2018 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of strong vertical mixing regions in the ocean interior caused by near-inertial motionsons on the basin scale circulation and material distributions
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18H03741
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
千手 智晴 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (60335982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒巻 能史 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (00354994)
遠藤 貴洋 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (10422362)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近慣性内部波 / 日本海 / 乱流混合 / 深層循環 / 物質分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋中の鉛直混合は全球的な熱塩循環のパターンや強度を規定する重要な因子であるが、空間的に一様ではなく、局所的な強鉛直混合域が偏在している。強鉛直混合域と大循環は一体的な系を成すと考えられるが、両者の関係は明らかではない。本研究では、強鉛直混合域と海盆規模の循環を一体的に調べることのできる日本海をモデル海域として、風に起因する近慣性運動が局所的な強鉛直混合域を形成するメカニズムと、その結果生じたローカルな強鉛直混合域が日本海全体の循環と物質分布を決定する仕組みを解明する。係留観測と乱流計測,化学トレーサー分析を組み合わせた現場観測に加え、既存のArgoフロートデータの解析と数値モデル実験から、(1)風起源の近慣性運動が深海に強鉛直混合域を形成する機構,(2)乱流混合と海水特性分布の関係,(3)局所的な強鉛直混合域が日本海全体の循環と物質分布を決定する過程を明らかにする。 上記(1)を明らかにする目的で、2018年10月に大和海盆西部に長射程のADCPと複数の流速計からなる係留系を設置し、海洋上層から深層に至る流れの時系列観測を実施した。この流速計は、2019年5月に回収予定である。また(2)を明らかにするために、流速計の係留点近傍で船舶ADCPによる流れの観測と、乱流計による乱流エネルギー散逸率の24時間繰り返し観測を実施した。その結果、エネルギー散逸率が大きな領域が主温度躍層下においても散発的に現れることがわかった。乱流計測とは独立に鉛直拡散係数を求めるため、大和海盆南部において放射性炭素(14C)計測のための鉛直多層採水を実施した。一部の試料については、測定前処理に着手している。(3)については、全球気象通信回線(GTS回線)上に流通しているArgoフロートデータをダウンロードし、その分布や品質について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海洋上層から深層に至る近慣性運動の鉛直構造と時間変動を計測する目的で、2018年10月に、日本海南東部の大和海盆に流速計を係留した。係留したのは長射程の超音波多層流速計(ADCP)と超音波ドップラー流速計(5台)で、長崎大学の練習船長崎丸により、気象庁のモニタリングポイントであるSta.PM5に設置した。また係留観測点の近傍で、船舶搭載ADCPと乱流計(VMP500)による24時間繰り返し観測を行い、成層構造,水平流速,乱流強度の時系列データを取得した。乱流計測と独立に鉛直拡散係数を求めるために、大和海盆の5つの地点においてCTDに取り付けた採水器より、放射性炭素(14C)の鉛直多層採水を実施した。一部の試料については、既に測定前処理に着手している。さらに、過去の観測で得られた日本海盆および大和海盆におけるクロロフルオロカーボン類(CFCs)の精密分析を進めている。 全球気象通信回線(GTS回線)上に流通している2002~2016年に得られたArgoフロートデータ(約14600点)をダウンロードし、その分布や品質について検討を行った。その結果、特に塩分に計測エラーやセンサーのドリフトに起因すると考えられる異常値が散見されることがわかった。また、日本海域のArgoフロートは韓国が投入したものが多いため、観測期間の初期(2002~2004年)には対馬海盆にデータが集中しており、地理的な偏りが大きいことが示された。 以上のように解析中のデータが多いが、当初の計画通りに観測が実施できたことから、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年10月に大和海盆のSta.PM5に係留したADCPと流速計(5台)を、本年5月に回収する。回収には、長崎大学の長崎丸を利用する。また流速計の係留点近傍で水温・塩分プロファイラー(CTD)による成層構造の計測を実施する。回収したADCP、流速計のデータを、昨年10月に行った乱流計による繰り返し観測のデータ、および船舶搭載ADCPによる流速データと合わせて解析し、風起源の近慣性内部波の海洋中・深層への伝播過程と、それにともなう乱流混合過程を調査する。 本年10月にも長崎丸を利用した現場観測を計画しており、ADCPと流速計から構成される複数の係留系を用いた短期集中観測を行う予定である。また、係留点近傍では船舶搭載ADCPと乱流計による時系列観測も実施の予定である。さらに、化学トレーサー(放射性炭素とクロロフルオロカーボン類)のサンプリングを行い、得られた化学トレーサー分布から鉛直拡散係数の推定を行う。ただし、加速器による分析結果が出そろうのに時間がかかることが予想されるため、本年度は試料採取とその前処理に重点を置く。 引き続き、日本海で得られた既往のArgoフロートデータを解析する。これまでGTS回線上に流通する水温・塩分プロファイルデータを精査してきたが、より高品質なArgoフロートデータをアメリカもしくはフランスの研究機関より入手し、日本海全域にわたる成層構造の時空間的な変動とその原因を調査する。
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Research Products
(14 results)