2019 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of electron beam 3D printing metallic materials
Project/Area Number |
18H03834
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 晶彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (00197617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 雄一郎 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10322174)
山中 謙太 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30727061)
青柳 健大 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90636044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金属積層造形 / 電子ビーム積層造形 / ニッケル基超合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
材料の熱物性値とEBMにおけるメルトプールの溶融・凝固挙動の関係を明らかにすることを目的に、実験的手法とシミュレーションの両方を用いてNi-Al系合金の溶融・凝固挙動について調査した。 種々のビーム出力とビーム走査速度でNi-Al合金バルク材へシングルビード形成実験を行い、メルトプール形状やその凝固組織を調査した。また、シミュレーションを用いてメルトプール内の流動、温度解析を行った。 (1)CFDシミュレーションにより、EBMプロセスにおいて、溶融金属の粘性、熱伝導率、表面張力の温度依存性がメルトプール形状に与える影響を調査し、これらの熱物性値がメルトプール形状に影響を与える要因の一つであることを確認した。今回用いたNi-Al合金では、メルトプール形状に大きな影響を与えた熱物性値はマランゴニ係数と熱伝導率であった。 (2)Ni-Al系合金の凝固組織は、20Alではビーム条件によらず基板の結晶方位を引き継いだ結晶成長が生じた。一方40Alでは基板の結晶方位とは異なる方位の結晶が形成された。これはNi-Al系合金では、凝固温度幅の組成依存性が大きく、凝固温度幅の小さい20Alでは組成的過冷却が起こりにくく、CET領域が40Alよりも低G側に存在し、柱状晶域が広くなり、今回の実験では全て柱状晶域にG-Rが位置したためと考えられる。 (3)40Alではメルトプールの下部では熱流に沿ったエピタキシャル成長が観察された一方、メルトプールの端部では基板の方位とは異なる方位の結晶が形成された。メルトプールの端部では流速が大きく、結晶遊離が生じたと考えられる。また、最終凝固部であるメルトプール中央でも基盤の方位と異なる結晶が形成されており、固液界面の温度勾配は凝固初期で大きく、最終凝固部では小さくなることから、メルトプール内の温度勾配に応じて核生成挙動に変化が生じたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、種々のビーム出力とビーム走査速度でNi-Al合金プレート材へシングルビード形成実験を行い、メルトプール形状や溶融後の凝固組織を調査した。また、シミュレーションを用いてメルトプール内の形状、温度解析を行い、実験結果との比較を行い、理論的考察を行った。おおむね順調に進展していると考えられる。以下。その理由についてまとめる。 (1)CFDシミュレーションにより、EBMプロセスにおいて、溶融金属の粘性、熱伝導率、表面張力の温度依存性がメルトプールの形状に与える影響を調査し、これらの熱物性値がメルトプールの形状に影響を与える要因の一つであることを確認した。今回用いたNi-Al合金により、メルトプール形状に大きな影響を与えた熱物性値はマランゴニ係数と熱伝導率であることを明確に実証することができた (2)Ni-Al系合金の凝固組織は、20Alではビーム条件によらず基板の結晶方位を引き継いだ結晶成長が生じた。一方40Alでは基板の結晶方位とは異なる方位の結晶が形成された。これはNi-Al系合金では、固液温度幅の組成依存性が大きく、凝固温度幅の小さい20Alでは組成的過冷却が起こりにくく、CET領域が実験条件よりも低G側に存在するためと考えられ、凝固学的な考察により明確にすることができた。 (3)40Alではメルトプールの下部では熱流に沿ったエピタキシャル成長が観察された一方、メルトプールの端部では基板の方位とは異なる方位の結晶が形成された。メルトプールの端部では流速が大きく、結晶遊離が生じたと考えられる。また、最終凝固部であるメルトプール中央でもプレートの方位と異なる結晶が形成されており、固液界面の温度勾配は凝固初期で大きく、最終凝固部では小さくなることから、メルトプール内の温度勾配に応じて核生成挙動に変化が生じたと考えられる。 以上の成果により、現在まで順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、複雑なEBMプロセスをより単純化して理解するために、粉末を用いずにバルク材の溶融・凝固挙動の解析を行い、Ni-Al合金における熱物性値とメルトプールのダイナミクス及び溶融・凝固現象の関係性を明らかにした。しかしながら、実際のEBMにおける造形は、電子ビームで粉末層を選択的に溶融・凝固し、それを繰り返し積層して行うものであり、粉末とバルク材の物性値や電子ビームとの相互作用の違いなどにより、溶融・凝固現象に差異が生じることが考えられる。そのため、より実際のプロセスに近づけるため粉末の溶融・凝固挙動と凝固組織を理解することが必要不可欠である。今後の研究課題として、実際に粉末を用いてビード実験及びCFDシミュレーションを行うことにより、EBMプロセスにおけるNi-Al合金の溶融・凝固現象を理解することが必要である。 さらに、EBMでは予備加熱プロセスによって仮焼結体を形成するため、用いるべき物性値がバルク材と異なると考えられる。しかし仮焼結体の物性値は、粉末の分布や予備加熱温度の影響を受け変化するため、正確な物性値を予測することは難しい。また粉末溶融前までは仮焼結体の物性値を、粉末溶融後にはバルクの物性値を与えなければならないが、現在のシミュレーション技術には、途中で物性値を切り替える機能はない。そのため、粉末を用いた詳細なシミュレーションを行うためには、予備加熱により形成された仮焼結体の物性値の測定およびシミュレーション技術に物性値を途中で切り替えることができるような改良が必要であると考えられる。また今回用いた粉末は実際の造形に用いられる粉末形より大きい。したがって、粉末の大きさや形状により、溶融・凝固挙動が変化する可能性があり、今後の課題として、実際にEBMに用いられる粉末を用いた実験およびシミュレーションが必要であると考えられる。上記の項目を今後の研究推進策とする。
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