2019 Fiscal Year Annual Research Report
担持触媒系材料が示す電位分布の精密解析~手法開発と活性部位の特定
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18H03845
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 恭和 九州大学, 工学研究院, 教授 (30281992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤嶺 大志 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (40804737)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電子線ホログラフィー / 電位分布 / 分極 / 触媒 / 回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属ナノ粒子を酸化物に担持させた「担持触媒系材料」の電位分布を電子線ホログラフィーで明らかにすることを目的とする。令和元年度は、初年度に整備した電子線ホログラフィーの基盤技術を高度化するとともに、実際の触媒系材料を用いたホログラムの収集とその解析を行った。各研究項目の実施状況は以下の通りである。 (1) ガス環境下でのホログラム収集の試み:位相ノイズの原因となる隔膜を用いずにガス導入できる電子顕微鏡(環境TEM)を用いてホログラムの取得を行った。しかしながら、ガス環境下での精緻なTEM観察と、鮮明度の高い電子線ホログラムを取得するための電子光学系の両立が当初の予想以上に難しく、目的とする0.1V精度での電位分布解析の実現には至っていない。 (2) 機械学習を利用した画像データの解析:機械学習を活用して粒子の概形やサイズを認識し、積算平均化が可能な画像データを選別するとともに、ブラッグ反射を強く励起した粒子をデータから除外し、電子回折に由来する付加的な位相変化の混入を抑制するための技術を構築した。 (3) 位相再生における暗視野電子線ホログラフィーの技術活用:電子回折由来の幾何学的位相変化と、本研究で注目する電磁場由来の位相変化の分離を試みた。励起・選択するブラッグ反射の負号反転(例えば002反射から00-2反射への切り替え)により回折由来の位相変化の負号を反転させた。一方で、この操作を通じて電磁場由来の位相変化に負号反転は生じない。これらの解析プロセスによって位相情報の分離を達成することができた。 (4) 実触媒試料を用いたホログラムのデータ収集と解析: Pt-TiO2担持触媒系材料を用いて電子線ホログラムのデータ収集(ガス導入のない真空環境下でのデータ収集)を行い、異種物質の接合に伴う電荷移動の兆候を検出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に設定した研究項目のうち、(1)ガス環境下でのホログラム収集の試み(担当:村上、赤嶺)については、ガス環境下でのTEM観察機能と鮮明な電子線ホログラムの収集機能の両立が難しく、当初目的の達成には至っていない。一方、(2)機械学習を利用した画像データの解析(担当:村上)と、(3)位相再生における暗視野電子線ホログラフィーの技術活用(担当:村上)については計画通りに研究が進んでいるほか、(4)実触媒試料を用いたホログラムのデータ収集と解析(担当:村上)については予想を上回る高価値なデータを取得することができた。総合的には着実な進展があったと判断できるが、研究項目(1)について遅れが生じたため、本年度に関しては標記区分のような自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度までの研究成果を踏まえ、最終年度(令和2年度)には以下のような研究を実施する。即ち最終年度は、これまでの要素研究で整備・獲得した技術や知見をもとに、典型的な触媒試料の解析を進めるとともに、本研究を総括する。最終年度の研究項目としては、以下の三項目を設定する (1) 触媒試料に対する電子線照射損傷の評価(担当:村上、赤嶺)~触媒試料に対する電子線ホログラフィーの実験・解析技術の整備に加えて、材料本来の電位分布を観測するためには、電子線照射損傷(電子線照射に伴う試料の変質やコンタミネーションなど)に関わる詳しい知見が必要である。そこで本研究では、触媒系のなかでも特に電子線照射に弱い金属有機構造体系の試料を用いて、電子線照射量と試料変質の関係を系統的に調べ、電子線ホログラフィーによる電位計測の更なる最適化を図る。 (2) 貴金属微粒子を担持した触媒試料の電位分布解析(担当:村上)~TiO2などの酸化物に貴金属微粒子を担持させた試料を調製し、接合界面付近で観測される電気分極の計測(より直接的には電位の計測)を電子線ホログラフィーにより実施する。ホログラムの位相再生については、前年度までに整備した不要情報の分離技術や、微弱情報の抽出プロセスを活用する。さらに、物質間の仕事関数差に基づく電荷移動の考察や第一原理計算もあわせて電子線ホログラフィーの実験データを解析し、活性部位に関わる知見を導く。 (3) 研究の総括(担当:村上)~本研究の総括と、最新の成果の発表を行う。
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Research Products
(9 results)