2019 Fiscal Year Annual Research Report
Improving radiocarbon calibration model by dating fossil pollen pellets prepared by cell sorter
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18H03744
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中川 毅 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (20332190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 貴之 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (30748900)
山田 圭太郎 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (30815494)
北場 育子 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (60631710)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射性炭素年代測定 / 放射性炭素年代較正 / IntCal / 化石花粉 / セルソーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、あらたに100層準から資料を採取し、年代測定を実施する予定であった。だが分析を進める過程で、回収されている化石花粉の個数が、理論値のおよそ1/3に留まっていることが発覚した。この問題は、3倍量の試料を消費することで暫定的に回避することも可能ではあるが、世界的に貴重な水月湖の堆積物試料を有効活用するという視点から考えると、改善することが望ましい。そのため、およそ2/3の試料がどのように失われているかの総合的な検討を実施した。 検討には予想以上の時間が必要だったが、結論として、懸濁液中の花粉試料を凍結乾燥させるプロセスにおいてある種の「突沸」のような現象が起き、それによって試料の飛散が起こっていることが判明した。この問題を回避するために様々な治具を作成・テストしたが、なかなか解決を見いだすことができなかった。最終的には、極めて単純な金属製のカプセルをデシケーターに入れ、ひたすら表面から静かに乾燥させる方法が最適であることが分かった。また、ガラス器具の表面への吸着などの問題も副次的に解決していくことで、ほぼ理論値に近い回収率を安定的に達成できるようになった。 こうして問題を解決した後、およそ40サンプルの分析に成功した。なおその後は、本来ならルーチンでデータの大量生産モードに移行できるはずだったが、コロナウィルスに関連して実験施設が使えなくなってしまったため、ふたたび不本意な停滞を強いられている。 また昨年は、花粉の濃縮技術と年代測定技術について、オックスフォード大学と正式な協力協定を締結した。2020年度は計画の実施に不確実性が多くなってしまったが、これによって少なくとも2チャンネルの分析ルートを確保することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績の所でも述べた通り、今年度は「想定していなかったサンプルのロス」との戦いに追われた1年だった。短期的な目標に集中するのであれば、ロスがあることを受け入れつつ、サンプルサイズを増やす(あるいはサンプル量は変えずにデータの質を落とす)ことで予定通りの成果を目指すことも不可能ではなかった。だが、水月湖の年縞堆積物はきわめて貴重であるため、そのような浪費は望ましくない。また、本プロジェクトがデータ提供することを目標としているIntCalは、全世界で使用される「標準ものさし」であることから、質の点での妥協は許されない。そこで、中・長期的なメリットを優先する形で、サンプルロスの問題に正面から取り組み、これを解決することをめざした。 結果として、時間はかかったものの、サンプルロスの原因はほぼ特定され、理論値の80%近い回収率を安定的に達成できるようになった。またその副産物として、処理全体の効率も向上した。これは、今年度以降に分析の遅れを取り戻す上でも楽観的な要因であった。 ところが、その後コロナウィルスの影響でラボの使用が不可能になり、計画を予定通りに遂行できるかどうか不透明になってしまっている。以上のことを総合的に判断すると、きわめて遺憾ではなるが、研究は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
晩氷期から完新世初期については、コロナウィルスの影響が終息し、実験施設の利用が可能になり次第、2019年度に改善された手法を用いて花粉の抽出と年代測定を進める(コロナの状況の推移にもよるが、可能な限り年度内に100サンプルの分析をめざす)。いっぽう晩氷期以前のもっと寒い時代については、代表的な花粉の粒径が大きく、そのままではセルソーターに導入できない、という問題があり、早急に解決する必要がある。 この問題に対しては昨年度から検討を続けていたが、ビーズの入った乾式カラムを用いた粉砕装置が有効であることが確認された。また、ルーチンで処理をおこなうための装置も購入した。2020年度は、セルソーターに導入するのに適した粒径20~40マイクロメートルを達成するために必要なビーズ径と粉砕時間をつきとめ、大型花粉の抽出を軌道に乗せる(ただし、現在はコロナに関連した物流の停滞のため、粉砕実験に必要なカラムが入手できなくなっている。そのため、当面は晩氷期と完新世初期の分析を重点的に進める)。
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