2018 Fiscal Year Annual Research Report
Conductivity control of semiconducting silicides by composition ratios and formation of homojunction solar cells on glass substrates
Project/Area Number |
18H03767
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
末益 崇 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40282339)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | pn接合 / 不純物ドーピング / 太陽電池 / シリサイド半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
BaSi2膜は結晶Si上に高品位に堆積できるため、市場の9割を占める結晶Si太陽電池とのタンデム型太陽電池への展開が可能で、35%超の変換効率を目指せる材料である。そのためには、BaSi2-pnホモ接合太陽電池の安定動作が必須である。これまで、Sb ドープn-BaSi2膜およびBドープp-BaSi2膜において、1cc当たり10の16乗~10の19乗の範囲でキャリア密度の制御に成功している 。しかし、両者を積層したBaSi2-pn接合では、n型不純物であるSbがBaSi2膜中の結晶粒界に沿って拡散し、pn接合を電気的に短絡する問題があった。そのため、Sbドープn型BaSi2をトップ層とする必要があり、Si基板との界面は必然的にp-BaSi2/p-Siでとなり、大きなバンド不連続のため、キャリアの輸送に支障があった。 この問題の解決には、拡散係数の大きなSbを使わずにn-BaSi2を形成する必要がある。1つの方法は、Ba/Si組成比を化学量論組成からズラすことで、1cc当たり電子密度約10の18乗のn-BaSi2膜を形成すること、もう1つの方法は、Sbよりも拡散係数が極端に小さいAsを用いることである。 2018年度は、n型用の不純物として未開拓のAsに取り組んだ。分子線エピタキシー法により、AsドープBaSi2膜を形成し、Asのドーピング量を変えて、電子密度を制御できるか否か確かめる実験を行った。室温でのホール測定の結果、AsドープBaSi2膜において、電子密度を1cc当たり10の18乗の中盤まで増やすことに成功した。また、BaSi2膜中のSbとは異なり、AsはBaSi2膜中で深さ方向に均一に分布していることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
As源としてGaAsを用いた。真空チャンバー内でGaAsを加熱して、GaとAsの蒸気圧の大きさな差を利用して、Asを優先的にBaSi2膜にドーピングする方法である。単体Asを用いないのは、単体Asを加熱するとAs4分子が蒸着されるのに対し、GaAsを使うとAs2分子が蒸着されるためであり、As2の方が、Asに分解されやすく、BaSi2膜内に取り込まれやすいと考えた。 分子線エピタキシー法によりBaSi2膜を堆積中に、Asをドーピングしたところ、室温で、電子密度を1cc当たり10の18乗の中盤まで増やすことに成功した。移動度も1000 cm2/Vs程度と大きく、また、分光感度も大きく、良好なn型BaSi2膜の形成に成功した。SIMSで膜中のAsの深さ分布を調べたところ、均一にドーピングされていることを確認した。これらを踏まえ、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究により、Asをn型不純物に用いることで、電子密度を1cc当たり10の18乗の中盤まで高めることに成功した。Asは、Sbに比べて拡散係数が2桁程度小さいことが分かっており、急峻なpn接合の形成に使える可能性がある。しかし、Asドープn-BaSi2を太陽電池に用いるには、まだ不明な点が多すぎる。 そこで、本年度は、AsドープBaSi2膜について、分光感度特性が向上する成長条件(成長温度、Ba/Si堆積レート比など)を見出すことに最優先に取り組む。また、n-BaSi2膜に存在する欠陥密度および欠陥準位の深さを、DLTS法を用いて評価する。このような欠陥評価および分光感度特性を通じて成長条件を固めた後、Asドープn-BaSi2膜について、電子移動度の温度特性を評価し、どのような散乱機構が存在するのか明らかにする。実験と平行して、電子デバイスシミュレータ(SILVACO)を用いて、ホモ接合太陽電池構造を設計する。その後、n-Si基板を用いて、p-BaSi2/n-BaSi2/n-Siホモ接合太陽電池の作製に取り組み、太陽電池動作の実証を目指す
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