2020 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding of biochemistry of chlorophyll c to shed light on evolution of marine primary production over the Phanerozoic Eon
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18H03743
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
柏山 祐一郎 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (00611782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 二朗 久留米大学, 医学部, 講師 (10373094)
塚谷 祐介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (10421843)
神川 龍馬 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40627634)
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
木下 雄介 立命館大学, 生命科学部, 助教 (50792363)
谷藤 吾朗 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (70438480)
伊庭 靖弘 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80610451)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 紅藻系二次植物の進化 / 海洋の基礎生産 / クロロフィルの生合成 / クロロフィルの分解代謝 / 藻類の化石記録 / 藻類捕食者の進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,①クロロフィルcの生合成関連遺伝子・タンパク質の探索,②クロロフィル類の分解代謝経路に関わる遺伝子・タンパク質の探索,③クロロフィルcを有する藻類およびその起源に関わる系統の真核生物の地質情報の研究の3つのアプローチを同時進行させてきた。②に関して,最古の真核藻類の出現時期の再検証の必要のため,カナダおよびアメリカの研究者とカナダの北極圏サマセット島への2年度にわたる共同調査の実施が計画されていたがCovid-19パンデミックの影響により中止を余儀なくされ,今後についても確実な実施の目処が立たないのが現実である。 この状況を受けて,研究の方向性を転換して,少なくとも今年度と来年度について,①と③の項目に集中することとした。すなわち,まず①に関しては,同様に未同定である二次植物のクロロフィルa合成遺伝子の一部についても視野に入れて,網羅的に機能遺伝子の探索を進めた。ここでは,クロロフィルc合成系が二次植物にのみ見出される事実を重要視し,葉緑体獲得進化に伴う遺伝子重複により生じたクロロフィル合成関連遺伝子のパラログ候補を,全遺伝子情報が既に明らかとなっている有色および無職の珪藻類とクリプト藻類のデータベースから探索した。そして,有機合成した基質クロロフィル中間代謝産物を用いて in vitroでの酵素実験を実施し,いくつかの遺伝子について機能を特定した。これらについては,光合成バクテリアのクロロフィル合成関連遺伝子を欠損させた変異体群を作成したin vivo実験も展開している。③に関しては,分解代謝の研究のためのモデル生物として,これまでのPeranema trichophorumに加えて,珪藻捕食性の鞭毛虫Amastigomonada sp.についても,クロロフィル消化の有無でのトランスクリプトーム変化の解析を進めており,今度候補となる代謝遺伝子を探索していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「クロロフィル生合成研究グループ」では,光合成細菌Rhodobacter spheroidesを用いたin vivoの相補実験系で,いくつかの珪藻クロロフィル代謝経路パラログの活性を検証した結果,その片方がこれまで未知とされてきたクロロフィル代謝経路の遺伝子であることが示唆され,現在,in vitroでの確認実験を進めている。これは,本研究で提案している『二次共生に伴うクロロフィル代謝経路因子の置換』を証明する結果であり,葉緑体獲得の進化プロセスを考察する上で重要である。「クロロフィル分解代謝研究グループ」では,珪藻食プロティストの比較トランスクリプトームデータを予定通り取得し,現在それらの解析を進めている。そのほか,同グループの成果を含め,クロロフィル代謝などに関連する成果を論文として公表した(Kashiyama et al., 2021, Metabolic Engineering; Kayama et al., 2020, BMC Biology)。「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」では,in vitro実験に必要な基質標品を順調に供給できた。また,様々な分解代謝産物候補分子を合成して物性を調べ,現在投稿準備中である。なお,「藻類化石記録研究グループ」で計画していたカナダ北極圏における地質調査については, COVID-19のパンデミックの影響により再延期することとした。グループ間に進捗状況にはばらつきはあるものの,全体としては「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策 「クロロフィル生合成研究グループ」では,これまで重要性が示唆されたタンパク質群についてin vitroでの確認実験を進めている。また,光合成細菌を用いたin vivoの相補実験系では,検証対象をヘム合成経路因子にまで拡大して,珪藻のクロロフィルc合成因子を探索する。「クロロフィル分解代謝研究グループ」では,珪藻食プロティストの比較トランスクリプトームデータから,クロロフィル分解代謝に関連する候補因子を探索し,昨年度に確立させたPeranema trichophorumのノックダウン実験系で検証する。「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」では,これまでに合成した様々な分子の物性に関するデータを論文化させる。「藻類化石記録研究グループ」では,カナダ北極圏における地質調査について, COVID-19のパンデミックの影響により再延期するが,次年度実施の可能性を模索する。
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Research Products
(4 results)