2019 Fiscal Year Annual Research Report
Conductivity control of semiconducting silicides by composition ratios and formation of homojunction solar cells on glass substrates
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18H03767
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
末益 崇 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40282339)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 太陽電池 / 欠陥 / パッシベーション / 第一原理計算 / バリウムシリサイド |
Outline of Annual Research Achievements |
新規太陽電池材料として期待されるバリウムシリサイド(BaSi2)は、BaリッチまたはSiリッチ条件下で成長すると、第一原理計算より、点欠陥の中でもSi空孔が最も形成されやすいことが分かっている。また、これまでの実験により、欠陥の存在は、DLTS法やPL測定で明らかになっている。太陽電池の光吸収層には、欠陥密度の少ないBaSi2膜が必要であり、これらの点欠陥をいかに減らすかが重要であり、2019年度はこの課題に取り組んできた。 光吸収層の高品質化を評価する指標として、太陽電池の光電流の大きさに直結する分光感度特性を選んだ。本年度は、BaSi2膜にp型ドーパントであるBや、n型ドーパントであるAsを、1cc当たり10の17乗程度の低濃度だけドーピングすることで、アンドープ膜と比べて分光感度が格段に大きくなること、さらに、原子状水素を照射して、試料内の水素密度が1cc当たり、10の19乗程度のとき、分光感度がさらに向上することが分かった。分光感度の向上は、光照射時に生成したキャリアの寿命が伸びたこと、つまり、欠陥の低減によることが、マイクロ波光伝導度減衰法から明らかになった。また、DLTS法により、欠陥密度の低減が確認された。その他、常磁性共鳴法(EPR法)により、BaSi2膜中の点欠陥をとらえることに成功した。EPR法の利点は、第一原理計算と組み合わせることで、欠陥のミクロ構造を明らかにできることにある。原子状水素の導入により、アンドープBaSi2およびBドープp型BaSi2において、どのような機構により欠陥密度が低減するのかも、第一原理計算により明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BaSi2膜中でBa/Si原子数比がストイキオメトリーからズレると、点欠陥が入り易くなることは第一原理計算から予想され、また、実験で明らかになっていたが、これを防ぐ具体的な方法がこれまでになかった。2019年度に見出した、BaSi2膜に原子状水素を照射する方法は、簡単であり、また、効果も明確である。さらに、第一原理計算の助けにより、どのような機構で欠陥が不活性化するのか、その機構を理解できたことは大きい。 これらの理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
BaSi2のような新規材料の欠陥が、原子状水素で不活性化することは大変面白い。第一原理計算により、その構造は予想はされるが、実験により確かめる必要がある。BaSi2中のSiは、四面体の角位置に配置し、お互いに共有結合をしている。このため、Si空孔があれば、不対電子が存在すると考えられ、常磁性共鳴法(EPR法)で、欠陥をとらえられると考えられる。実際に、2019年度に、アンドープBaSi2において、点欠陥を検出することに成功した。今後は、このEPR法での評価をさらに推し進める。EPR法の利点は、第一原理計算と組み合わせることで、欠陥のミクロ構造を明らかにすることができることにある。原子状水素がn型BaSi2およびp型BaSi2に入ることで、どのように欠陥を不活性化するのか、EPR法により明らかにする。また、これまでBaSi2のn型ドーパントとして用いてきたSbは、拡散係数が大きいという問題があった。一方、拡散係数の小さいn型ドーパントとしてAsによる電子密度制御にも成功している。原子状水素で欠陥を不活性化したAsドープn型BaSi2とBドープp型BaSi2によるホモ接合太陽電池を作製し、従来よりも格段に大きなエネルギー変換効率の実証を目指す。
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