された。これは、水平解像度が粗い歴史的水温データには海洋熱吸収に関して”熱バイアス”が存在することを示唆する。 また、渦解像海洋大循環モデルの経年変動シミュレーション出力を解析した結果、北太平洋中央部の風変動が海洋Rossby波の励起を通じて、約4年後に黒潮続流周辺海域の冷水渦を含む海洋中規模渦の活動度に影響することを示唆する結果が得られた。これは、海洋熱吸収に関与することが示唆された黒潮続流南方の冷水渦の活動に関して予測可能性を与える結果である。 さらに、高解像度大気海洋結合モデル実験出力の解析から、黒潮続流域周辺海域において、大気と海洋の熱フロートに関係する海面熱フラックス偏差がアリューシャン低気圧の変化と関連している点が示された。これは、黒潮続流域における大気海洋の熱フローが海盆から全球規模の気候変動と関係していることを示唆する。くわえて、精度の高い海面熱フラックスデータの作成にむけて、人工衛星観測に基づく全球海面熱フラックス変動の不確定性に関する研究も実施し論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度終盤に投入した3基の海洋プロファイリングフロート(以下、フロート)の運用を本格化させ、2020年6月まで黒潮続流南方海域に存在する1つの冷水渦に対して3周分の渦周回観測を成功させた。冷水渦に対する連続した渦周回観測を3回実施した例は確認する限り世界初となる。この渦周回観測データの品質管理を行い、解析用データセットを作成後に本解析を行った。本解析によって、冷水渦が海洋熱吸収に関与することを示唆する亜表層水温の増加が見られることを示した。これは、本研究の作業仮説を支持する結果である。また、水平解像度が粗い従来の歴史的水温データには、冷水渦領域における亜表層水温の増加が見られず、熱フローに関する”熱バイアス”が存在することが示された。この結果は、大気と海洋の過去の熱フローを評価する上で、歴史的水温データを使用する際には“熱バイアス”を適切に補正する必要性を示す。 上記の観測データ解析にくわえて、渦解像海洋大循環モデルや高解像度大気海洋結合モデルの実験出力の解析から、黒潮続流域周辺の冷水渦の活動度に関する予測可能性や、この海域の熱フローが10年規模の広域気候変動に与える影響についての知見が得られた。さらに、人工衛星観測データに基づく海面熱フラックスの精度に関して誌面発表を行った。 以上の進捗から、研究は概ね順調に遂行できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
冷水渦領域における海面から亜表層に至る鉛直一次元の枠組みにおいて熱フローを評価するために、渦周回観測期間における冷水渦海域の海面熱フラックスを解析して、観測された亜表層水温増加に関わる貯熱量変化と比較する。くわえて、冷水渦が全球の海洋熱吸収に与えるインパクトについて評価するために、歴史水温データから算出された全球海洋の亜表層の貯熱量変化と、本研究で観測した1つの冷水渦が関係する亜表層の貯熱量変化を比較する。 上記の観測データ解析にくわえて、渦解像海洋大循環モデル実験出力を用いて、海洋中規模渦の予測可能性について引き続き調査する。これまでに研究を行った黒潮続流域に加え、メキシコ湾流域などの他の西岸境界流海域における予測可能性について調査を進める。また、高解像度大気海洋結合モデルを用いて、黒潮続流周辺海域の熱フローに関する大気海洋相互作用が10年規模の広域気候変動に与える影響と、黒潮続流周辺海域以外の海域における熱フローに関係する大気海洋相互作用が広域気候変動に与える影響について比較する。 上記の方針について研究分担者らと議論を行うための研究集会開催について、新型感染症の状況を考慮した上で検討する。このようにして、大気から海洋亜表層に至る熱フローの実態解明のための研究活動を推進する。
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Research Products
(17 results)