2018 Fiscal Year Annual Research Report
機能性材料の転位における原子・電子構造解析と機能発現機構解明
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18H03840
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 篤智 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20419675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栃木 栄太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50709483)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 機能性材料 / 転位 / 原子・電子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
転位は,材料中において原子配列の連続性が局所的に乱れた線状欠陥である.機能性材料において,転位はしばしば電子構造上の特異点となり,材料の機能特性を低下させると考えられている.しかしながら,機能特性における転位の影響に関する研究のほとんどが間接的な計測からの推察に基づくものであり,実際の転位の機能についてはその多くが不明である.また,機能性材料においては転位レベルの機械的性質の研究例が乏しく,その多くが不明である.なお,実際の転位は原子レベルの一次元ナノ構造であり,その本質的な理解には転位局所の原子・電子構造評価を含むミクロな実験的解析が不可欠である.そこで本研究では,配置および構造制御が施された転位を機能性材料中に自己的に形成させ,転位の原子・電子構造を高性能電子顕微鏡法により解析するとともに,機能性材料における転位が電子伝導特性や機械的特性に及ぼす影響を評価する. H30年度では,主に,チタン酸ストロンチウムの小角粒界(転位が一列に規則的に配列した粒界)を人工的に作製するとともに,その電気伝導特性評価を行った.その結果,還元処理を行った(110)/[001]小角粒界の電気伝導性に大きな異方性が発現することが確認された.転位線方向に高い電気伝導性を呈していることから,転位に沿った電気伝導性が高いことが明らかとなった.電子エネルギー損失分光法による電子構造解析の結果からは,還元前後で電子構造にほとんど変化がないことが分かった.電子構造に変化が認められないレベルの非常に少ない酸素空孔形成に伴った電子の発生が電気伝導の起源であると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チタン酸ストロンチウムの双結晶作製は順調に成功しており,順次,転位の電気伝導特性評価を行える状況にある.また,光環境制御下における酸化亜鉛の室温変形についても着手しており,その実験結果から,酸化亜鉛の機械的特性において,光励起電子が重要な影響を与えることが示唆された.このようにして,機能性材料における転位と電子・原子構造と機能開拓は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
チタン酸ストロンチウムにおける転位の電気伝導特性の結果から,転位に沿った電子伝導性が高いことが明らかとなっている.そこで,今後は,転位種による伝導性の違いを調査するとともに,転位に沿って伝導する電子の影響範囲と電子間相互作用を調査することを予定している.具体的には,方位差の異なる小傾角粒界を利用して,転位間隔が異なる状況を作りだし,その電気伝導特性を評価していく.また,機能性材料において,電子やホールの存在が転位の運動に及ぼす影響を調査するため,異なる光環境下における単結晶の室温変形試験を行っていく予定である.
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