2019 Fiscal Year Annual Research Report
新たな建物強風被害ハザード提案に向けた積雲対流下のドップラーライダー観測
Project/Area Number |
18H03805
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 敬 京都大学, 防災研究所, 教授 (00190570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹見 哲也 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10314361)
山田 広幸 琉球大学, 理学部, 准教授 (30421879)
山口 弘誠 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90551383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 建物強風被害 / ハザード / 積雲対流 / ドップラーライダー / 観測 / 突風 / 接地境界層 / 変動風速場 |
Outline of Annual Research Achievements |
強風災害に対する防災・減災対応の実効性を高めるにはタイムラインに即した対応案を提示することが不可欠である。このとき、被害予測は対応案策定の要であり、正確な予測は強風ハザードの予測精度に左右される。本研究は、地表面摩擦に起因する「風の乱れ」だけでなく、積雲対流下の上昇・下降気流に由来するダウンバーストや竜巻などの「突風」現象を、ドップラーライダーとレーダーを組み合わせた立体的フィールド観測により明らかにし、接地境界層内の変動風速場の解析手法を構築することにより、最も危険な風速値である最大瞬間風速の評価・予測をもとにした、新たな建物強風被害ハザードを提案して被害予測の高精度化を実現し、建物強風災害リスクの軽減に向けた環境構築に寄与しようとするものである。これまで上記の目的を達成するために、沖縄の観測サイトにおいて、積雲対流が安定して発生する冬季の季節風の吹き出し時を狙った観測により、前線通過に伴う降雨帯下の強風データの観測結果を得た。また、神戸における観測により、都市域における接地境界層の発達の特性を明らかにするための観測データを得た。これらにより、積雲対流下で起こる下降流、および、接地境界層内の気流特性に関して、予測手法の検証用データが得られた。さらに、接地境界層内の変動風速場を再現・予測可能な解析手法を構築するための準備として、流入条件および初期条件を与えるための広域の上空風のデータを気象モデルを用いた再現計算により作成した。地上付近の非定常な乱流場の計算に地表面摩擦の影響を取り込むために、計算に用いるラージエディシミュレーションにキャノピーモデルを組み込み、地表面粗度を空力抵抗として評価できるようにした。さらに、空力抵抗を評価するために必要となる粗度形状に関しては、地理情報システム上の地形や建物形状、土地利用の数値情報データから求めることができるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度には、予定の研究実施計画に従い、接地境界層の発達および積雲対流下の変動風速場の特性を明らかにするために、以下のようにドップラーライダーによる立体的フィールド観測を行った。 沖縄の観測サイトにおいて、積雲対流が安定して発生する冬季の季節風の吹き出し時を狙って観測を行った。この観測では琉球大学の観測グループ(琉球大学、名古屋大学、情報通信研究機構(NICT)、気象庁)と協力して行い、レーダーやゾンデ観測網による上空風および積雲の観測と連携した。観測期間内に、前線通過に伴う降雨帯下の強風データの観測結果が得られた。また、夏季には観測機器を移し、都市域(神戸地区)において京都大学の観測グループ(京都大学生存研、名古屋大学、神戸大学、山梨大学、大阪大学、山口大学、情報通信研究機構(NICT))と共に、ドップラーライダーを用いた観測を行った。 また、以下のように接地境界層内変動風速場の予測手法の構築を開始した。 地面付近の接地境界層内の変動風速場の解析にあたって、流入条件および初期条件を与えるための広域の上空風のデータを作成した。本研究ではメソ気象モデルであるWRFを用いた解析を行い、解析結果の検証にはレーダーおよびドップラーライダーの観測結果を用いた。次に、建物の強風被害に直接関係する地面付近の変動風速を再現するために、非定常な乱流場を計算することができるラージエディシミュレーションに、地表面摩擦の影響をキャノピーモデルを用いて地表面粗度を空力抵抗として評価して取り込むことができるようにした。キャノピーモデルにおいて空力抵抗を評価するために必要となる粗度形状は、地理情報システム(GIS)上の地形や建物形状、土地利用の数値情報データから求めた。 以上、おおむね予定通り順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ドップラーライダーによるフィールド観測を継続するとともに、接地境界層内変動風速場の解析を進める。地面付近の接地境界層内の変動風速場の解析にあたって、流入条件および初期条件を与えるために、広域の上空風のデータを観測結果に応じて、メソ気象モデルであるWRFを用いた解析を行い、観測サイト周囲の広域気象場を再現・予測する。解析結果の検証には、レーダーおよびドップラーライダーの観測結果を用いる。建物の強風被害に直接関係する地面付近の変動風速を再現するために、非定常な乱流場を計算することができるラージエディシミュレーションを用いる。地表面摩擦の影響はキャノピーモデルを用いたLESにより地表面粗度を空力抵抗として評価して取り込み、接地境界層内の変動風速場を再現・予測する。キャノピーモデルにおいて空力抵抗を評価するために必要となる粗度形状は、地理情報システム(GIS)上の地形や建物形状、土地利用の数値情報データから求める。積雲対流の解析が可能な雲物理モデルをLESに導入し、地表面摩擦による「風の乱れ」だけでなく積雲対流下の「突風」の影響を含めた接地境界層内の変動風速場を再現・予測する。とくに、地表面摩擦の影響が大きい都市部における流れ場を扱うために、キャノピーモデルを用いたLESとの融合を図り、地表面粗度の取り扱いについても検討を行う。積雲対流の情報は広域上空風解析やレーダーおよびドップラーライダーによる観測結果を用い、解析結果の精度検証を行う。さらに、構築された接地境界層内変動風場解析手法を用いて、地表面摩に起因する「風乱れ」だけでなく、積雲対流下上昇・下降気流に由来する「突風」影響を考慮した最大瞬間風分布を求める。得られた結果を基に対応する建物被害予測および、被害リスク評価を行う。これにより、積雲対流下に由来する「突風」影響を考慮した新たな建物強風による被害風ハザードを提案する。
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