2019 Fiscal Year Annual Research Report
狭線幅かつ高安定な周波数安定化レーザーに関する研究
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18H03886
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
洪 鋒雷 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10260217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 雅人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (20635817)
赤松 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90549883)
吉井 一倫 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 特任准教授 (90582627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザー分光 / 周波数安定化レーザー / 光コム / 原子・分子物理 / 超精密測定 / 量子エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨウ素分子吸収線の信号対雑音比及び線幅の最適化のために、ヨウ素セル内のヨウ素の圧力を自由に設定できるようにする必要がある。我々は、ヨウ素セルのコールドフィンガー温調機構に2mヨウ素セルを組み込み、-20℃以下という低い温度が長時間にわたって保持されることを確認した。次に、ヨウ素の吸収線を観測するための光学系を構築し、ヨウ素の吸収信号の観測と周波数安定化を実現した。周波数変調を用いた精密レーザー分光において、残留振幅変調(RAM)の制御が重要な課題となる。我々は、デジタル制御およびミキサーを用いた音響光学変調器の制御系を構築して、RAMの制御を行い、25dBのRAMの低減を確認した。 光ファイバーマイケルソン干渉計を構築し、自己相関によるビート周波数(干渉計内に設置されたAOM周波数の2倍に相当)を観測した。光源には波長1542 nmの半導体レーザーを使用した。スペクトラムアナライザでビートスペクトルを観察しながら、半導体レーザーに温度と電流値を調節し、レーザーの雑音が少ない最適な発振条件を見つけることができた。その後、自作の分周期やデジタル位相比較器を使用して、ビートスペクトルの位相雑音を測定することに成功した。 我々はさらに小型で信頼性の高い光源として、新たにRIO社製波長1μmの狭線幅平面光波回路型外部共振器半導体レーザーを選定し、それを用いた精密レーザー分光および周波数安定化の研究を行った。今回観測・測定を行ったのは低周波数側から R(98)34-0、R(38)32-0、P(35)32-0、P(112)35-0、R(75)33-0、R(37)32-0、P(34)32-0 ヨウ素分子遷移であった。先行研究によって報告された研究結果と組み合わせて、回転量子数と超微細構造定数の間の関係を表す新しい経験式を導くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、ヨウ素セルのコールドフィンガー温調機構に2mヨウ素セルを組み込み、-20℃以下という低い温度が長時間にわたって保持されることを確認した。次に、ヨウ素の吸収線を観測するための光学系を構築し、ヨウ素の吸収信号の観測と周波数安定化を実現した。このことから、ヨウ素セルのコールドフィンガーの温調機構の設計・製作・評価、および実際にヨウ素安定化への供用は計画通りに進んでいる。また、2mヨウ素セルを用いたヨウ素の吸収信号の観測と周波数安定化を実現しているので、ヨウ素安定化の研究も進んでいる。さらに、デジタル制御およびミキサーを用いた音響光学変調器の制御系を構築して、RAMの制御を行い、25dBのRAMの低減を確認しているので、残留振幅変調の低減に関する研究も予定通りに進んでいる。 ファイバー遅延線を用いたマイケルソン干渉計においては、自己相関によるビート周波数を観測し、ビートスペクトルの位相雑音を測定することに成功した。このことから、レーザーの狭線幅化に必要なファイバー遅延線を用いたマイケルソン干渉計においても、計画はおおむね順調に進んでいると考えている。 さらに、新たにRIO社製波長1μmの狭線幅平面光波回路型外部共振器半導体レーザーを選定し、それを用いた精密レーザー分光および周波数安定化の研究を行った。今回観測・測定を行ったヨウ素分子遷移の超微細構造は新しいデータである。このことにより、回転量子数と超微細構造定数の間の関係を表す新しい経験式を導くことができた。これで1 μmに関するヨウ素分子吸収線の情報が豊富になり、ファイバー遅延線を用いたマイケルソン干渉計の研究成果を合わせて考えると研究計画が順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザーの周波数安定化において、長時間運転が可能でメンテナンスフリーという実用性の観点を捉え、光時計などの応用で必要となる狭線幅かつ高安定なレーザーを、原理から実証まで研究を進める。そのために、光ファイバーマイケルソン干渉計によるレーザーの狭線幅化とヨウ素分子吸収線によるレーザーの周波数安定化のハイブリッド安定化方式を研究し、その実現可能性を明らかにする。また、システムの評価と改良により、長期連続運転可能な光周波数中継器を実現し、光時計への応用を実証する。さらに、より短い波長帯のヨウ素吸収線を探索し、ガスセルによる安定化としては未踏の周波数安定度の実現を目指す。 今後は、2台目のヨウ素安定化Nd:YAGレーザーの構築を完成させ、1台目とのビート周波数測定を行う。相互作用長6mで、変調周波数、ヨウ素セル圧力、光パワーなどの最適化を行い、最終的に周波数再現性測定および絶対周波数計測を実施する。 レーザーの狭線幅化に必要な光ファイバーマイケルソン干渉計の研究においては、1542 nm半導体レーザーの位相雑音測定に成功したため、今後は観測した位相雑音をレーザーにフィードバックし、狭線幅化を実行する。その後、我々が開発した高速制御型の狭線幅光周波数コムに線幅転送を行ったうえで、Nd:YAGレーザーなどの狭線幅レーザーを用いて線幅評価を実施していく。 さらに残留振幅変調の制御においては、音響光学変調器を位相変調器として用いることで最適な位相変調周波数を探す。2mセルの系に対して残留振幅変調の制御を行うことで、長期安定度に対する残留振幅変調の影響を調べる。
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Research Products
(26 results)