2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of ion conducting membrane and electrocatalyst based on hydroxide nanosheets for efficient enery conversion
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18H03869
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
馬 仁志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (90391218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 伸行 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (70431822)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノシート / 電極触媒 / イオン伝導 / 燃料電池 / 水電解 |
Outline of Annual Research Achievements |
絶縁基板に吸着した層状複水酸化物(LDH)ナノシートの上に微小電極を形成し、シート面内方向のイオン伝導の測定を行った。2種類金属組成(Mg2+-Al3+、Co2+-Al3+)のLDHナノシートにおいて、室温付近で10-1S/cmの高い伝導率が得られることを確認した。この高いイオン伝導度はナノシート表面の高秩序に密集しているヒドロキシルネットワークという構造的特徴に直接相関している証拠をつかめた。 3種類の二価金属塩(Co2+, Ni2+, Fe2+)とアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムの希薄水溶液を窒素ガス保護下でヘキサメチレンテトラミンと還流させることによって、三元系(Co2+-Ni2+-Fe3+)LDHを調製した。得たCo-Ni-Fe LDHを適宜にイオン交換した後、単層剥離させ、電気伝導性を有する酸化ルテニウム(RuO2.1)ナノシートとの複合化を行った。静電引力によって、LDHとRuO2.1ナノシートが交互に積み重ねた超格子構造を形成し、OER触媒として0.3V以下の過電圧を示すことが分かった。2次元物質同士のヘテロ複合効果により電極反応を大幅に高効率化できることが実証された。 エタノールと水の混合溶媒の中で硝酸イオンを含有するCo-Al LDHにAg(CN)2イオンと反応させ、層間にAg(CN)2を挿入させることに成功した。簡単なレドックスプロセスによりその場で銀イオンを還元し、Agナノ粒子をインターカレートしたCo-Al LDHが得られた。ORR触媒特性を調べたところ、優れた触媒活性と良好な安定性を示し、ほぼ理想的な4電子移動過程を経てORR反応が進行していることが明らかになった。LDHに挿入されたAgナノ粒子の閉じ込め効果および層間スペースの拡張に起因し、反応中間体・イオンおよび電子の移動が効果的に促進され、電極触媒活性の増強につながったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノシートが示す高いイオン伝導度について、微細加工技術によりナノシート1枚における究極的なイオン伝導挙動を評価できたとともに、理論計算と連携しながら、そのメカニズムを根底から追及できるようになりつつある。ナノシートの金属組成や表面のヒドロキシルネットワークなどの構造特徴が水酸化物イオンの伝導挙動に重要な影響を及ぼすことが分かった。特に、ヒドロキシルネットワークが水酸化物イオンの伝導に果たす役割の解明を進めることによって、2次元伝導機構の確立に繋げると考える。 遷移金属組成をチューニングまたはドーピングするアプローチは電極触媒の性能向上に対してきわめて有効であることが分かった。二つ以上の3d遷移金属元素のレッドクス特性を活用し、イオン・電子移動反応を高度に制御することで、貴金属フリー高性能ナノ触媒の開発につながる設計概念、方法論を確立しつつある。また、LDHの層間スペースと反応性を利用し、高い触媒活性を有する金属ナノ粒子と複合できるボトムアップ合成法を提案した。LDH層間スペースの拡張及び挿入されたナノ粒子の閉じ込め効果に起因した電極触媒活性の増強が明らかになった。引き続き、金属イオンの電子の数や配位環境、酸化状態及び表面酸素との結合などの制御を重点的に行えば、ヘテロ金属イオンの間の電荷移動を誘導し、触媒性能のさらなる向上が期待される。 上述のように、ナノシートにおける2次元伝導機構の確立及び多元系遷移金属水酸化物をベースとしたナノ触媒の創製に向けて順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、LDHナノシート1枚におけるイオン伝導挙動を重点的に考察し、2次元的な伝導機構を明らかにする。微細加工技術によりナノシートの上に微小電極を形成したデバイスを用い、温・湿度の制御に伴うイオン伝導度、活性化エネルギー及び水素結合環境などの変化を系統的解析する。理論計算と密に連携しながら、ナノシートの金属組成や水酸基・ヒドロキシルネットワーク、吸着水やカウンターイオンなどが水酸化物イオンの伝導挙動に及ぼす影響を詳しく考察する。ナノシート表面におけるイオンの高速伝導経路を解明し、室温付近で10-1S/cmの伝導率が得られるナノシートの組成やイオン種及び温・湿度条件を確立する。 さらに、水酸化物ナノシートと四級化ポリビニルアルコールなど有機樹脂との複合ゾルを調製し、真空濾過プロセスにより無機・有機複合膜の作製を行う。複合膜内の有機成分の含有量調整およびナノシート間の相互作用の制御により、高いイオン伝導度を維持しながら、優れた機械的性能を有する実用的なアニオン伝導膜の創製を推進する。 引き続き、遷移金属水酸化物ナノシートをベースとし、ORR及びOERに高い活性及び安定性を示す複合ナノ触媒の開発を進める。これまで研究されてきた典型的な単層ナノシートと異なる金属組成や電荷密度を持つ新型層状水酸化物やLDHのナノシート合成に挑戦する。ナノシートあるいはその高次複合構造体における電子・イオン伝導チャンネルを最適化することにより電極触媒性能の向上を図る。2次元ナノシート同士のヘテロ集積化プロセスにおいては、還元型酸化グラフェンだけでなく、酸化ルテニウムなどの非炭素系電導性ナノシートとのハイブリッド化を行う。そのヘテロ界面・相乗効果によりイオン・電子移動反応を能動的制御することによって、電極反応の大幅な高効率化を目指す。
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Research Products
(15 results)