2020 Fiscal Year Annual Research Report
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18H03734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平賀 岳彦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10444077)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オリビン / マントル / 超塑性 / アセノスフェア |
Outline of Annual Research Achievements |
上部マントル粘性率は、主要鉱物であるオリビン多結晶体の実験的に得られる流動則を地質条件に適用することで推定できる。しかし、とりわけ超塑性型拡散クリープ条件において、研究グループ間で粘性率にして2桁もの異なる結果が報告されており、信頼できる流動則は確立されていなかった。オリビン粒界ではCaやAlなどの不適合元素が濃集(粒界偏析)する。実験結果の違いは、用いられたオリビン多結晶体試料中の粒界偏析の有無に起因すると予想した。我々はCaとAlをわずかに添加したオリビン多結晶体試料と無添加試料を作製し、大気圧高温一軸圧縮実験によって化学組成が流動特性に与える影響を調べた。その結果、粒界拡散クリープが支配的であること、及び添加試料は試料の融点の0.92倍程度以上から無添加試料と比べて軟化し、その程度は温度上昇とともに増加することを明らかにした。添加試料が軟化した原因は、粒界偏析と温度に駆動されるソリダス近傍での粒界の無秩序化によるものと結論づけた(Yabe, Sueyoshi & Hiraga., 2020, JGR)。その軟化の効果を組み込んだ拡散クリープ則に基づいて、海洋上部マントル粘性率の深度構造を推定した。粒径が1 mmであると、10^19-10^20 Pasの低粘性層およびプレート冷却に伴う高粘性層の発達が推定され、リソスフェア‐アセノスフェア構造とよく対比できた (Yabe & Hiraga, 2020, JGR)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オリビンの超塑性型粒界拡散クリープに関する論文2本は国際誌において公表することができた。また、雰囲気及び真空炉が整備された理由から、一軸変形(uniaxia)試験のみならず、カーボン製ダイスを用いることで純粋せん断(pure shear)変形やせん断押し出し(equal channel angular pressing)変形が可能になった。これにより、実験可能な条件が広がり、多くの実験を行うことができた。これらの結果は、すでに国際学会等で発表するに至り、論文準備の段階に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
純粋せん断(pure shear)変形やせん断押し出し(equal channel angular pressing)変形実験を進め、粒成長、結晶軸選択配向、地震波速度異方性の推定を行う研究を進める。また、クリープへの化学効果の理解を進めるために、天然岩石試料からの実験試料合成に挑戦し、これを用いた変形実験を行うための実験室整備も進める。また、下部マントルの粒成長‐変形カップリングの研究結果をまとめ、国際誌への投稿に至れるようにする。
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Research Products
(4 results)