2019 Fiscal Year Annual Research Report
次世代超高速デバイス実現に向けた新規ディラック原子層材料の開発
Project/Area Number |
18H03874
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 巌 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00343103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 剛弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70373305)
冨中 悟史 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (90468869)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 単原子シート / キャリアダイナミクス / ディラック / 原子層 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、グラフェンの特異な電子物性、光学特性に着目した研究開発が加速するなか、「Beyond グラフェン」と称される新規2次元シート状物質の研究も大きく発展している。中でもホウ素の単原子層(ボロフェン)は、多種多様な2次元原子構造をとるだけでなく、ディラックフェルミオンなどの珍しい電子系を形成する。さらに、ホウ素と水素からなる2次元状物質であるホウ化水素(HB)シートは「ボロファン」とよばれ、優れた電子材料特性や水素吸蔵特性が理論的に予想されていた。本研究では単層グラフェンを超えるディラック電子系を有した原子層材料としてホウ素化合物シートを中心にその開発とダイナミクス研究を行うことを目的としている。
前年度までにボロフェンを水素化したHB単原子シートの水素輸送や電気伝導特性を実験的に明らかにしていたので、2019年度ではこれらのデータ解析を行い論文成果として発表した。さらに前年度では新しいディラック電子系を有した準結晶2層グラフェンのキャリアダイナミクスを実験的に調べ、超高速時間スケールでのみ存在する光誘起電位を発見した。そこで2019年度は起源を理論的に解析したと共に、本成果を論文発表した。これらの成果は産業技術に直接関係するため、プレスリリースを行い多数の紙面を飾った。
前年度では6員環を構成要素とするHB単原子シートを理論的に調べたので、2019年度では5、6、7員環から成るHB単原子シートを調べた。化学の3原子2電子結合理論と物理のノンシンモルフィックな空間群論を融合させた結果、これらのHB単原子シートにおいて珍しい2次元ディラックノーダルループが形成することをトポロジカルに証明することができた。この理論解析は第一原理計算で再現することができ、論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多数の論文成果を発表しただけでなく、それぞれの成果が産業技術へ直接役立つことが明らかになり大きな注目も集めた。また、HBシートでは理論化学と理論物理と融合したトポロジー科学が創製された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で準結晶2層グラフェンにおいて、新規なディラック電子系が超高速な光誘起電位を発生することを発見し、新しい超高速デバイスの可能性を見出した。本物質はねじれ角による層間相互作用が重要であり、引き続き本パラメーターによるダイナミクス制御の検証を時間分解光電子分光法で行う。一方、2019年度の理論研究により、5、6、7員環から構成されるHB単原子シートは珍しい2次元ディラックノーダルループを形成することが分かった。そこで本物質を実際に合成し、その電子状態を実験的に検証する。
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Research Products
(19 results)