2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study on preparation method of room-temperature pure-circular polarization spin LED and its physical mechanims
Project/Area Number |
18H03878
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宗片 比呂夫 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60270922)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西沢 望 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80511261)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | スピンフォトニクス / 光スピントロニクス / スピン発光ダイオード / 円偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
横型spin-LEDにおいて独自開拓した結晶性ガンマ-アルミナトンネルバリア層の改良研究により、我々は素子駆動について大幅な性能向上を達成した。具体的には、アルミ・ヒ素化アルミ2層エピタキシャル薄膜を酸化して得られる酸化バリア層を有する横型spin-LEDの3分の2の数において、ほぼ純粋な円偏光を発する素子を得ることができた。加えて、電流密度J がJ = 5-8 A /平方cmから急激に上昇し、J = 約10 A / 平方cm程度で純粋円偏光発光に達することを見出した。Jの2乗に比例して立ち上がっているようで、ある種の非線形現象を示唆する結果を得た。現象論的な原理提案を行う手がかりである。簡単な耐久試験を行ってみると、円偏光度約30 % の中程度の駆動電流密度を保つ状態において24時間以上にわたって連続駆動させても劣化が見られなかった。断面透過顕微鏡観察を外注し、結晶学的に精密な評価を行った結果、得られた酸化薄膜は極めて均一性のよいアモルファスであることもわかった。すなわち、本課題開始時においては結晶性ガンマ-アルミナトンネルバリア層が必須であると考えていたが、そのような特殊なバリア層が必要でない可能性が示唆される。以上を要するに、結晶性ガンマ-アルミナトンネルバリア層を用いた素子では、純粋円偏光発光にJ = 100 A / 平方cm以上が必要であったが、2層酸化バリア開拓によって必要電流密度が優に一桁低下したことは重要な達成事実である。局所的に酸化不足で金属的なピンホール生成がアモルファス酸化薄膜によって抑制され、電極直下にのみスピン偏極電流を集中して流せるようになったものと推測される。いっぽうで、駆動電流10 A /平方cm以上の状態を数時間保つと、テスト中の素子の電流電圧特性が突然(1秒以下)変化し、同時に無EL状態に移行してしまう問題が未解決状態で残った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、独自開拓した結晶性ガンマ-アルミナトンネルバリア層を用いた横型spin-LEDにおいて室温において電気的円偏光切り替えに関する実験結果が英文学術誌APEXから刊行できたこと。次いで、この第一世代トンネルバリア層の改良研究により、素子駆動について平成30年度に大幅な性能向上を達成できた。課題当初に描いていたシナリオは、結晶性ガンマ-アルミナトンネルバリア層の再現性よい形成法の探究であった。そのようなトンネルバリア層とは異なる形態ではあるが、2層酸化アモルファスバリアの開拓によって、素子作製の歩留まりが大幅に向上し、必要電流密度が優に一桁低下したことは重要な達成事実である。いっぽうで、駆動電流10 A /平方cm以上の素子駆動では、テスト中の素子の電気的特性が突然変化し、同時に無EL状態に移行してしまう問題が未解決で残った。この点を解決しないと研究室内外の他研究者と協働して研究を進めることが難しい。純粋円偏光発生に関するメカニズムについては、本課題の基礎となるProc. Nat. Acad. Sci. USA vol. 114 (2017) 1783-1788で論じた幾つかの機構、すなわち、(i) 複屈折、(ii) EL光再吸収、(iii) スピン軸変換 のうち、どれが決め手であるか未解明である。原因の一端は、(iii) に関連する実験、すなわち、円偏光誘起の発光過程に関する光学実験に未着手であったためである。いっぽうで、spin-LED研究と並行して進めてきたspin-PD(円偏光検出素子)の作製と評価については英文学術誌JAPから刊行することができた。スピン注入電極の候補材料(GaMnAsならびにCo/Pd多層膜)に関する学外との実験的共同研究についても、それぞれ、英文学術誌JAPならびSci. Report から刊行することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2層酸化アモルファス層をトンネルバリアの主軸に据えた研究を推進する。2層酸化アモルファスバリア層を実装したspin-LED素子の作製と評価の追試を、宗片(代表者)と西沢(分担者)の指導の下で大学院学生メンバーに行っていただきながら、アモルファスバリア層の再現性、spin-LED特性の再現性、などのいっそうの向上ととともに、純粋円偏光発光状態で突然起こる素子の劣化(無EL状態への移行)の原因と回避方法を実験的に調べる。適材な研究員投入の道も探る。原理解明とも関連するが、素子発光層をp型ドープだけでなく、不純物を添加していないアンドープ発光層も投入する。キャリア輸送特性ならびに光学特性を変化させることで、純粋円偏光発生との因果関係を実験的に調べるためである。実験用素子を大量に作る必要があるので、微細加工に頼る試料作製プロセス以外の、小回りの利く素子形成法を考案・構築するとともに、強磁性電極Feの作製を、真空蒸着法に加えてスパッタ法を導入する。研究室所有のスパッタ装置に4-5枚程度の基板を導入できるようにスパッタ装置のエントリーチェンバーを改造する。原理解明に関する実験としては、強い円偏光場の中では、発光取り出し軸となるx軸に直交するy軸、z軸伝導帯スピンに対するx方向への引き込みを伴う光学遷移によって、円偏光発光が増強されるとする我々の立てた仮説の検証実験に着手する。具体的には、バンドギャップ以下の強い長波長光円偏光をバルクGaAs試料に照射しながら、バンドギャップ以上の弱い短波長直線偏光で励起して得られる蛍光の円偏光度を測定する。合わせて光学装置の整備も進める。これらの光学実験研究も、研究室所属の学生メンバーや研究員らとともに進める。加えて、平成30年度に得られた2層酸化アモルファストンネルバリア層を用いた素子による実験結果を整理して論文化することを目指す。
|
Research Products
(23 results)