2019 Fiscal Year Annual Research Report
京大岡山3.8m望遠鏡と専用分光器を用いた中質量星周りの短周期惑星の探索
Project/Area Number |
18H03736
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 文衛 東京工業大学, 理学院, 准教授 (40397823)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 太陽系外惑星 / 高分散分光 / 視線速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来の中質量星(中質量巨星)を対象とした惑星探索の根本的な問題点である「中心星質量の不確定性」と「サンプル数の少なさ」を解消した新しい惑星探索を実施する。そのために、本研究では(1)中小口径望遠鏡を用いた事前のサンプル選定、(2)京大岡山3.8m望遠鏡への系外惑星探索専用高分散分光器の設置、(3)京大岡山3.8m望遠鏡を用いた系外惑星探索、という3本の柱を立てて研究を遂行する。令和元年度は(1)サンプル選定観測の一部と(2)分光器の改造・設置の一部を行った。
(1)については、8等級より明るい約2500個のG型巨星の中から事前観測によって2太陽質量以上である可能性が高い高金属量巨星を選び出すことを目的とした。そのために当初は低分散分光観測を計画していたが、昨年度開発した多色測光データに基づく機械学習的な手法が金属量推定に有効であることが分かったため、今年度はこの手法をさらに精密化し完成させた。8等級を限界に設定するとサンプル数がやや足りなくなることが判明したため、9等星までを候補天体とすることで約300個の暫定的なサンプル選定を終えた。
(2)については、現在ぐんま天文台150cm鏡に設置・運用されている高分散分光器GAOESを改造・移設する。令和元年度は、分光器を格納する高精度空調つき分光器室を設計・製作・設置した。断熱性能に十分配慮した設計にしたことで、設置後の予備的な性能テストで数時間程度の短時間ではあるがP-Vで約0.1℃という高い温度安定性が実現されていることを確認した。GAOES分光器の移設は次年度に回すことにしたが、その準備として光学テーブルの設置、分光器本体の改造部分の製作を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、サンプル選定観測の一部と分光器の改造・設置を行う計画であった。以下の理由から、おおむね順調に進展していると判断した。
サンプル選定観測については、昨年度開発した既存の多色測光データに基づく機械学習的な手法を完成させ、これを用いて約300個の暫定的なサンプル選定をすでに終えている。一部の天体についてはさらに高い精度で金属量を推定するため、岡山188cm望遠鏡の高分散分光器HIDESを用いた観測を始めている。
分光器の改造・設置については、予定通りに高精度空調つき分光器室の設置を終了している。GAOES分光器の移設は次年度に回すことになったが、光学テーブルの設置は完了しており、分光器本体の改造部分の製作も進んでいるため、受け入れ準備は概ね整っている。科研費申請時の計画では次年度の観測開始が予定されており、現時点の進捗を考えると次年度後半になるが試験観測を始められる見込みがある状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
サンプル選定は概ね終了しているので、次年度は岡山188cm望遠鏡を使いながらさらに候補天体を絞りつつ、明るい天体については同望遠鏡を用いて先行して惑星探索観測を進める。
GAOES分光器の改造・設置については、まずは分光器本体の改造部分の製作とナスミス焦点周りの製作物を完成させる。これと並行してぐんま天文台からGAOES分光器を移設し、製作部品が揃った段階で組み上げ、調整等を行う。これにより、今年度後半の試験観測開始を目標とする。
|